始まり。
「いてえ、いてえよ平太!」
ヒーローもので使われる剣のレプリカで
痛がる父さんにかまわず、斬りつけまくる。
「もお、早く倒れなきゃ!必殺技つかったよ!」
「あ、悪い!ぐわわぁ、やられたー」
あわてて倒れる父さんに満足して
仁王立ちを構える。
ヒーローごっこに興じる親子。
休日によくある光景だと思う。
日曜のヒーロータイムを終えた後に
その日のおさらい(?)をすべく、
寝ている父さんを起こしつけて
剣を構えるのである。
「なあ平太、」
「なに?」
「その幼稚園から持って帰ってきたヒーローは
どんなヒーローなんだ?」
僕は嬉々として答える。
「困った人をたくさん助けてね、
それでめっちゃ強いんだ!」
「父さんとどっちが強いんだ」
「うーん・・・父さんかな!!」
「それじゃあちょっと心ぼそいなぁ~」
「じゃあ父さんよりも強くするよ!」
「いつか父さんも助けてくれるかなー?」
「当たり前だよ!父さんなんて、えっと・・
あっ、朝飯前だね!」
慣れない言葉を使う僕をおかしく思い
父さんはくしゃくしゃな笑みを浮かべた。
「それじゃあ、父さんを助けられるか
力試しでもするか!」
父さんは悪役を真似た笑みを浮かべ
演技がかった口調でこう言った。
「お前の父さんは悪の軍団に心を乗っ取られた・・・」
もうお前の知ってる父さんではないぞ。」
「お前は誰だ!?」
「ダーク父さんだ、お前をやっつけるぞ~」
両手をあげて襲いかかってくる父さんをさっとかわし
おもちゃの剣で足を斬りかかった。
「ぐわあ、強い!このヒーローは強いぞ」
「お前は何者だ!?」
剣を鞘に直して、ダーク父さんを指さして
精一杯の威厳を振りかざして、僕は叫んだ。
「僕は悪い奴らをやっつけるために生まれた
せいぎのししゃ、その名も、うーんと・・・」
父さんが僕に耳打ちをする。
なんとなく言葉の響きが気に入ったのか
僕はその名前をそのまま使った。
「ハイブリッド・ストレンジャー!!」
のちに、僕らを助けるために旅立つ
謎のヒーローである。