まとめて読む
今度ばかりは駄目かもわかりません。
おやじがいま一階で乾いた声で誰かに電話してます。あんな親父は初めて見るのです。
もう身体にガタがきてるっぽいですし、なんか目が濁ってます。
おやじには苦労をかけ、そして苦労をかけられました。俺が今、憎悪という感情に精通しているのは親父のせいであります。
でも最近は、まァそれもシュタインズゲートの選択かな、ぐらいには思ってたんですけどね。
妹がレッドペーパー、おかんがパート首になる可能性大で、俺がごくつぶし。
チェックメイトされてるにも関わらず敗北を認めずにキングを逃がし続けるような日々でありました。
死にたいのはヤマヤマですが、俺は生きるでしょう。何が何でも生きるでしょう。
しかし、同時に普通の人が言う「生きる」はもうできないのです。俺には未来がありません。存在し続けるのと、未来を求めていくのはまったく別のことであります。
そのうち風が変わる。だからやすめ。そういう選択肢がある人間に生まれたかったものです。
俺にはそんなものはない。そうした瞬間、俺の「負け」が確定する。
俺にできるのは、バラバラになるまで生き続けるか、負けたまま負けを確定させるか。
生き地獄であります。
俺は苦痛から逃げてきました。しかし、苦痛はみんなの見えないところで俺に追いつき、俺を蝕んでいたのです。
俺は誰に訴えてもその苦しみをわかってもらえませんでした。もとよりそんなことはできないのです。
たとえわかっている人間がいたとして、俺はそれを違うというでしょう。この苦しみは俺だけのものであります。
俺が、俺が苦痛を他人と共有できないと知る前にしか、俺を救うことはできなかったのです。
俺の苦痛は見捨てられます。しかしそれも仕方ないことなのです。
しかし、仕方ないで俺は「生きる」ができなくなっていった、ということも、また事実であります。
俺は流しの三角コーナーの中身でした。料理をするためには、そこには必然的に「邪悪」がたまり、そして俺は「邪悪」そのものなのであります。
間が悪く、怠惰で、それをなんとかしたいと思いつつ、できず、できても、誰にもわかっていただけません。
すべてがバランスよく配置され、そこに「愛」の油をさしてもらえれば、まだなんとかなったかもしれません。
しかしもう無理です。もう俺は、「生きている限り助からない」のです。
俺は死にません。しかし、心は常に死に続け、私の小説というのは、つまり私の断末魔なのであります。ごく一部では、ありますが。
私は追い詰められつつあります。誰かに優しい言葉をかけてほしい。
しかし、かけてもらえないのは当然にして、もっとも邪悪なのは、かけてもらえたとして、俺はまっとうな返事ができないのです。俺は狂っているのです。
俺は、あまりにもそういうことからかけ離れすぎました。
俺は、邪悪な人間です。
その邪悪さが人を傷つけ、自分を傷つけ、何もかも傷つけ、捨てたくてもその邪悪さが「俺」であり、人格の基盤であり、決して乖離することはなく、永遠に俺は「邪悪」なのです。
俺にとってのアイデンティティは「邪悪」であり、そして俺は「邪悪」を憎み、同時に愛しているのです。倒錯したジレンマが常に俺の中にあり、普通ではないことへの絶望と、そしてその苦痛が、凝縮された暗闇が俺だけのものである自信とがない交ぜになって、もはやなにがなんだかわかりません。
命令を聞くなという命令を受けたロボットの陽電子頭脳のように、俺は、混乱し、恐怖し、焦り、苦しみ、憎み、愛するのです。
どこへいっても、疎外感が消えませんでした。
仲間に入れて欲しかっただけなのです。俺がここにいるということを、認めて欲しかっただけなのです。
どうやら、駄目なようです。
私は醜悪に生まれました。私は貧弱に生まれました。私は好戦的に生まれました。私は臆病に生まれました。私は我慢強く生まれました。
私は従順さを目指す道徳を持ちました。
人のためにです。
でも、駄目なのです。
私は、知りませんでした。
自分が狂っているということを。
ほんの子供のときから、ずっと認めたくありませんでした。
でも、そうなのです。私はくるっています。
私は、もう、答えが出ません。
愛に対する飢餓でどうにかなりそうです。
愛をわけてほしい、この俺に。
ほんのすこしでいいから。
それさえも、受け入れては、もらえませんでした。
わかっては、いただけないのでしょうか。
俺のあらゆる行動の根幹にあるのは、ただ、愛されたいということなのです。
そう、でも、それでも、もし、その機会が、あっても、
俺は闘うのです。俺は憎むのです。俺は蔑むのです。俺は怯えるのです。
それしか知らない、のです。
破滅と錯乱の足音がします。
俺の未来は、どこですか?