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最初のバカ

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「相変わらずだなお前、何っーかさ、バカなんだけど……バカにしては頭が良いと言うか……」
「ずるがしこいって言いたいんだろう?浅葱君は」
「そう、それそれやっぱり村間よりお前の方がずるがしこいよ!」
「いや、それ使い方間違ってるし……」
「2人とも違うと思う……」
 あっそうなのと浅葱の笑い声が学校の屋上で響いた。
 放課後、日も傾き始めた午後4時頃、僕、村間智弘は友人の玉名守安と浅葱波人と共に明日実行するある作戦の話をしていた。
 何処の学校にでもある怪談話、七不思議とか一昔前に言えば口裂け女、人面犬、の様な物、存在があるかどうか分からない物。そんなおどけた話が内の学校にも2つ在る。そんな話を実現させて驚かそうと言う何ともくだらなくて何ともちっぽけな作戦。

「やっぱり、1時限目にしようぜ、俺、あの英語教師嫌いだからよぉびっくりさせて一泡吹かせてぇんだよ!」
「それは良いんだけどさ、浅葱君、重要な事を言うけど……」
 玉名は1回、深呼吸してから、この作戦の欠点をぶつけた
「どうやって驚かせるんだ!!」
 一瞬の沈黙を挟み
「そうだったぁ!」
「そうなんだよ!浅葱君、この天才である玉名守安様でもどうしたら良いのか分からないんだ!」
「ちくしょお……これで勝てると思ったのに……」
「何に勝つつもりだったんだ……波人」
 屋上の床を握り拳でガンガンと殴り始めた浅葱に2人はかける言葉も無く、ただ呆然と立ちつくしていた。
 しかし、ここで自称天才の玉名が名案を閃いた
「そうだ! もともとあの2つの怪談話を実現するんだからさ。それを英語の授業の時間にやれば良いんだよ」
「だから、どうやってやるんだよぉ……」
 既に半泣きで拳から血を流す浅葱が玉名に問う。
「2人とも、あの話は知ってるよね」
「実は僕は詳しく知らないんだ……」
「―――俺も」
「なんだ、浅木君も村間君も知らないのか、ではこの天才玉名守安が直々に教えて上げようでは無いか!」
 玉名は鼻をふんっとならし、なぜかいつもより声のトーンを低くして話し始めた。彼なりに怖くさせようと演出しているのだろうが、もともと女子のように声が高い為、低くしてもなんら怖くもないし逆に、普通の男の様な声になった。
「内の学校には2つ怖い話がある」
 その怖い話の内容とは、1つ目、この町、朝影町に由来する怖い話だった。
 戦時中にご飯もなく幼い我が子を養うことが出来なかった母親が居た。その母親はどうにかして、我が子にご飯を与えなければと朝早くから、山に登り野草やキノコ類などを、取ってきて食べさせたそうなのだが、その1つに毒を持つ植物があり、子供は死んでしまったそうだ。それから、自らの行いを悔いた母は、その野草やキノコを取ってきた山で自殺したらしい。そしてその山を切り崩して出来た土地に立ったのがこの朝影高校、そしてこの学校に朝早く来ると赤い着物を着た髪のやつれた女が、「喰ぅモンねぇ喰ぅモンねぇ」と唱えながら、ひたすら廊下を行ったり来たり歩いてるらしいと言う話。

「うわあああ怖い!」
「わぁ! その声が怖いよ、波人!」
「どうだぁ怖いだろう、でもまだ1つ目だぞ、次の話はもっと怖いから覚悟して聞けぇ」
 玉名はゆっくりと次の話を語り出した。






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