「残念だけどまだ退部届けは渡せないわね」
「そこを何とかお願いしますよ。こんな変な校則きっとうちだけですよ? 」
真澄ちゃんはいいかげんにしろといった感じで
「ダメなものはだめ!! うちはうち!! よそはよそ!! 」
俺は一喝された。
昨日、俺が健全なる部活動? に所属していることが発覚したので今日は朝から担任の原田真澄(28歳・女・独身)に事情を話し、どうにか入部届けをなかったことにしてくれるように交渉している。
ちなみに今は昼休みでこれは第3ラウンドってやつだ。
俺は職員室でコンビニ弁当をつつく真澄ちゃんに食事の邪魔だとおかまいなしだ。
だってそれだけ必死なのだ。
真澄ちゃんが言うには一度入部してしまうと、それをなかったことにはできないらしく正式に退部届けを提出しなければいけないらしい。
融通の利かない我が学び舎に苛立ちを隠せないぜ。
しかも厄介なことに退部届を出すためには条件が3つもあった。
一つ目は『部内の代表者の了承を得ること』
二つ目は『顧問の了承を得ること』
三つ目は『入部してから3カ月経過していること』
だそうだ。
どうやらこの条件が整っていないと退部届けも貰えないらしい。
というか、そもそも小夜が勝手に出した入部届けなのになぜ受理されたのだ?
そういえば、そこんとこまだ聞いてなかったな。
「てか、なんで小夜が出した入部届けなのに受理されるんですか? いくら俺の名前が書いてあってもそんな大事なこと本人不在で成立するんですか?」
「それは・・・ 」
「それは?」
「担任パワーだ!!」
ズコーーー!!
なんだそりゃ!?
そんな暗黒面にどっぷり浸かっていそうなパワーが裏で働いていたのか!?
「ふざけんな! それってあんたが無理矢理に押し通したってことだろ!?」
「てへっ☆」
舌をちょっぴり出してはにかむ28歳に軽く殺意を覚えちゃうぞ、この野郎。
「全然かわいくなんかねー!!マジでなんでそんなことしたんですか?」
俺は28歳の茶目っけを全否定して問いただした。
すると真澄ちゃんは急に周りをキョロキョロと伺いだし、小声で
「だって佐々木が部活に入ってないせいで職員室でのあたしの立場がさ・・・ 」
「うっ・・・ 」
正直、予想はしていたけどそれを言われると痛い。
たしかにそのことで俺は真澄ちゃんに迷惑をかけていた。
でもだからってそのやり方は強行策過ぎだろ!
「だいたい小夜が、その・・・ なんというかバカ・・なのは知ってますよね?」
「志野内がうちに入れたのは奇跡だと思ってる。」
うん、俺もそう思う。
「だったらあいつが絶対勘違いしてるって気づいてましたよね?」
すると真澄ちゃんはバツが悪そうに答え出した。
「いや、たまたま志野内と話してたらさぁ、なんというか中学の頃のお前の話になってだな・・・ 」
「中学の俺?」
「それで私は志野内に聞いてみたんだよ」
「なにを? 」
「佐々木は中学の頃は何部だったんだってさ」
「へーそれで?」
俺はだんだん話が読めてきた。
が念のため最後まで聞いておくことにしよう。
「そしたら、何も入ってなかったって言うからさ」
「言うからさ?」
「ば~か、それは帰宅部っていうちゃんとした部活なんだよ?って教えてあげて・・・第3帰宅部のことも教えてあげた。的な☆」
落ち着け俺。
まずは深呼吸だ。
はいっ!まずは吸って~
スゥ~
吐いて~
ハァ~
よ~し、せ~のぉ。
「真澄ちゃんのばかやろおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 」
職員室とかもう関係ないよね☆てへっ!
「ぶっ!?」
黒幕が驚いた拍子にお茶を吹いた。