あとがき
宵野夏です、こんにちは。「パースペクティヴ」読んでいただけましたでしょうか。まずはお礼を言いたいです。ありがとうございます。
さて、最後まで書いた長編としては四作目のこのお話。今をさかのぼること一年ほど前の、2010年の7月から9月にかけて書いていました。世の中ではたえずさまざまなことが起きていますが、書いていた頃はそれら一切から隔絶して、ただただこの世界に没頭していた覚えがあります。夏と青空の世界に。
この作品を書いた理由はシンプルです。夏のお話が書きたかった。高校生のお話が書きたかった。舞台は東京の立川市がモデルです。とても好きな場所で、いつからでしょう、たまーにふらふらと出かけていっては散歩して帰ってきます。もちろんこれを書いていた時も行きました。要するに、とても純粋に書きたい話を書いたものがこれ、パースペクティヴなのです。
話は飛びますが、たまにこんなことを思います。
たとえば10000人いたとして。そのうちの9999人が同じことを思い、残りの一人だけが違うことを感じてしまった時。はたしてその一人は間違っているのでしょうか?
たくさんの人がいる場所では、人と違ってしまうことが、いつだってその人を追いやっていきます。彼の感じたことはまったく悪いことではないはずなのに。きっとその人は、いつもどこにいればいいのか分からなくて、それなのに、ただ過ぎていくばかりの時間に、いつもつらい思いをしていることでしょう。
その一人。私ではない、どこかにいるはずのその人に向けて、この話を書いたのかもしれません。
たくさんの人にこのお話を読んでもらえるとは思いませんが、だれか一人にでも届くものがあればいい、とつよく思います。榛や凪といった登場人物が、その年頃にしてはずいぶん早く気がついてしまった何かに対し、これを読んでくれた人にも、彼らが感じたものと同じ風が届きますように、と願いながら。
とても未熟な作品ではありますが、私はこの中に込められている力を信じています。今までオリジナルをいくつか書いてきましたが、私にとってこれはすごく大切な作品です。なので、気に入っていただけたらとても嬉しいです。新都社という場所では浮いていたかもしれませんが、それもひとつの個性ということで、お許しください。
挨拶もつたないですが、それじゃあまたいつか、どこかで。
2011年7月 宵野夏