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ビーン・ジャイル

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 自分で言うのもなんだが、俺はそこそこできる奴だ。人望もある。頭だってチンピラにしてはキレる方だ。そして何より自分の器ってものを理解し、無茶なことは極力してない。
 ビビってるんじゃないかって言われれば、まあ、あまり強く否定はできないが…。それでも自分のできることを見極めて生きている。
 自分も含めたった5人グル―プの頭をもう3年ほどしているが、今まで大きな失敗をしたことはない。少なくとも小さな稼ぎをコツコツこなして、飢えない程度には稼いでいる。
 稼ぎなんて言うが、仕事内容は追い剥ぎだ。地下都市の中で特に人気の少ない通路を選び、そこへ獲物を誘導する。
 慎重に獲物の選定を行い、できるだけ気が弱そうで、泣き寝入りしそうな連中を狙う。できれば生活レベルが俺らと同じか、それ以下の連中がベストだ。そう言った奴らはもともと気力も覇気もない奴が多いから、わざわざ警備隊の連中にチクることも少ない。
 そもそも警備隊連中もそこまで真面目な奴は多くない。公務員で安定した給料が保障されている奴らが、危険を冒してまで軽犯罪を取り締まろうとはしない。
 賞金稼ぎだってそうだ。俺らのような小悪党には賞金などかけられていない。そんなしょぼくて割に合わない仕事をする奴なんて居ないんだ。
 …その筈だったんだ。

 俺はいつも通り手下を集めて、今日の稼ぎを確認していた。
「ひー、ふー、みー、よっこいせっと」
 紙幣の数はいつもより多いくらいだったので、俺の顔は知らず知らずニヤけていった。
「今日は上々っすね、ビーンさん」
 俺の金勘定を横から眺めていた部下の一人が、嬉しそうに俺に話しかける。顔が近いせいで口臭が少し臭うが、今は気分がいいので注意しないでおいた。
「まあな」
 他の手下達も俺の金勘定が終わったことに気付いたのか、ぞろぞろと近寄ってくる。
 俺が一人分の分け前を右手に握って、眼の前に居る奴に渡そうと思いそいつの顔を見てみると、全く知らない顔がそこにあった。
「は?おま、だ…」
 誰だと言おうとした瞬間に、俺の顔は思いっきり殴られていた。地面に後頭部を強く打ちつけられ、意識が朦朧とする中、コイルガン独特の発射音が数回耳に入った。
 シュバッ シュバッ シュバッ
 火薬を使わないこの銃は発射音が極端に小さい。かろうじて聞き取れただけでも3回の射撃が行われた。少なくとも相手は3人以上いると考えなくてはならない。
 俺がこのときそう思ったのには理由がある。この銃は針状の弾をコイルが生み出す磁力によって射出する武器だ。故にこの武器にとって最も重要なのはコイル部分なわけだが、発射時にそのコイルに流す電流の関係で結構な熱が生じるため、こいつはほとんど連射ができない武器なのだ。
 俺が地面に倒れた体をゆっくりと起こすと、さっきまで話していた手下達が、血まみれで地面に転がっていた。
「あ、ああ」
 無意識に口から洩れた声はなんの言葉にもならなかったが、手下達を殺した男に俺の意識があることを伝えるには、十分な声だった。
 銃口を向けられる。その男の手にはハンドガンサイズのコイルガンらしきものが握られていた。
 俺は目線だけで周りを確認する。
 他の人影を探して周りを見ても、それらしき姿は見えない。
 ――ありえない――
 コイルガンは普通小銃程の大きさが普通だ。連射できるものなら、大きな冷却機、コイルそしてバッテリーを必要とする。
 今ある状況を、自分の考えうるすべての可能性を頭の中で、組み合わせ、応用し、答えを導こうと必死に脳を働かせた。


 ――死――

 答えはすぐに出た。いや、出ていた。
 
 俺はゆっくり男と目線を合わせ――。

 ――シュバッ――

 ――頭の中で コイルガン の 発射音 が、聞 こ え ――
3

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