弟2章 あばずれ姫の冒険
弟2章 あばずれ姫の冒険
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ここはサントハイムの国。
この国の王には一人娘がいました。
彼女はとんでもないお姫様だったのです。
サントハイムの城内、一人のじいさんが大声で誰かを探し回っていた。
「カリフト!カリフトはどこじゃ!」
彼は、この国の神官長のブラブライであった。
彼が探しているのはカリフト。王女付き神官である。
「どうなさいました?ブラブライ様」
「おお、カリフト!貴様何をやっていた!」
「すみません、食堂でTVを見ていました。一体何事ですか?…まさか…」
「そのまさかじゃよ!また姫が、ヤリーマ姫が城を抜け出したのじゃ」
王女ヤリーマはその名のせいか、かなり好奇心旺盛に育ってしまった。性的な意味で。
王の目を盗んで、城の兵士や旅の行商人などを寝所へ引き入れては
ダンシングオールナイトである。性的な意味で。
彼女の精力は尽きる事を知らず
ある時などはプレイの激しさから、ベッド横の壁をぶち破ってしまったほどだ。
壁を直しにきた大工の若衆とも事に及んだと言うから相当なものである。
そんなヤリーマ姫であるが、最近では世話係の目を盗んでは城を抜け出して
城下町へ男漁りに出かける毎日なのだ。
「まったく…だからワシは王があのような名前を付けるのを反対したのじゃ!」
「名前のせいじゃありませんよ…名前のせいじゃ…」
カリフトと言う立派な名を賜った彼だが短小包茎であった。
二人は城下町へ着くと
「ワシはあっち、お前はそっち」
二手に分かれて姫を探した。
カリフトが裏通りを通りかかった時、廃ビルの階段にうずくまる少女が目に付いた。
「姫…帰りましょう」
カリフトの差し伸べた手を少女は振り払い悪態をついた。
「うるさいわ!ほっといて頂戴」
「ヤリーマ姫…」
カリフトはヤリーマの隣に座った。そして黙って空を見上げた。
空は高いビルとビルの隙間から申し訳程度にその青を覗かせている。
太陽の光はこの路地裏の底までは届かない。
カリフトは無力な我が身を思った。
「あたい…もうお城へは戻らない」
「何をおっしゃるんですか、ほら、戻りましょう、王が心配しますよ」
「父上が心配してるのはあたいじゃない!あたいの外交的価値さ!
どこかの国の王子と結婚させて、その国を乗っ取るためにあたいが必要なのさ!」
「そんなことありませんよ。王は…」
「嘘だッ!」
ヤリーマは両手で耳を塞ぎ叫んだ。
「あたいなんか…あたいなんか必要としてくれる人は居ないよ!」
「私には必要です!」
叫んだ後カリフトは正気に戻った。
「あ、いえ…ですから、姫が居ないと私は…」
「あんた…そうか、カリフトあんたアタイの事が好きだったんだ
それであたいが他の男と寝るのが気に入らないんだ!そうだったのね」
「いえ!そんな、そういうわけでは…」
「結局あんたもあたいの体が目当てのそこらの男と変わらないのさ!」
「姫!」
「土下座して頼みな!そしたら寝てあげないことも無いわ」
「やめてください!」
「あんた魔法使えるわよね?ベッドの中でバイキルト使うのよ!」
「私は僧侶なのでバイキルトは使えません…」
カリフトの脳裏に突然昔の記憶がフラッシュバックした。
学生時代付き合っていた彼女と初体験の後こう言われたのだ。
「ピオリム使ったの?」
「真面目に答えてんじゃないわよ!つまんない男ね」
ヤリーマは立ち上がって両手を組んで伸びをした。
その横顔は笑っているようにカリフトには見えた
「あんたとだけは寝てあげない」
飛び切りの笑顔でヤリーマは振り向いた。
カリフトは魔法のように固まってしまった。
彼がブラブライの呼びかけによって正気を取り戻したとき
既にヤリーマは居なくなっていた。
こうしてカリフト達の、姫を探す旅が始まった。
新都社は良い子の雑誌だということを思い出したので
下ネタは自重して第2章はこれでおしまいです。
次回、「弟3章 死の武器商人トルコネ」でお会いしましょう。
ごきげんよう。