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六話「合法侵入」

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「今日から写真部に体験入部することになったタカシです。よろしくお願いします!」
 正式な部活動に入るのは仮入部と言っても、今回が生まれて初めてのことだ。
 部活に入ろう、入りたい、と思っていた中学時代。でも結局は入部届を出すことを拒み、入らず終わった。
 高校生になり、高校デビューのためにも何か部活動に入ろうと思ったが、結局はパンチラを求めるため同好会を作り、そしてその結果がこれだ。
「よ、ようこそ、写真部に」
 部長と思われる爽やかメガネがオレのことを疑いながら歓迎した。
 写真部の部室は思ったよりも広く、暗室も含めると結構広い。さすがコンクールではいつも上位にあるだけはある。
「えっと……その……体験入部希望のタカシくんだよね?」
「はい。今日から一週間、写真についていろいろ知りたく、そして自分にこの部活が合っていたら正式に入部したく、体験入部をすることにしました」
 高校の校則にはこうある。
 “部活動入部のためには一週間の仮入部後に正式入部届けを出すことを認める。
  どのような生徒であっても、部活動側にそれを拒否する権限はない。”"
 そんなわけで、オレは胸を張ってこの写真部に体験入部することになったわけだが、やはり部室の空気は最悪だった。
 部室中央に置かれているテーブルの方を見ると三人の生徒がパイプ椅子に座っていた。多分、部長とこの三人がこの写真部の中核なんだろう……。ほかは幽霊部員とかその辺か?
 最高に空気が悪い。どうぞと部長と思われる爽やかメガネに促され、開いているパイプ椅子に座る。さすが写真部と言ったところか、至る所にいろんな写真が飾ってあると共に表彰状もかなりの数が額縁に入れられ飾ってあった。
 そういえば、小学生の時、全校朝礼で同級生が表彰されるのを見て羨ましく思ったけな。
「で、だね。その、なんていうんだろう。仮入部は全然歓迎なんだが、その、なんて言うかな、なんだろ、君ってそのアレだろ、この間の……あの紙をばらまかれたあのパンチラを覗いた犯人だろ?」
 ずいぶんとこの爽やかメガネは直球に物を言うやつだなあ。……それにしては歯切れが悪いが。
 つーか、なんでこいつオレが犯人だってしってるんだよ……いやまあ、あの写真見てオレの顔見ればそりゃ一発で誰でもわかるけどさ。
「そうですが、なにか問題がありますか?」
 校則的には一切もんだないはず。そもそも有名写真部といっても、部員数からして新しい部員が入るってことで狂喜乱舞してもいいくらいだと思うんだけどね!
「いや……問題は全くないんだがね、そのやっぱりね、あのー……」
「オレ、なんと言われても仮入部しますから。いきなりですが今日からよろしくお願いします。そのえーっと」
「オオカワといいます……一応、写真部の部長です」
 よろしくお願いしますとオレが左手を差し伸べると、その意味もよく分かっていないのか、写真部部長はオレの左手を掴み握手をした。



<お前は写真部に仮入部するだけでいい>
 アキバで買い出しをしたその夜、この間と同じようにオレたちパンチラ同好会はスカイプの会議通話にて会議を始めた。
「つってもなー……。ショウゴ、今やオレは時の人だぜ、そんな奴を受け入れると思うか?」
 ショウゴは相変わらず小声で何を言っているのかよく分からないため、一人だけチャットで参加することに。そもそもアキバに行った後、どこかのファミレスで会議をすればよかった話なんだが、いろいろあってまたスカイプで会議している。
「タカシ氏、その辺は大丈夫ですよ」アキバで一番輝いていたカワサキくんが声を張り言った。「校則には、部活動側に入部希望の生徒を拒否することは出来無い……と書いてありますしね」
「えっ、カワサキくん、もしかして、あのすんげーなげー校則読んだの?」
「ええ、何かあった時のためにと思いまして、一応暗記もしてますよ」
 何者なんだこいつ。と言うか、校則を暗記してるとかどんなヘンタイだよ。生徒会長でも多分暗記してねーぞ。
<相手もバカじゃない。多分、遠まわしに拒否ってくるだろうが、その辺はゴリ押しするんだ。>
「いやいや、そもそもなんでオレが、写真部なんていう仇の部活に入部しないといけないわけ?」
 誰が好き好んで仇と分かっていながら、のこのこと笑顔振りまいて入部しないといいけねーんだし。いやだね、オレは嫌だね。
<まあ、話を聞け。今日、我々がアキバで買った物はなんだ?」
「えっと、盗聴器と……カメラ?」
<そのとおりだ。しかもそれなりの値段のカメラ。なぜ買ったと思う?>
「いや、わからん」
<写真部に行って写真を撮るためだ>
 どーでもいいんだけど、ショウゴのやつ、すんげータイピング早いなあ。会話のラグが全然ないぞ。こいつ喋るよりタイピングしたほうが相当口が早くなるんじゃねーか?
「いやいや、もっとわからん。そもそも、なんで盗聴器なんて買ったの?」
「タカシ氏、僕とショウゴくんでが写真部に入部しても、正直相手に与えられるインパクトは少ない。でもあなたが入部することで相手にそれだけで十分な打撃を与えることができる」
 オレはこの二人がなにを言っているのか、よく分からなかった。写真部にオレが入部することで写真部に打撃を与えて、カメラと盗聴器をどうするって言うんだ? 第一、こいつらは高みの見物で、オレだけ犠牲になれってことなのか?
「オレは二人が言っていることがよく分からない。どういうことなのかちゃんと説明してくれ」
<お前が写真部に入部。今日買ったコンセント型盗聴器を部室及び、暗室にセット。そして何食わぬ顔で普通に写真部として活動する。それだけでいい>
「……分かった。でも、お前ら二人はオレが写真取ってる間になにしてんの?」
「僕達は……」
<敵を騙すにはまずは味方からって言うだろ? 騙されたと思って写真部に入部しろ……っても、最初の一週間の仮入部だけでいい。お前が写真部と接触する……これが一番の鍵になる。オレたちを信じろ>



 正直、あの二人を心底信じたわけじゃないが、あのショウゴの自身の有り様からして、なにか得策があるんだろう。
 オレがやるべきことは2つ。
 一つは、この写真部に盗聴器を仕掛けること。もう十分停学じゃ済まないことになるだろうが……まあやるしかねえ。
 もう一つは、普通に写真部員として活動すること。校内の写真を撮ったり、そんな風に写真部員として活動すること。
 ただそれだけ。

「我々、写真部は校内新聞ように校内の風景や生徒達を撮影し、そしてコンクール用の写真を撮るために学校外でも活動をしています」
 さっきの爽やかメガネとは別の、顔や体型に特徴のない副部長が、オレに写真部の活動を簡単に説明してくれた。
「そんな感じです。なにか質問はありますか?」
「特にないです」
 体験入部ということもあって、カメラを貸しますか? と訊かれたが、オレにはこのアキバで買ったカメラがあるので「結構です」と華麗に断ってやった。
 今日はもともとミーティングだけの予定だったらしく、その後すぐに部活はお開きとなった。
 部長と副部長は片付けがあるとのことで、オレと残り二人のヒラ部員は、下駄箱へ向かった。
 廊下で肩を並べ歩くが、全く会話がない。とてつもなく気まずかったので「あ、トイレに行って帰るので先に帰っててください」と伝えトイレに逃げこむことにした。
 トイレの個室に入り、一息つく。
 なにしてんだろう、オレ。最近、パンチラ見てないし、本当になにしてるんだろう、オレ……。
 こうなったら、かーちゃんのパンツでも……いや、いや、いや、そりゃねーよオレ! つーか、そりゃダメだろオレ! ダメだって! 落ち着け、己のリビドーに負けるな。耐えろ、もう少しだけ耐えろ。混乱を生み出し、その時こそ、うああああ、パンチラみてええよおおおお!



 放課後、オレは誰よりも早く教室から飛び出し、職員室前の部活動黒板へと向かう。
 うし、写真部は今日は……活動ありだな。
 部活の活動の有無を確認し、体を回転させ、職員室向かう。
「すいませーん、写真部なんですが、部室の鍵かしてくださーい」と言いながらオレが職員室に入ると、先生たちの視線がオレに食いついた。
「えっと……」と鍵担当であろう先生が疑いの目をオレに向けてきたので「昨日付で写真部に仮入部することになったんですが、知りませんでした?」と訊くと「えっと……ああ」と、疑いながらオレに写真部の鍵を貸してくれた。
 鍵があるということは、まだ部室は開いていない。
 オレは急いで部室に向かい、震える手を抑えながら部室の鍵を開けた。
 よし、まだ誰もいない。チャンスだ。コンセントに、こ、この盗聴器を差し込んで、そうして、いままで通り、コンセントに刺さってたプラグをそれに挿せば気付かれない。急げ、急げ、急げ。
 緊張と恐怖、そして罪悪感、そんな負の感情がオレを支配し、体を震わせる。
 よ、よし、部室のコンセントの換装は終わった……次は暗室だ。
 部室内は昨日、見ることができたから結構スムーズに換装ができたが、暗室は……その暗室は昨日みれなかった。コンセントどこにあるんだ。わからんが、とりあえず突撃するしかない。
 暗い、電気をつけたらダメな気がしたので携帯のライトでその辺を照らしてコンセントを探す。盗撮写真のネガを見つけることが出来れば、それはそれでいろいろな意味で大収穫となるんだが、いやいや、そんなことをしている余裕はない。
 うぉおおおおおおおお、コンセントはどこじゃあああ!! コンセントォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
 その時、部室側の扉が開く音がした……。
6

G.E. 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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