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第1話

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自分で言うのも何だけれど今回の事件の主役は僕に他ならなかった。

名探偵である彼女も、お節介な作家も、あの占い師も今回の件では只の脇役にすぎなかった。

まあ個人的な意見に過ぎないんだけれど。

これから物語を始めるに当たって、どこから始まるべきか。

色々意見は分かれる所だが、あくまで僕を主人公とする立場から言うと、僕の所に先輩から電話がかかってきた所から始めるべきだろう。

その頃の僕は遊び歩いているワケでもまじめに勉強しているワケでもない半端な大学生活を送っていた。

サークルにも入っていないものだから友達もろくにいず、バイトと授業以外はロクにやることもない。

夏休みに入るとその暇さに拍車がかかり、どこかに旅行に出かけようかとさえ思っていた。

その時渡りに船というか何というかある先輩から連絡が来た。

それは連絡と言うには余りにも一方的なもので、
「お前、どうせ夏休み暇だろ。俺が行けなくなった旅行のチケットやるから行ってこい。チケットは後で送る。」

とだけ言って返答を待つ前に電話を切ると言う物だった。

これじゃあ旧交を温める所じゃなかったなと思いつつ旅行の準備を始めた。
旅行先は所謂孤島の館である。

まるで推理小説のような話だが、なんでも、館の前主人がミステリ狂で実際にクローズド・サークルを再現しているとか。

その不便さから殆ど用いられなかったが、前主人の遺言で毎年8月になるといろんな人脈から物語に出てきそうな個性のある人物を集めてちょっとした会合をするようになったらしい。

普通そんな胡散臭い集まりに参加しろ、と言っても物好きはそうそういない。

奇人変人と言ってもそんなに暇ではないのだ。

そのため、参加した者にはそれ相応の報酬が支払われるらしい。

俺の場合は先輩に総取りされる契約に(勝手に)されてしまったのだけれど。

どんな思いで彼がこんなことを言い出したのかは全く不明だが、なぜ遺族がこんな律儀に手間と金のかかることをしているのか少し不思議に思った。
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先輩から送られてきた手紙に載っていた集合場所には既に俺と後一人を覗いて既に全員集まっており、如何にもねこみみが似合いそうなメイドさんに名前を確認してもらってから既に集まっている人を観察する。

やはり、と言うべきか流石と言うべきかかなり個性的な面子がそろっている。

如何にも悪役といった顔のサングラスを掛けている男や、右手に水晶玉を抱えた着ているゴスロリが全く似合っていない女軍人といった顔付きの女性など、普通の生活を送っていても会うことは全くなく、お付き合いも丁重にお断りしたくないといった雰囲気を漂わせていた。

僕もさっきのメイドさんにはそんな目で見られているのかもしれない、と思うと少し悲しくなる。

集合時間になるまで本を読んで時間をつぶしていたが、一向に最後の一人がこなかった。

猫娘さん(仮名)ともう一人の男の人がどこかと連絡をとっていた。

聞こえてくる断片的な会話から想像するに、何かゴタゴタに巻き込まれて遅れているいるらしい。

二人はさらにもう少し話し込んでから対応を決めたのか。

男が前にでて来て、
「最後の一人がまだ来ていませんが間もなく時間になりますので出発致します。」
と言った。

僕は本を閉じ、荷物をもって船の中に入った。
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