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ヒロコのなんかよくわかんない日常

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 空を見上げた。



 窓から見上げた昼の空、そこに浮かぶ月は明るい空でもわかるほどはっきりと満月だった。
 そういえば前に外で見た月も満月だったな、とヒロコは思いを馳せた。
 夜空での妖艶な輝きとはまた違った趣の、透き通るような色の満月に眼を細める。
 
 窓際の少女。

 「窓際の中年男性」などと比べたら、随分と美しいフレーズである。
 一枚の絵画にでもなりそうな風景だった。
 「そっか、じゃあ、もう一ヶ月も外に出てないって事なんだな」
 少女はつぶやいた。
 
 満月が次に満月を迎えるにはおよそ30日の時を必要とする。

 絵画のタイトルが「引き篭もりの独白」に決定した瞬間である。売れない。
 せめてここが病室であったならもう少し格好もついただろうが、残念ながらここはアパートと名付けられし建造物の一室にすぎない。
 その直後、部屋に絶叫が響き渡った。
 
 「オッッッパアアアァァァァィィィイイイ!」
 
 絵画のタイトルは「引き篭もりの独白・そして、おっぱい」に変更を余儀なくされた。道徳的には最悪だが、絵的にはむしろ価値が出たかもしれない。
 が、そんな事より驚くべきはその声の主。もちろんというかなんというかヒロコの声帯から発された声ではなかった。ではヒキコモリ少女の部屋なんぞに他に誰がいたのか。
 
 

 バスケットボールくらいの大きさの、
 丸くてぷにっとしたもの。



 そんなのが、のほほんとした顔を悦びに歪めて絶叫している。
 こうして絵画は漫画になってしまった。
 
 これは小説です。
 これは小説です。

 意味不明な警句は置いておいて、物体Xの眼前にはディスプレイがあった。
 引き篭もりの切り札、パーソナルコンピューターだ。
 そこには巨乳が映っていた。
 ストレートすぎる。
 
 物体Xは、丸くてぷにっとしているくせにどうやっているんだという華麗な手つきでマウスを操作しJPEGを次々とハードディスクに保存していった。
 非現実の生き物のクセにやってる事がリアルすぎる。
 こいつが現われてからの一週間で、ヒロコのパソコンは、男子中学生のそれのようになってしまっていた。

 「このおっぱいは素晴らしい! 神だ!」

 エッチなものに神性を見出してしまうのは男子たるもの仕方がないとしてしかしこいつが男子なのかどうかは誰にもわからなかった。
 こういった異形が人間の女子に欲情するケースは漫画などでは多いが精神的にどういう仕組みになっとるんだろう。しかしそれも誰にもわからなかった。

 なんである日突然こんな謎生物がどこぞから沸いてきたのかヒロコにはさっぱりだったが、それまでの話し相手もいない生活は退屈だったので、なんとなく、別にいいかなと思った。
 しかしそうこうしていたら物体Xがまみちゃん18歳のGカップ画像をデスクトップの壁紙に設定しやがったので、ヒロコはまるで巨乳のように丸くてぷにっとしたそいつを、トスした後思い切りアタックをかました。
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