4、君が男子体型なのは別として
ここに一人の女子がいる。
残念ながら右近、君じゃない。だって君は部活中だもん。
弓道部で的をぶっちぎり、女子をキャーキャー言わせている。はずだ。
色んな意味で羨ましい。
僕だって食道部とかがあれば、女子をキャーキャー言わせて見せるさ。きっと。
色んな意味で……、やめよう。
「ところで立川女史、何故に僕ところへ?」
「ブー君へって届け物を頼まれたの。何でもこれ、男子の必需品だからって」
男子の必需品? この紙袋が?
中を見る僕(パシャ……)
――ひぃぃ!
右近、き、君はこんな物を僕に……。けど……、ありがとう!
しかもそれを躊躇いなしにおっぱい以外は清楚可憐な立川女史へ預けるとは。
男子を振る舞う分際でそこはかとなくスリリングな君に僕は胸キュン。
「なぁにそれ。大切な物?」
「は、はは、はい。そ、そりゃもう、大切な……。大切な物です。ははははは」
この汗は別に僕がデブで汗腺が緩からとかそういうので出る汗ではないですよぉ。
ただちょっとこれは絶対見せられない。見せられない代物なんですよぉ。
だから焦ってるんですよぉ。立川女史にはとてもそんなこと言えませんがねぇ。
僕的にも右近的にもそれは絶対無理だよね。
そんなことしたら男子な君に片思いしている立川女史の心が崩壊の危機に。てか、それ以前に繊細ブヒッ子の僕が恥ずかしくって袋の中身をさらせません。
「は、はは。大事だね、大事だから早く押し入れにしまっておこう」
そして開いた押し入れの中からなだれ落ちてきたのは大量のエロ本。だったら僕にも最終回でハーレム的なフラグが立つのかな。
ガサガサガサ~
「や、やだ。ブー君、ピザの箱がこんなに押し入れにいっぱい……」
「はははは。それで掃除するからって立川さんを帰らせた訳か」
「はい」
でもまた今君が脱ぎ散らかしてるけどね。何なんでしょうね、もう。
お風呂なら早く入って部活の汗流しておいでよ。なるべく静かにね。
「エロ本の二冊や三冊女子に見られるぐらい怖がるな。ブーちゃんもう高校生だろ」
右近、君には解らないよ。純情デブの男心が。
デブなだけでロンリーウルフで孤独な男心が。
満腹以外で満たされることのない永遠の餓えと渇きが。
だからこそ僕は決めたんだ。オナニーのおかずはもう君だけにするって。
そして折角だけど君が立川女史に託して僕にくれたあのエロ本……。
「なーブーちゃん、急に風邪でも引いた? ゴミ箱ティッシュだらけ」
「ひひひひひひひひ、引きました。さっき引きました。いや、引いたかも」
「そう。次はあんまり薄着でオナニーするなよ」
――!
余計なお世話。
僕は裸でも厚着だし風邪なんか引かないんだよ。
そのティッシュは外界に飛沫した玉戦士達の亡骸。そっとしておいてよ。
ああ、そういえばお風呂に新しい石鹸出し忘れていた。渡しておこう。多分右近はまだ脱衣所で、
しょ――――…………!?
「な、何、それ……」
僕はその時見てしまった。
右近の飼う妖精、あのなすび的物体が彼女の背中や臀部をぬらぬらと覆い広がっていく様を。
眼前で女子高生がスライムに犯されようとしている!(何んという素敵光景!)
しかし僕のおちんちんは全くの無反応。かくも残念なことがあろうか。
それはだって、あんまりにも君が男子過ぎるからなんだ。
ああ、神様。デブの神様。どうか彼女の肉体に女子の曲線をお与えください。この願いを叶えて下さるのなら、僕の背脂から腿肉までを差し出したって構わない。
だから――!
「これは夢だ、夢だ。みんな消えろ。消えろ。きえろ」
念じながら頭を振り乱し、僕は己の腹を小突きまくった。
その間も右近はきゃははとばかりに妖精と風呂場でじゃれ合っている。
「ねえ、う、右近さん、それって……」
「ぐはは、何ブーちゃん? あ、これ? ははは、こ、こいつ、可愛いだろ。ははは、こ、こそばいはははは」
「僕は、べ、別に可愛くは……」
「そうか? 立川さんもこれ飼ってるんだけどな~」
何ですと?
あ、あのおっぱい以外は清楚可憐な女子がこのぬらぬらなすびを飼っているだと!
じゃ、じゃぁ彼の女史もこのなすびと、なすびと……。
「あ、ブーちゃんの、起ってる」
つづく