さみだれ世界/腐る人
踏みつけられるたびに
世界がきれいになっていく
汚いものなんて
私の内側にしか
ないっていう信仰
届かなくなっていくものが
いつも一番まばゆい。
美しく姦しく喧しく
いちいち鮮やかにひらめきすぎる
さみだれ世界、
どれもこれも雨降りみたいに通りすがりでしかなくて。
*
雨の日にしか出来ない話
夜の部屋でだけ見えるしみ
服の下、二の腕の痣
笑いたければ好きに笑って。
人が生きながら腐るときは内臓から腐る。
例えば歯茎、胃腸、子宮
それから息と肌と声と髪が腐る。
昔、水族館で背を齧られた魚が泳いでるのを見た。
ずっと笑わなくても許されるのなら
特に不満のない生活だけど
ああでもあなたがかわいそう、
どうしようもなく不憫に見える
こんな私に触れたいだなんて。