第0話『歴史的背景』
西暦20XX年、7/11、英国ロンドンでパンデミックが起こった。爆発的な感染症の蔓延により、人類は二分した。
かつての現行人類であった旧人類と、細菌とウィルスとの共生に成功した新人類である。
そしてこの――人類の歴史を根底から覆した――種の分化には、明確な形質の変化が伴った。
自然エネルギーの抽象的干渉自在性能力、つまり”超能力”である。
初期の旧人類感染者――まだ交配可能で未分化の段階――は物体を間接的に不随意に動かせる程度であったが、やがて種分化が明確化してくるにつれて能力は大幅に変容した。
自然エネルギーへの干渉、及び限りないエネルギーの生成能力。
炎の能力者は炎を無限に生み出し、意のままに操り得る様になった。
人類はついに、真の意味で火を扱える*1 様になった。
旧人類はこれら能力者を”鼻くそ*2 ”と揶揄し迫害した。この差別に蜂起した新人類の民間組織が旧人類治安部隊と衝突し、新人類側の負傷者0人、旧人類側の死者6000人という大勝利を収めた。
旧人類はこの事件を新人類の非人道的性質の好例として取り扱い、新人類殲滅の為、武力を以ってこれに当たる事を決定した。
新人類殲滅機関セーフ・ガード、旧人類の特徴である副鼻腔に腫瘍がない事から、通称Empty機関と呼ばれるようになった。
(*1 但し、火の能力者に限る)
(*2 細菌は何故か副鼻腔に偏在する)
次回『老婆と少年』