それは8月のある日だった。蝉が休むまもなく鳴き、そよ風の涼しさが嬉しい日だった。
ニュースでは近々起こる日食に注目が集まっていたが、無関心な人々はこぞって場所取りをし、花火を楽しみ、上々な気分で過ごしていた。
大人は皆こう呟いた。
「やれやれ、なんとか花火が見れそうだ。今年の場所取りも、大変だったな」
そんな大人を尻目に、子供は走り回りながら、出店の食べ物を食べていた。
そしてある者は踊り、歌い、そして抱き合って楽しんでいた。
その時、走り回っていた一人の子供が、嬉しそうに言った。
「空に火花が残ってるよ。ほら、こっちに降りてきたみたい」
子供はそれに喜んだが、大人は不思議に思っていた。花火の火花が降りてくるなど、普通ではありえないからだ。
そう、その火花は色とりどりの宇宙船だった。人々は思いがけない来訪者に阿鼻叫喚し、逃げ惑った。宇宙船は気にせずに地球に降り立つ。それに逃げ遅れて、潰された者もいた。
降り立ってしばらくすると、中から光と共に男が出てきた。勿論この星の人間ではないだろう。頭には大きな角があった。
「私達はリト星人だ。少し場所を空けてくれんかね」
「何を言いやがる。この星は俺達のものだぞ」
地球人はこぞってそう言い、軍隊は完全に宇宙船を包囲した。
「こんな火の花より素晴らしいものを、我らの王に見せる為なのだ。邪魔をしないでくれないか」
「俺達から横取るつもりか。ええい、問答無用だ」
軍隊は一斉に、その宇宙船を銃撃した。しかし傷がつく事はない。
「ならば、仕方あるまい。力づくでも空けていただこう」
そして、武器を持ったリト星人が降りてきて、熱線銃を撃ち始めた。それに当たった者は一瞬で蒸発した。勿論地球人も抵抗し、あらゆる攻撃を試みた。しかしどの攻撃も、リト星人の科学力には敵わないのだった。
最後の銃声が響いてから、数日たった頃。リト星人は誰もいなくなった地球で、思い思いにシートを広げていた。中には料理を運ぶものもいたし、店を出すものもいた。
着々と準備は進められ、地球がまた賑やかになった。大人は着々と準備を進めている。
そんな大人を尻目に、子供は走り回りながら、出店の食べ物を食べていた。
そしてある者は踊り、歌い、そして抱き合って楽しんでいた。
それを宇宙船の窓越しに見ながら、リト星人の王は呟いた。
「やれやれ、なんとか日食とやらが見られそうだ。今年の場所取りも、大変だったな」