luv(sic.)
キッカケは取るにも足らないことだった。
それでも、安寧した世界を混沌に陥れるには充分だった。
ただ一人の兵士が民間人に向かい銃の引き金を引いただけで、
今までヒトが当たり前だと思っていた世界は 180度別の世界に変わってしまった。
第三次世界大戦――予想に違わず、核につぐ核の応酬――の勃発。
第四次非核世界大戦――核に頼らずとも、ヒトは国一つを容易く破滅させる――。
第五次世界大戦――そしてヒトは気付く、自らが持つ禍々しいまでの危険性を――。
地は生命を育むことを忘れ、水は濁り、木々は風に揺られ歌うことをやめた。
火はヒトを暖めるのではなく 万物を灰に還すものとなり。
汚染された大気は呼吸を妨げ、兵器から生み出された悪意はヒトからヒトらしい外見を奪った。
ヒト。
絶対数がかつての15分の1にまで落ち込んだ現在でさえ、
ヒトは争うことをやめない。
”尊厳の冒涜”とさえ言われながら、ヒトは肉体を弄り生にしがみ付く。
肉体の90%を鉄屑に支配されても、ヒトは生を甘んじる。
自らが生き延びるためには他人の四肢を奪うことさえする。
もう、病みは留まることを知らない。