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零話「パンチラ同好会」

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 春。別れの季節とも、出会いの季節とも言われているこの季節に、オレは立っている。
 厳密に言うと、新しく入学した高校の正門の前に立っているのだが……。
 正門の横には「祝・入学式」と書かれた看板が立てかけられ、新しく入学する生徒を感激する雰囲気満載なくせして、その生徒たちはと言うと、新しい出会いにびくつきながら、正門をくぐっていくという、何とも言えない温度差が目立っていた。
 正門から少しした所に先生と思われる大人が何人か立っており、何か紙を配っていた。多分、あれはクラス配分表なんだろう。掲示板にクラス表を貼り出すよりも、ああして紙を一人ずつに配ったほうが、効率がいいんだろう。
 オレはその紙を受け取り、自分の名前を探した。
 探しても、探しても見つからないオレの名前。
 確かに、オレはこの高校に受験して合格認定を貰ったはずなのに。
 いやその前に、合格認定もらえてないと制服とか買えないはずだし? 買って普通に着てきてるオレはここの新入生意外の何者でもないし? ――と、野暮なことを考えていると後ろの方のクラスに自分の名前が乗っていた。
 その紙の裏に書かれた校内案内図を頼りに、教室に向かう。
 教室の扉は開けっ放しになっていたので、開けるごとに誰かに注目されながら教室に入っていくなんてことは無かったのが救いだと思いたい。
 案の定、誰一人知り合いの居ない教室。
 中学生の時とは違うんだ。単なるクラス替えじゃないんだ……と思いつつ、黒板に貼りつけられていた席順を頼りに、自分の席について、ふぅ……と肩をなで下ろした。
 
 席に座ってぼんやりと黒板を眺めていると、教室に一人の先生が入ってきて、廊下にオレたち新入生を並ばし、体育館まで誘導した。
 入学式が始まるのが目に見えていたので、文句なく、先生についていく生徒たち。
 中には高校デビューをしようとしたのか、髪の毛を金色に脱色してきたバカもいたが、並んでいる間にそいつはどこかに連れ去られて消えてしまっていた。入学式だっていうのに災難な奴だなともいながら、先生に先導されるがままついていくオレ。
 体育館に入ると保護者と思われる大人の人達からの拍手を浴びながら、舞台前に設置されたパイプ椅子の前に立たされた。
 座っていいのか悩んでいると、舞台の端に立っている先生が「着席」とオレたちに声をかけ、ようやく座れた。どうやら全新入生が体育館に集まるまで待たされていたようだ。
 拍手が自然と鳴り止むと当時に校長と思われる初老がマイクに向かって喋りだした。
「入学おめでとうございます! 私はこの高校の校長の――」
 入学して一番最初に印象に残ることとなるのが、この校長は無駄な話を無駄に長く話すのが好きだという、とてつもなくどーでもいい話なわけだが。

 教室に戻り、担任が簡単な自己紹介をしたのち、オレ達生徒の自己紹介となった。
 あいうえお順で回っていく自己紹介。
 全く知らない大勢の人間の前で喋るのに慣れていないオレは、緊張に飲み込まれそうになりながら、その時を待った。
「では次の人ー」
「あ……はい……タカシっていいます。趣味はパ――趣味は、その読書です。……一年間よろしくお願いします……」
 パチパチと小さな拍手が周りで起こる。
 アブねぇ、マジでアブねぇ。思わず「趣味はパンチラです!」って声を張って言う所だった。マジあぶねぇ。
 オレは出席番号順的には丁度真ん中くらいだったので、前半の人間の自己紹介を聞いている余裕は全くなかったのだが、自己紹介という緊張から解放された今となっては話は別だ。
「……ショウゴ……だ……しく……」
 そんな余裕の中、新しいクラスメイト達の自己紹介を聞いていると、ずば抜けてカッコイイのに、なぜか声が小さい謎の少年が自己紹介をした。
 整った顔つき、スラっと高い身長、な、なんだこいつ……は。同性のオレですら惚れそうな中性的な顔つき。なんだこいつは……。神様っていうのはいつも、いつもこうやって差別を……ん? ……あれ、なんか変だな? と思っていると、横に座っている女生徒が小さな声で、その又隣に座っている女生徒に「あの人かっこよくない……?」と言っているのが聞こえてきてしまったので、思考がそちらに移ってしまった。
 イケメンめ。砕け散れ。
 簡単な自己紹介が終わり、これ以上やることもないオレたち新入生は明日からの簡単な予定と諸注意を担任から聞かされ、開放された。
 今後のことも考え、一人校内見学と、意気込みたいところだが、まぁ、入学一日目からそんな大胆な行動を取るもんじゃないな。と思い、明日おこなわれる校内見学に期待しつつ、オレは自転車で家路へ。



 何でもない始まりはなんでもない終わりである。
 そう、誰かに言われたわけでもなく。オレは学校へいく。そう、新しく入学した高校へ。
 高校と言えばやっぱり女子高生。季節関係なく短いスカートのあの娘達は、ああして何かをオレら男へ訴えかけるいるのではないかと思いつつ、短いスカートのおかげでオレは、オレの趣味を加速させられることを感謝しつつ、視線を常にスカートへ向けているオレは限りなくヘンタイであって、でも、これでも自分なりにルールっていうものがあっただね。
 そんなことを考えながら教室の黒板をただただ眺めていると、その視界に食い入るように担任の先生が突然現れた。
「では朝のホームルームを始める。起立」
 さすがに入学したてで授業は開始しないらしく、今日の予定はホームルーム一時間、校内見学一時間、一年生の集会一時間。という、なんだか適当ながらも意外と面倒臭いラインナップになっている。
 まぁ、二時間目の校内見学は楽しみで楽しみで仕方が無いのだがね。
 一時間目のホームルームは、特に重要な話もなく、適当にやり過ごし、ついに、ついにこの時が来た。
「それじゃー校内見学に出る。二、三年生は授業してる奴らも結構いるので静かに行動するように」
 教室の前の廊下に並び、担任が先頭を引っ張って……そう、ついに、ついに、校内見学の時がやってきたのだ。
 オレはこの時を待っていた。一年生の、この時でしか味わえない校内見学。しかも先生のガイド付き。
 顔をキョロキョロさせながら周りを見ても、誰にも怪しまれない。
 そう、合法的にパンチラスポットを探すには絶好すぎるほど絶好的なチャンスなのだ。
 笑いが込み上げそうなのを我慢しながら、オレは列の動く通りに前に進んだ。
 ここのトイレは人通りが無いからこうだ。だの、この美術室前の階段はゴムパッキンがとれてるから滑りやすいので注意すること。だの、本当にいろんな無駄な情報を喋ってくれる担任が神様に見えてきてしまう。
 そんなか、顔をキョロキョロし周りの様子を伺っていると、うしろに並んでいるヤツもオレと同じように頭を振り回して、校舎の中の中の様子を伺いに伺いまくっている奴がいた。
 あのイケメン……何顔をうろちょろさせてるんだ……?
 と、イケメンの視線を観察していると、なんと、ななななんと、オレと同じような所を見ているじゃないの。
 これって……あれだよな……?
 
「話がある」
 その日の放課後、オレは勇気を出してイケメンに話かけることにした。
「……れも……だ」
 声が小さくて何言ってるかわかんねぇよ! と言いたいのを我慢して。
「ここじゃあれだから、ちょっと先にあるファミレスに行こう」
「……ああ」
 高校から歩いて五分ほどの場所にあるファミレスにイケメンを横に並べて行くオレ。
 これがもしも、もしも美少女で、しかも勝負下着かなんかを装備してたらオレはこの場で交通事故にあってまでも、その女の子のパンチラを見ようとするのだが、残念ながらコイツは男だ。
「で……まずは自己紹介をだな……オレはタカシよろしく」
「……ショウゴ……だ。……しく……」
 と、右手を差し出してくるショウゴくん。
 よろしく。とオレはその右手を握り返し、ショウゴくんに握手をし返した。
「……で、ショウゴくん」
「……くんは……ら……い」
 オレが話そうとしているのに、その間を割ってボソボソと何か言うショウゴくん。
「えっと? なんて?」
「くんは……いらない……」
「くんって『ショウゴくん』のくん?」
 黙って首を縦に振るショウゴ。
「じゃぁ、オレもタカシでいい。それで話なんだが……ショウゴ、お前……オレと同じ匂いがするんだが、そのパンチラ好きか?」
 沈黙と言うなの、殺意のようなものが流れる中、ショウゴは答えた。
「……ああ」
 やっぱりそうか。あの時、自己紹介の時に感じた何かはこれだったのか。
「……そうか」
 こうして、オレとショウゴは出会ってしまった。運命というのはこういうことなんだろうか……。



 あれから三日後、部活動の勧誘が激しくなる中の帰り道、オレとショウゴはその勧誘を交わしながら校舎の外に出て。
「なぁ、ショウゴ」
「……ん?」
「お前さ、部活とか入らないの? 結構運動とか得意そうなのに」
「そう……み……ない」
「あん?」
「そういうの……興味ない。と言った」
 最近はショウゴのあ使い方にも慣れてきたのか、こうやって聞こえない時は聞こえないとハッキリ聞き返すことにしている。
「そっか。オレはさ、高校デビューを兼ねて、なんか部活に入ろうかなーとか思ってるんだけど、なんだかなーって感じでさぁ」
「……なら俺……で……れば……ない……」
「……えーっと?」
「なら俺達で作れば問題ない。と言ったんだ……」
 言い直すなら最初から普通の声で喋ってくれれば、こっちも楽なんだけどな……と思いつつ、ショウゴの言ったあまりにも意味不明な言葉に呆気を取られつつ、オレは答えた。
「何を作るのよ?」
「……同好会」
「だから、なんのよ」
「パンチラ……」
 その言葉を訊いて、オレは思わずつばを飲み込んでしまった。
 なるほど……なるほど……。



「はじめまして、タカシ氏、お話はこのショウゴ氏から詳しく訊かせてもらっています!」
 ある日の放課後、ショウゴにこの間言ったファミレスに呼び出されたので、しぶしぶファミレスに行くと、そこにはメガネをかけた、素朴と言うか完全にオタクと言った感じの同級生と思われる男子生徒が、ショウゴの横に座っていた。
「……はじめまして?」
「ああ、自己紹介を忘れてましたね! 僕はカワサキと言います。以後お見知りを!」
 なんだろう……。こういう人種の人間と出会うのは、これが初めてだからどう対処していいのかわからん。
「えっと……で?」
「あのですね、僕パンチラが大好きなんですよ!」
 と人が沢山いるのに叫ぶカワサキくん。
 おおっと、危ない人だぞー。と思いつつ、オレも同じじゃねーかと自虐を入れる。
「そ、そうなんだ……それは、それは……おめでとうございます……」
 パンチラが好きだからなに? って言いたいんだけど、初対面の人にそんなこと言うのはさすがに失礼なので我慢する。
「それで、ですね……。ショウゴ氏からパンチラ同好会なるものを設立するって話を聞きましてね。……是非、僕も参加させていただきだいと、思いまして」
 えっ? とショウゴの顔を見ると、いつもどおり、生気の感じられない顔をしたまま、オレのことを見つめていた。
「いやいや、あれ冗談だろ?」
「……気だ」
「本気だったのかよ……マジかよ」
 ショウゴとは何回かパンチラ談義をして盛り上がりしてたけどさ……さすがにこの間のあれは冗談だと思ってたか気にもとめなかったんだけど……まさかねぇー……。
「それで……ですね」
 カワサキくんはメガネをクイッと指で持ち上げて。
「僕とショウゴ氏は、タカシ氏、貴方を代表として推薦したいのですが……」
「……は!?」
「聞きましたよ! タカシ氏のパンチラへの熱き思ひを!」
 確かに、この間、パンチラに対するオレの熱意をショウゴに語れるだけ語ったんだが……まさかあれをショウゴはこのカワサキくんっていう、得体の知れない人物に教えたとでも言うのか!?
「でもねぇ……そんなことやって、バレた時の事とか考えるとねぇー……」
「タカシ氏、デメリットばっかり考えてたら前には進めませんよ」
「……というと?」
「情報の共有ができるんですよ。一人では視線は一つしかない。でも二人、三人になると視線は増えていく。その増えた視線を使って、パンチラを見ては、そのパンチラの共有をはかれば……今までには見たこともないフロンティアへ旅立てるのですよ!」
 なるほど、そんな考えがあったのか!?
「どうですか……? 魅力的すぎる話だと思いませんか?」
 確かに魅力的だ。魅力的すぎて頭が沸騰しそうなくらいに。
「……分かった。ただ決まりは作ろう」
「……まり……?」
「そうだ。決まり。パンチラ同好会としての決まりを作ろう」
「いいですよ。無法的なのはさすがにいけないですからね!」
 ものの一〇分もしない内に、われらパンチラ同好会の決まりは作られた。

 一、パンチラを盗撮しないこと。
 二、なるべく紳士的にパンチラを覗き見ること。
 三、われわれの存在は誰にも知られてはいけないこと。

 他にも細かい要点がかなりあったが、まぁ、その辺は微々たるものなので割愛しようと思う。例えば、なるべく教室では接しないとか、報告会は放課後にするとか、そんなのばっかりだ。
「……ということで、よろしく頼む」
「わかりました、タカシ氏!」
「……れも……りょう……した」
「ん? なんだって?」
 とオレがいつもと同じように聞き返す。
「了解した。と言ったんだ……」
 そんなショウゴの反応を見て、オレとカワサキくんに小さな笑いが起きた。
「そういえば、二人はどんな関係なの?」
 笑いが収まって、手持ち無沙汰になったオレは二人の経緯を聞くことに。
「ただの趣味トモですよ」
「趣味トモ?」
「ええ、ショウゴ氏とはたまたまネットで知り合いましてね。それで色々あり同級生、しかも意外と近い所に住んでいるとしり、しかもしかも、二人とも同じ高校目指してるって知ってですね、もうこれは運命的な何かだと思いまし――」
「その趣味って?」
 と小声でオレが訊くと、カワキくんも小声で。
「……パンチラ的なあれですよ」



 高校に入って初めて出来た友達との共同作業が、まさかパンチラを覗き見ることだったなんて、誰が思い浮かぶだろうか。――しかし、実際にそうなってしまったわけで。
 朝、携帯を開きメールをチェックすると、カワサキくんから「いよいよですね……」と一文だけ書かれたメールが届けられていた。
 そう、ついに、ついに今日から、オレたちパンチラ同好会は活動を始める。
 制服に着替え、朝食を取り玄関の外へ出ると、丁度隣に住んでいる幼馴染のユカリがオレと同じタイミングで出てきた。
「お、おはよう……そういえば……同じ高校だったんだな……」
「あー、そういえばそうだったね。クラス違うから気づかなかったよ」
「じゃぁ……オレは自転車だか……」
 自転車を庭から道路へ引くずり出し、その上に跨りそそくさと逃げようとした瞬間、荷台に謎の付加がかかったので後ろを見てみると……ユカリさまがそこに座っていた。
「行き先同じなんだから、いいでしょ?」
 そのままオレの背中に抱きついてくれるなら、オレはもう、全力疾走しちゃうわけですが、まぁ、そんなことは無く。
「……ほら、早くしないと遅刻するよ?」
「分かったよ……」

 パンチラを除くなら昼休みしかない。――それがオレの出した結論だ。
 お昼ごはんを食べて無防備になっている女生徒達のパンツを拝む……。しかも紳士的に。
 っても、パンチラ見る時点で紳士的もクソもないと思うので、この約束事は直ぐに破ることになりそうだが、まぁ、今日は初めての活動ということもあって、三人同時行動なので、大胆なことが出来無い。
「タカシ氏。それで女生徒の名簿を手に入れたのですが……これどうするんですか?」
「んーとね、今日は無理だけど、その内に名前と顔を照らしあわせてって、オリジナルの女生徒名簿を作ろうかなぁと」
 流石です! とグッジョブをするカワサキくん。その後ろにいるショウゴも、謎に同じ事をしていた。
「で、だ。今日は誰のパンチラを見に行く? なんか希望があったら、その子のパンチラを見に行こうと思うんだけども」
「……に無い……」
 とショウゴ。
「僕も特に無いですねぇ」
 とカワサキくん。
 困ったなぁと階段の物陰で三人おしくらまんじゅう状態の三人。
 物陰なので誰かに見つけられるということは無いだろうが、見つかったら見つかったらで変な誤解をされそうなので、さっさとパンチラ覗きに移したいのだが……。
「タカシ氏に女の子の知り合いとかいないんですか?」
 とメガネを曇らせながらカワサキくん。
「……幼馴染がこの高校に居るには居るんだが、あいつは男みたいなヤツだ」
「ええええええええ!? 幼馴染ってヤツですか、タカシ氏!?」
 あまりの驚きのせいなのか、カワサキくんのメガネが鼻の下まで下がってしまっている。
「んー……まぁ」
「……で、いままで……かった……だ?」
 ボソボソと喋るショウゴに「なんだって?」と聞き返すと。
「なんで……今までそのこと離さなかったんだ……。と言ったんだ」
「ああ、別に言うほどのことじゃないと思ってたし……」
「決めました!」
 カワサキくんは何かを決意したかのように勢い良く立ち上がり。
「その子のパンチラを見に行きましょう! ショウゴ氏もそれでいいですよね?」
「……ああ」
 だから言いたくなかったんだよ……。

 そんなわけでユカリのパンチラを拝みに行くことになったわけだが、あいつはどこに居るんだ?
 昼休みも残り少ないこともあり、バラバラに散会してユカリを探そうとなったと思ったその矢先、カワサキくんが「僕達はそのユカリ氏の顔を知らないのでやっぱり三人で行動しましょう」と言い、結局は三人揃ってユカリを探しているのだが……。
「いませんねぇー、そのユカリ氏って子」
「……ないな……」
「もしかして、タカシ氏! もうすれ違ったというのに合わせたくないからって、見てみぬフリをしてませんか?」
「さすがにそんなことしてないよ」
 本当に、ユカリのやつ……どこに行ったんだよ……。
 さすがにパンチラ同好会最初の活動でくじけるわけにはいかないので必死に校内中を探しまわった結果、ユカリを見つけたのはいいが……見つけた場所が最悪だった。
「あれが……ユカリ氏ですか?」
「そうだ」
 先ほど、ユカリの教室に見に行った時には居なかったのに、今度は居るって言うね。
「どうします……? 普通に席に座っちゃってますよ……動く気配が無いと言うか……」
「放課後にするか……?」
「……は……予定……ある」
 どうやらショウゴは予定があるらしく、放課後の活動は絶望的らしい。
 ならやることは一つだ。
「お前ら階段の所にいてくれ。オレがユカリをそこにおびき寄せるから……頼んだぞ?」
 二人の息を飲み込む音が聞こえた。

「んでなによ、あたしをこんなところに連れ出し……まさか?」
「いやいや、ユカリの思ってるようなことじゃないから安心してくれ」
 告白的なあれじゃねぇって。それ以上にヤバイことだっつーの。
「んでなに? そろそろチャイム鳴りそうだから教室に帰りたいんだけど?」
 階段の下から二つの物陰がちらちらとこちらを覗きみている。多分ショウゴとカワサキくんだろう。……ユカリのスカートの中は見えているのだろうか?
「んで、マジでなに? ……ってかさっきから階段の下ばっかり見てるけど、なんかあんの?」
「ああーっと……なんにもなひよ!?」
 うお、ヤベェ。声が裏返っちまっちまったよ。
「はぁ……? あんた、なんか隠してるでしょ」
 何かを疑うような目でオレの目を見つめるユカリ。
「いえいえいえ、そんなことはないです。無いんですよ!」
 手を左右に振り回し、無実の潔白をしようとすればするほど、ジトーッとした視線をオレに向けるユカリ。
 汗がいろんな部分から染みでてくるのが分かる。冷や汗なんてのは大便を我慢してる時くらいだと思ってたのに、まじかよ。
 ――と、次の瞬間、ユカリが階段下の方に顔を向けた。
 あ、終わったわ、これ。と思ったが、あの二人の姿はそこには無かった。
「んー……まぁいいや」
 ユカリはオレに背を向けたまま。
「まぁ、なんか面白そうなものは見れたし、まぁいいかな? じゃ、そろそろチャイム鳴りそうだから、あたし教室に帰るわ」
「お、おう……なんかすまねぇ……」
 ユカリはオレの顔をチラっと見て、教室の方へと帰っていった。

「で、どうだった、見えた?」
 ユカリが教室に帰ったのを確認し、一階下に居る二人の元に行き声をかけたが、二人は硬直したまま何も言わなかった。
「どうしたんだよ?」
「タカシ氏、あれは狂気ですよ。あれは……本当に」
「……あれは……で……ばい」
 二人の様子がおかしい。
「お前ら……なにを見たんだよ!」
「タカシ氏、世の中には知らないほうがいいパンチラという物もあるんで……いや……あれはパンチラと言えるのか……? 僕には分かりません」
「俺も……らない……」
「お、おい……」
「あ、タカシー!」
 と、上からユカリの声が聞こえてきたので振り返ると、そこには……。
 パンチラとは言えないパンチラが、そこにあった。でも、確かにあれはパンチラだ。そうか……あれが魔性のパンチラという……ものだった……のか……。
 幸い二人は階段の柱が影になって、ユカリにはバレなかったみたいだが……。
「明日も送って行ってね!」
 ユカリはそう言い残し、階段の踊場から去っていつた。
 オレは知らなかった。こんなにも身近に居るヤツが、パンチラと言うなの宇宙をスカートの下に隠していたことを。
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G.E. 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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