真夜中の間隙
善いものだけが息を止めている
春の真夜中の間隙
部屋に一人、
うっかり何かと繋がってしまったら
あの暗い玄関ドアから
牛の頭をした人型の怪物が
やって来るかもなんて他愛のない妄想
濃密な空洞でしかない両目に見つめられて
頭からぱりぱりと音をたてて噛み砕かれても
変な覚悟で受け入れてしまいそう
この季節この時間
必要なのは現実感を
処方するための明晰な頭脳。
***
なによりも素敵なのは
無目的であること
何も伝えないこと
行き場所がないこと
忍び寄っては奪い去る、
春は蜂蜜のようにねっとりと甘く
存在が消え去るのも生まれるのも
無感動に受け入れる
夕暮れ、それが顕著になるのを
一人で見送るのが好き