「……そうですか 分かりました」
濃厚な肉汁が蒸発する香りの漂い、店が活気に溢れる中、
マチアスは携帯電話を切った
彼女の前でナシメントは肉をガツガツと頬張っていた
牛肉からリングイッサ(ブラジル版ソーセージ)から鶏肉まで
ありとあらゆる肉が積み重なっていた
「どんだけ食べるんですか……まだお昼ですよ?」
半ば呆れ顔になりながらマチアスは言った
「いやぁ~……こう暑いと腹減って腹減って……」
(よく太らないなぁ~……この人)
肉を一気に頬張り、丸呑みしたナシメント警部は
それらを水を飲み込んで胃へと流し込んだ
「ふぅ~食った食ったぁ~・・・・・・」
食事を終えたナシメント警部の表情が一瞬で真剣な眼差しのものへと変わる
「で、結果は?」
腹が減っては戦が出来ぬという諺はまるで彼のためにあるようにも感じられる
彼の真剣な眼差しに答えるようにマチアスは彼の目を見つめ、答えた
「現場(デウスデッチ)で発見された銃弾の薬莢および
死体から検出された銃弾は全て被害者の銃から
発射されたものだと・・・・・・」
それを聞いたナシメントは右手を顎に当て、右手の肘を左手の掌で支えるように
しながら呟いた
「おかしいな」
「・・・・・ええ 遺体の向き、位置関係からして
突然入ってきた何者から発砲を受けたことは明白です」
「そいつがまともなら、事前に仕入れた銃を使ってる筈だ
つまり、遺体から検出された銃弾は必然的にその銃から
発射されたものになる・・・・・・」
しばし、一呼吸を置くとナシメントは少し張った声で
先ほどの自分の発言から導き出された事実を断言する
「遺体から検出された銃弾が被害者の銃から
発射されたなんてことは有り得ない」
それを聞いたマチアスの脳細胞には一つの結論が導かれ、
彼女の口へと力強く流れ、声となって出ていた
「・・・とすれば、考えられるのは一つ……
犯人は現場で武器を調達した!!」
ポケットから煙草を取り出し、火をつけながらナシメントは
犯人が現場で武器を調達した動機を冷静に分析した
「仕入れた武器を使うってのはリスクが伴う・・・・・・
現場に残された薬莢から銃を特定されて、
業者まで特定されたら捕まるのは時間の問題だからな」
「特定されるリスクを徹底的に排除したってわけですね・・・・・・
やられましたね・・・・・・これじゃ、ホシを追う手がかりすらありません」
両手を組み、机の上にのせ俯くマチアスを励ますかのように
ナシメントは頼もしい口調でつげた
「いや、逆にこれが手がかりになるかもしれん」
「どういうことですか? センパイ」
俯いていた顔をあげ、マチアスが尋ねた
「丸腰のリスクを背負ってまでこんなコロシが出来る・・・・・・
そんなプロを知っていそうな
連中をしめあげる」
「連中?」
煙草を灰皿に押し付けて消しながらもナシメントは
立ち上がった
「先にエンジン回しとく 払っといてくれ」
ナシメントは財布から札束を取り出し、マチアスの掌に載せると
食事代の勘定を彼女に任せると、そのまま外へと歩いていった