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五話

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「納得いかない。こんなの納得いかないわよ!」
「はいはい、何をいきなり人の顔を見た瞬間に文句を言ってんのよ」
「別にあんたの顔に文句なんてないわよ! 私が文句あるのは、綾菜の衣装よ!」
「あたしの衣装? あたしの衣装は美穂と同じじゃない」
「何処がよ! 何処が同じっていうのよ!」
 私の衣装は体操服で、綾菜は執事服なのよ! それの何処が同じって言うのよ。
「あたしも美穂も同じコスプレじゃん。何をそこまで怒るのかしら?」
「怒りたくもなるわよ」
 だって体操服なのよ、体操服! 私は大人だっていうのに何で体操服なんかを着ない
といけないのよ。まだブルマじゃないだけ救いはあるけど、それでも体操服なんて嫌よ。
 私だって着るなら、まだ執事服とかの方がマシだわ。
「ちっ、ちっ、ちっ……甘いわね美穂ちゃん。美穂ちゃんに執事服は似合わないわよ。
こういう服は綾菜ちゃんの方が似合うのよ」
「それは、暗に私が子供っぽいって言っているんですか?」
「違うわよ。それに美穂ちゃんは体操服の魅力に気が付いてないみたいね」
 この人はほんと、何を言っているのだろうか。体操服に魅力なんてあるはずがない。
 子供の頃の思い出としては意味があるのかもしれないけど、それ以外に用途なんて……
「あら、そうかしら? そう思うのなら彼等を見てみなさい」
 ニンマリとした笑顔でお客さんを指さす店長。どうせ、あの人達を見てもいつも通り
の反応しかしてないと思うんだけど――

『体操服にスパッツ。拙者はブルマ派だったのでござるが、スパッツはスパッツでなかなか
いい味を出していますな』
『あのスパッツの下に何も穿いていないと想像すると……ふぅ』
『スパッツのためなら死ねる』

「…………」
「ね? 体操服は素晴らしいでしょ?」
「素晴らしいって、いうかスパッツしか注目してないんですけど……」
 体操服自体にはあまり意味はないですよね。つーか、あいつ等完全にエロ目線でしか
私の姿を見ていないじゃない。
「羨ましいわね。あたしの格好なんて全然、見向きもされてないんだけど」
「ふふふ、それは仕方ないわよ。だって、うちのお客さんは紳士な方が多いからね♪」
「そっか。それなら仕方ないか」
「ちょっ、何普通に納得してるのよ! おかしい、おかしいでしょこれ!」
 喫茶店として営業出来ているのが奇跡に近いレベルなのよ。ここ最近慣れてきたけど、
やっぱりこのお店は普通じゃないわ!
「美穂はみんなから人気があって羨ましいわね」
「絶対、羨ましいなんて思ってないでしょ」
 あんたの顔が笑っているのがその証拠よ。絶対に、私のこの状況を見て楽しんでいるでしょ。
「羨ましいわ。モテモテな美穂が凄く羨ましい」
「……そこまで言うのなら、綾菜も着ればいいじゃない」
 体操服とスパッツを穿いて、あの変態どもにハァハァされたらいいじゃない。
「それは断るわ」
「んな――っ!?」
「だって、そんなものあたしには似合わないもん。そういうのは美穂が世界で一番似合うわ」
「ぐぬ……」
「あと、あれね。そういうエッチ路線は美穂専用なのよ。あたしは地味にいかせてもらうわ」
 エッチ路線って……私だって普通の格好の方がいいのよ! ただ店長が普通の服を用意
してくれないだけど、私だって――
 助けを求めて店長を見やると。
「だ・め♪」
 笑顔でバッサリと切られてしまった。どうやら私は店長の思うままにエロ路線でいか
されてしまうのだろうか? 偶には普通の格好だってしてみたいのに。
 綾菜が割とまともな格好をさせられているから、余計に思ってしまう。
「さて、余計な話しは止めて仕事をするわよ」
「はい」
「えぇ……」
 何で、そんなに店長と綾菜がやる気になってんの? いや、働いてくれるのはいい
ことなんだけど、なんかこう……釈然としない。
 やっぱり私だけ変な格好だからかな?
 ……違うよね。たぶん、私自身が色々と納得出来ていないからだろう。
 私だけエッチぃ格好なのも二人がやる気満々なのも、全てに納得がいってないから
こんな気分になってしまうのよね?
「ほら美穂ちゃん。ボサっとしてないで働きなさい」
「そうだよ美穂。給料分は働かないとダメでしょ」
「……はーい」
 渋々、気合いを入れて仕事を始める。
 だけど私はこの格好をしているだけで給料分の働きはしていると思うんだよね。
 こんな恥ずかしい格好で皆の前に出ている時点で――

 うぅ……っ、お前らそんなにスパッツの部分ばかり見るなーっ!
 お尻ばかり見つめるなー!

5

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