始まりは雷鳴だった。
字面通りそれは聴覚への刺激で、視覚には何も変わり無かった。勿論それは僕が視ていなかっただけで、恐らく閃光は在っただろうし、電子の移動も行われていたと思う。そうでなければ説明出来ないことが多く、又そうであればあの珍妙な事象も、例えどんなに奇怪であろうと神秘の名の下に都合良く解釈が為されるからだ。――こんな前書きを綴った時点でもう察しの良い人には気付かれているのだろうけど。僕は語り部の役を担いながらも、あの頃のことについては一厘たりとも理解していない。実を言うと物語は現在進行中で、まだ終わってもいないのだ。だからきっと、これから語る話は、大きな軸を綱渡りが如く進んで行く、それはそれは穴だらけな、もしかすると穴が空き過ぎて時空が歪んでしまうかもしれないような、そんな欠陥のある物になることだろう。