狂おしき、抱擁。
「殺して」
僕は、静かに呟いた。
彼女はゆっくりと僕の首に手をかけると、強く、強く、力を込めた。目玉の飛び出るような圧迫感とともに、暗闇が僕を包み込む。ともすれば、意識を失いそうになる感覚の向こうで、彼女はうっすらと笑みを浮かべていた。
刹那、僕は彼女を突き飛ばした。空気を取り戻した肺が、大袈裟なほどに劇しく酸素を貪った。息を荒げ、首を抑える僕の肩に、彼女の体温が被さった。
「ね、いいのよ。私は、あなたが望むなら、いつだって殺してあげるし、あなたが望むならいつまでも守ってあげる。だから、だから、私の傍にいてね。愛してる、だから、傍にいて。ね」
そう言うと、彼女は強く、僕を抱きしめた。僕は彼女の耳元に口付けて、何も言わず、彼女を抱き返した。そうして僕らは、朝までそのままだった。何も言わず、僕らは朝までそのままだった。