サンタ、来ちゃダメ!/ひょうたん
ジングルベル
ジングルベル
鈴が鳴る
今日は
愉快な
クリスマス
前夜が終わりを告げるころ、一人の少女がトナカイと共に空から降りてきました。
彼女はサンタガール。たった一晩で世界中の子供たちにプレゼントを送るという使命を持っています。
実はこのサンタガール、こうしてクリスマスを迎えるのは初めて、つまり初仕事なのです。
大きなの緊張とサンタとしての使命。その二つが慎ましい胸の中でぐるぐると混ざっていました。
彼女は一軒目の屋根に降り立ちました。初仕事、初めての家。彼女は急に不安になってしまいました。ちゃんとできるだろうか。自分を信じられなくなっていました。
ふと空を見上げると、雪がこぼれていました。まるで彼女をお祝いするかのような雪。つんつんと冷気が肌を突き刺します。彼女はノースリーブ、ミニスカートという、少々場違いな服装(初仕事なので気合が入っていたに違いない)だったので、ぷるりと身体を震わせました。
雪を見たことで落ち着いたのか、改めて自分の成すべきことを思い返しました。その表情はとても生き生きとしています。緊張も、不安も、寒さも、どれもこれもサンタとしての使命感が上回っているのでしょう。
「さー、てっと!」
ソリに積んでいた大きな布袋を抱え、大股で元気よく進みます。この家には煙突がありました。サンタガールを歓迎しているのか、そこはスス一つなく、綺麗に掃除されているかのようでした。
今どき煙突がある家なんてそうそうありません。初めての家が、今やサンタ界では都市伝説とまで言われている煙突付き。彼女は嬉しくなってしまいました。
入り口が煙突の場合は、まず降りた先の安全を確認。恐る恐る、煙突を覗き込みました。
【以下リョナ展開(丸呑み)。耐性ない人は戻ってください】
そこには大きな目玉が二つ、ありました。
「ひっ」
布袋から手を離してしまいました。がしゃんと、屋根に落ちると同時に陶器が割れるような音がしてしまいました。
プレゼントが壊れた。彼女はそんな簡単な結論にたどり着くことができませんでした。まず何よりも本能的な危機感がありました。今すぐここから逃げなければならない、そう直感したのです。
しかし、それはあまりに遅すぎました。
シュル、シュルシュルシュルッ
煙突から飛び出した触手は彼女の腰に巻き付きました。それはつるりとした表面で、生温かな粘液で覆われていました。
「な、なんなのよぉ……離せ、離せぇぇ!」
ぐいぐいと引っ張るものの、触手はびくともしませんでした。
そしてすぐに、飛び出してきた煙突に戻ろうと、触手は彼女を引っ張りました。
「やっ! やだ、やだ!」
このまま煙突の中に引きずり込まれたら、いったい何が起きてしまうのか。彼女は想像もできませんでした。ですが、すやすやと眠る子どもたちの枕元にプレゼントを置く、という夢見たことは起きない、それだけはわかっていました。
「ひ、ひいっ」
身体を浮かされ、煙突の中に入ってしまいました。彼女は寸前で煙突の掴み、かろうじて上半身を乗り出しました。中に入ってしまった下半身を、なんと煙突のふちがすぼまり、咥え込んでしまったのです。
「な、なにこの煙突……! まるで、口みたいに……!」
彼女の言う通り、煙突は口のようでした。
そう、さながら、家の口が、煙突かのように。
「うっ、な、なに、これ……」
じゅうじゅうと、下半身が吸われました。煙突が、彼女を吸い込もうとしてしました。
「ぐぅ、うううっ」
その吸引は強く、彼女の抵抗むなしく、徐々に、少しずつ、身体は煙突の中に入ってしまいます。
雪は吹雪に変わっていました。急激に彼女の体温を奪い、手がかじかんでしまいました。
「やだ、たすけ、たすけて!」
その声は誰にも届きません。
「たすけて! たすけてよ! ねえ、ねえったら!」
サンタガールは、自分の使命を恨み始めました。
自分がサンタでなければ、こんなことにはならなかった。そう何度も、心の中で叫び続けました。
「たすけっ、たすけ……」
彼女は限界でした。
じゅるんっ
ごっくん
身体がすべて、煙突に呑み込まれてしまいました。
「はいっちゃった、食べられちゃったぁ……」
煙突の中はぶよぶよの肉壁になっていて、細かな突起だらけでした。それだけではありません、妖しげな臭いを発する粘液でべとべとになっていて、彼女の身体を揉みしだくように脈動しています。
空を、雪を求めるように手を伸ばそうとしても、肉壁が身体をギュウギュウに圧迫して少しも動けませんでした。
「臭いし、あつい、し……出ないと、はやく……」
光のない、まっくらなそこでも、彼女は冷静に考えることができました。それは、わずかに残っていたサンタの使命によるものだったのかもしれません。
手、脚をわずかに動かし、上へ、上へと行こうとします。しかし、少しも進みません。
ぐぎゅ、ぐぎゅん
「ああ、ああああ!」
煙突の大きな震えは、彼女をあっという間に引きずり込んでしまいます。下に行けば行くほど、粘液の臭いは強烈に、粘度は増し、何よりも肉壁がさらに狭く、熱くなっていました。
「はぁ、なにも、もう……もう!」
半ばヤケになりながら叫びました。どれだけ気丈に振舞おうとも、彼女は気づき始めていました。
もう、出れない、と。
「え、や、やだっ……」
ふと、不気味な突起が当たる肌が増えた気がしました。服が溶けていたのです。逃げようとするほど、動こうとすればするほど粘液に触れ、肉壁と摩擦し、すぐにボロボロになってしまいました。
彼女は肉壁の中で、一糸まとわぬ姿になっていました。
「ああ、最低、最低だ……」
あまりに非現実なことに脳の処理が追いついていないのか、ぐらぐらと揺れていました。それが粘液の臭いが持つ催淫効果ということに、彼女は気づきません。
ぐちゅ、ぐちゅと、まるで咀嚼をするように肉壁が動きます。彼女は抵抗することを諦めたように、その動きに身体を預けていました。
異変が、始まりました。
「んっ、なに、これぇ……」
肉壁が動くたび、粘液が身体をこするたび、肌を、神経を、脳を灼くような感覚。その感覚を、彼女は知っていました。
性感。
「うそ、そんなのうそ……こんな、ことで」
認めたくありませんでした。ですが、身体は嘘をつくことができません。荒ぶる息、火照る身体、何よりうずうずとする下半身。
「わたし、はじめてもまだ、なのに……からだ、きれいなままで、いたかったのに……ん、ああうっ」
叫びは、喘ぎと呟きに変わっていました。快楽に流されていく身体と心、そして純潔が散らされてしまうのだろうという絶望。ずるりずるりと呑み込まれて行きました。
肉壁の脈動が止まりました。彼女は足元に床のような肉壁があることに気づきました。どうやら、ここが最奥のようでした。
そこにたどり着くと、肉壁の動きが変わりました。今までは大きくグラインドするような波でしたが、じりじりと、彼女を挟み込むのような迫る動きになりました。
「んぐ、くるし、ぐ、ぎゅっ……」
息苦しいほどの圧迫感。すぐに快感へと変換されていきました。もう何が起きようと、理性がこの快楽を跳ね飛ばすことはできません。
だから彼女は気づきません。少しずつ、身体が溶け始めていることに。
「あついよぉ……からだ、あつい……きもち、いい……」
快感を帯びたまま、優しく、身体はドロドロに溶かされていきました。
【結論:クリスマスさえなければこんなことにならなかった。クリスマス超危険】