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慣れ

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 また――また、訳の分からない世界に連れてこられた。
 もう、コイツに理由を聞くのも面倒なくらい、コイツの勝手な行動には慣れた。
 慣れるほどの世界の移動。そして、慣れるくらいに自分の死を体験している。
 まったく、どうして俺はコイツと出会ったのだろうか? そして、何故コイツはこれ
ほどまでに俺に執着するのだろうか? 俺のことなんか放っておいて、さっさと違う奴
のところに行ってくれればいいのに……
 あぁ、本当に嫌になる。

『おや? どうかしましたか? 随分、疲れたような顔をしてますが……』
「全部、お前のせいだよ」
 お前が勝手に俺を訳の分からない世界に連れていき、そして俺に死を体験させる。
 そんなことばかりをさせていて、疲れないはずがないだろう。
『あなたは随分とおかしいことを言いますね。死を体験させている? 冗談にしては
笑えませんよ。私はちゃんとあなたに選択肢を与えているはずですよ。それなのに、
あなたが勝手に自らの死を選んでいるだけじゃないですか。それを私のせいにするのは
少々、都合がいいのでは?』
「そんなことねぇよ! もとはといえば、お前が俺の前に現れなければこんな想いをす
ることもなかったはずじゃねぇか!」
 そう。お前さえいなければ、何度も死を体験するなんてバカげたことなんてなかったんだ。
『またあなたは……私があなたの前に現れたのは、あなたが退屈な世界を変えたい。そう
自分で願ったからでしょう? それなのに、何か都合が悪くなるとすぐに人のせいにする。
 人間というのは、ほんと意味が分かりませんね』
「黙れ!」
『そして大きな声を出して周囲を威圧する。まったくもって、あなたは小さいですね』
「ぐ――っ!」
 コイツ……さっきから痛いところばかり突きやがってほんとにムカつく奴だ。
『しかし、そんな器の小さいあなたでも私は見捨てませんよ。ええ、あなたの願い。
それを叶えるために私がいるのですから』
「…………」
『それに、今回はあなたの心配しているようなことはありませんよ? ただこの道を真っすぐ
歩くだけ。それだけで終わりますから』
「……何を考えてるんだ?」
 ただ歩いて終わるだなんて今までなかった。それなのに、今回は歩くだけでいいだと!?
 絶対何か余計なことを仕込んでいるに違いがない!
『特に何もないのですがね……まぁ、歩いてみたら分かりますよ』
「ふん!」
 歩いてやろうじゃないか。お前が何を企んでいるのか分からないけど、歩くだけで終わる
のなら楽だからな。
 そう、ただ歩くだけなら――――

 ――――クソが! やっぱり余計なことを仕込んでやがった。
 なんだよこれ。なんでこんなにも死体が転がっているんだよ!
『何か不満ですか? 今回はただ道の周りに死体が転がっているだけ。それだけですよ。
別にあなたが死ぬ必要もないし、誰も殺す必要もない。あぁ、本当に楽ですね』
「何処が楽なんだよ! こんな死体ばかりの道なんて――」
『だったら、走って抜けたらいいのでは? そんなに道は長くないですよ。五分も走って
たら終わりますよ』
「く――っ」
 コイツの言っていることが本当かどうかは分からなが、いいだろう。行ってあるよ。
 この道を進んで行けばいいんだろ? 


『彼は走ることもなく、普通に歩いてこの道を進み元の世界へと戻りました。あぁ、それは彼
にとっては素敵なことだったのかもしれませんが、彼は一つ大事な物を無くしたようですね。
 こんな死体だらけの道。こんな道を平然と歩けるなんて、それはもう普通ではないの
ですよ。もう思考が正常ではない。間違った人間の思考。それをあなたは何とも思わなかった。
 あぁ、それはあなたにとっては、悲しいことで。私にとっては嬉しいできごとですよ』

『もう少し……もう少しであなたは完全にコチラ側の人間に……
 ふふ、楽しみですね』
6

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