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X 塔から脱出するゲーム2 X
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X 終わりのあとのお話 X
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『“救世主”を復活させろ』
僕が『命令』を下すと、全身から血を垂れ流していた“救世主”の傷は癒え、目に光りが戻りました。
むくりと“救世主”は起き上がり、不思議そうに周りをキョロキョロと見回して……僕に気づきました。
「お前……たしか、あのときの」
「そうだよ。改めて挨拶しておこうかな。
はじめまして、神道です」
“救世主”は何も応えない。まあ、最初から期待はしていないけどね。
「私は、死んだはずじゃあ」
「うん、死んでた。でも復活させたんだ」
「アイツは……あの超能力者は、どこへ」
「月子のことかい? もうとっくに出て行ったよ。もうね、ゲームは終わったんだ。
言っただろう? 終わるまで介入しない、てね」
いまひとつ状況を理解していない“救世主”。
なら、簡単に言ってあげよう。
「“救世主”、キミは負けたんだ」
その言葉に、ようやく理解できたのだろう。
“救世主”はむくむくと、怒気が放出される。
「誤解のないように言っておくけど、ウチは負けたことに腹を立ててるわけじゃない」
「ふぅん、ならどうして怒っているの?」
「お前は! なぜ敗者に、手を差し伸べた!? これはウチだけやない、アイツへの冒涜でもあるんやで!」
「意外に紳士的な思想だなぁ」
女性だから淑女か。どっちでもいいけど。
「たしかに復活させたのは僕だ。でも、そこから先はどうでもいい。死にたいのなら、さっさと死んでくれてもいいよ」
“救世主”は押し黙る。
どうやら、たった一度の敗北で『我が身の可愛さ』に気づいたようだ。
「さて、僕はなぜキミを復活させたのだと思う?」
「……わからない。でも、単なる道楽じゃないことは、わかる。何が目的なん?」
お、良い理解力だ。
これならさっさと本題に入っても大丈夫だろう。
「キミや月子は登場人物だ。一方、僕はストーリーテラー。そして僕は、物語を良い方向に導くという使命がある」
「なんのこっちゃ……」
「ここは適当に聞き流してくれていいよ。キミに言ってるんじゃない、皆さんに言っているんだから」
「皆さん?」
「うん。この世界を見ている、皆さんだよ」
皆さん。今回のゲーム、いかがでしたでしょうか?
満足していただけたのなら、恐悦至極。物足りない方は……すみません、としか言えません。
さて、知っている人もいるかと思いますが、僕は、皆さんが期待に応えるのが使命です。そして皆さんの期待は、声となって僕の耳に入ってきます。
お話が始まったときは期待と共に「完結してほしい「投げないでほしい」。
完結が近づくにつれ「終わらないほしい」「もっと続いてほしい」。
完結したら労いや次回作への期待へと変わります。
ですが、今回……別の声が聞こえてきました。
『もしかしたら、また続編があるのでは……?』
誰か一人でも期待をするのであれば、僕は全力でそれに応える努力をしましょう。それが大きければ大きいほど、僕の力は増していきます。
「……なんで壁に向かってしゃべってるん?」
はっ、またやってしまった。恥ずかしい。
「今のは見なかったことにしてください。
……そろそろ、行きましょうか」
「あ? 行くって、どこによ?」
「次ですよ、次」
「次? 次ってどこやねん」
「次は次、それ以上も以下も、以外もない」
“救世主”は僕の言ったことの半分も理解できていないでしょう。
ですが表情は子供のように、好奇心に満ちています。
僕はその表情に大満足。役者は多ければ多いほど、良いのですから。
「じゃあ手始めに、この塔を捨てましょう。ここから出て、これからのことを考えていこう」
「なんや行き当たりばったりやなぁ」
「それぐらいのほうが楽しいじゃないですか」
長くなりましたが、今度こそゲームは終わり。
「それでは皆さん」
「次のゲームで、また会いましょう」