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04.初心者の塔

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*   初心者の塔                              *
*                                      *
*     難易度:BASIC                        *
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*     プレイヤー:立川はるか(戦士)                  *
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*   ここは『初心者の塔』                         *
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*   武器や防具の装備                           *
*                                      *
*   トラップの種類や発見・回避の仕方                   *
*                                      *
*   モンスターとの戦い方                         *
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*   生きる術が、ここにある                        *
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6, 5

  

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*   初心者の塔                              *
*                                      *
*     青空が広がる屋上                         *
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「ん、んんぅ……」

 立川はるかが目を覚ますと、そこには雲ひとつない青空が視界いっぱいに広がっていた。
 とりあえず上半身を起こし、両腕を頭の上に伸ばして深呼吸。ひとまず身体に異変はない。腕は動くし脚も動く。意識は10時間以上寝たぐらいにすっきりとしている。
 自己の確認ができれば次は周囲の確認。あろうことか、ここにいたるまでの記憶がないのだ。

 床はゴツゴツとした石畳。ところどころに苔が生えている。
 周囲は壁で囲まれていてとても高い。まるでそびえ立つ巨人のようだ。
 遠くに箱が2つあり、さらに奥には階段のようなものが見える。

 自分以外の気配は感じない。
 味方となる存在も、障害となるモンスターの姿もない。

 疼く。
 誰でもいいから殺したい。

『あ、あー、聞こえますか?』
「……!」

 突然声が聞こえた。咄嗟に両腕で頭部を守るように構えるが、やはり誰もいない。
 変わらず気配は感じない。しかし声はとても近くから聞こえた。
 すぐ近く、どこかにいるのだ。

『怖がらないでください。この声の感じでわかるでしょう? 敵意なんてありませんよ』

 言われた通り、嫌な感じはしない。
 だが姿が見えないというのは不安だった。

「そうだけどさ……えっと、どこにいるの?」
『首ですよ、首』

 と言われて、おそるおそる首を撫でる。
 すると、そこにあった。

 首輪。触れた感じだと余計な装飾のない、シンプルな輪っかに思えた。
 まさかこれがしゃべっている……? 立川はるかは半信半疑だった。

「もしかして……キミは首輪?」
『はい、私は首輪です。この塔限定で進行・説明をさせていただきます』
「ここ限定?」
『はい。まだはじめたばかり、不安でいっぱいかと思います。
 初心者の方がこのゲームに慣れるよう、お手伝いをさせていただきます』

 言っていることが本当なら頼りになる。が、立川はるかはすべて鵜呑みにするほどお気楽思考ではない。

 それにしても、と立川はるかが思った。『塔』という言葉が気になる。
『塔』と言うからには階層の構造になっている。そして青空が見えることから、ここは屋上。

『そのとおりです。このゲームの目的は、塔の屋上からの脱出です』
「(いま心の中読んだ……?)」
『フロアを探索し、階段を探し、降りる。そして出口から外へ……という、シンプルなルールです。
 ではまず、あの2つの宝箱を開けてみましょう。冒険に大切な装備がありますよ』

 ずっと気になっていた箱――宝箱に歩み寄る。
 なんとなく嫌な予感がする。が、言われるがままに左の箱を開けた。


【棍棒を手に入れた!】


 柄の部分から大きく膨れ上がり、トゲトゲが無数についた、絵に描いたような棍棒だった。

【素手 ―> 棍棒】

 手に持ち、しげしげと眺める。
 素材は木なのだろう。種類はわからなかったが頑丈そうだ。それにずっしりと重い。多少非力でも、振りかぶって殴れば威力は期待できる。
 それにこのトゲトゲ。見た目のアクセントが利いていてとても良い。

 けれど、少し不満だった。

「刃物が良かったなぁ……ノコギリとか」
『切断の感触も良いと思いますが、やはり鈍器で殴打したときの粉砕感はすばらしいと思いますよ』
「たしかにそうだけどさー」

 肉を切り裂く感触。バシャバシャと浴びる温かな返り血。
 それを思い描くだけで腰から下が熱くなってしまう。

『あの、妄想もほどほどにして、右の箱開けてください』
「う、うるさいっ」


【布の服を手に入れた!】


『……どうしました』
「これを防具と言うまいな?」
『防具ですよ、防具。たしかに単なる服ですが……
 でも今のあなた、ボロ布をまとっているだけじゃないですか。贅沢はいけませんよ』

 言われたとおり、立川はるかはボロボロの布切れを上半身と下半身に巻きつけ、最低限隠しているだけにしかすぎなかった。
 もちろん下着なんてない。たった2枚外すだけで全裸なってしまうのが今の装備だった。

「たしかにこれよりもマシ」と納得するしかなかった。

【ボロボロの布切れ ―> 布の服】

 ようやく服らしい服。ベージュでとても清潔感があった。が、あいかわらず下着がない。
 それにサイズが身体よりやや大きいぐらいのため、戦士にしては似つかわしくないほどに膨らんだそれが胸元を強調していた。

「どうにか見せられるようにはなったけど……はぁ」

 布の服と棍棒。どう見ても戦士の出で立ちではない。それが立川はるかの気分を沈める。

『さあ、装備も揃ったところで冒険の開始です!』
「はぁ……」
『あらら、テンション低いですね。ですがそんな立川さんに朗報。後ろをご覧下さい』

 首輪のハイテンションに苛立ちながらも振り返ると――

「ウソ……」

 さっきまで自分が寝転んでいた、そこ。
 そこに、そいつがいた。

 ゴブリン。
 ボロ布を腰に巻きつけ、手に錆びた斧を持ったゴブリンが、じぃっと立川はるかのことを見つめていた。

『試し殴り用にゴブリンを一匹用意しました。これでテンションを』
「ふふ、アハハぁ」
『立川さん……?』
「アは、ハ、はっ、ハッハァ、ハァ、ハァハァ、ハァ!」

 あれだけ低かったテンションは、たった一匹のモンスターによって急激に上昇した。

 戦士の立川はるかは何かを壊したい、誰かを殺したい、そんな狂気を持っていた。
 言ってしまえば殺戮衝動。それが棍棒を手にし、ゴブリンを目にしたことで爆発した。

 立川はるかは奇声を発し、棍棒を大きく振りかぶってゴブリンに走った。
 一歩、二歩。そして至近距離で両手で棍棒を持ち、振り下ろす――!


 ガチンッ


「いっ……!」

 立川はるかの渾身の一撃を、ゴブリンはあっさりと避けた。
 全力で振り下ろした棍棒は床にぶつかり、その衝撃が両手に走り硬直してしまう。

 さして知能が高くないゴブリンも、その隙を逃さない。


 ジャリ……


「――アッ」

 ゴブリンの攻撃モーションは遅い。立川はるかは棍棒を捨て、身体をひるがえす。
 けれど避け切ることはできなかった。肩から脇腹にかけて、錆びた斧が一閃した。

 熱いのか寒いのか、痛いのか痺れているのか。感覚はなかった。
 でも、一つだけわかっていた。

 血がドバドバと溢れている。

「あっ、きぃ、きら、切られ……いいいいいいアアアアアアアっ!」

 尻餅を着き、がむしゃらに叫ぶだけ立川はるか。もちろん血は止まらない。
 喉奥から何かが込み上げてきている。
 とても熱い液体。きっと血なのだろう。

8, 7

  



『あなたバカですか。真正面、しかも叫びながら突っ込んで勝てると思いましたか?』
「いたいいたいいたい、たすけ、たすけて、たすけてっ」
『大丈夫ですよ、どうせ死んだって』


 ボキッ


 振り上げられた斧が、立川はるかの脳天に突き刺さった。


 ――ごぷっ


 断末魔の変わりに立川はるかが吐き出したのは、鮮やかで、さらさらとした血だった。



『……説明途中だったのに。まあいっか』



【ゲームオーバー】
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*                                      *
*   初心者の塔                              *
*                                      *
*     何もない大広間                          *
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 その後、戦い方を首輪から指南された立川はるかはゴブリンの頭部を粉砕、残った身体を殴りまくってミンチにしてから屋上を後にした。

 次のフロアはがらんとした大広間だった。
 見渡す限り何もない。物もモンスターも存在しない。

「ここ、なに?」
『ここではトラップについてご説明します』
「トラップ?」
『はい。塔の中はアイテムやモンスターだけではありません。プレイヤーの障害となるトラップ、つまり罠が存在するんです』
「落とし穴とか、トラバサミとか?」
『そうですね。それはほんの一例ですが、単純に死に至らしめるもの、妨害を目的としたもの、実に多種多様です』
「ふぅん……って、死っ!?」
『さっき死んだじゃないですか……ああ、言い忘れてましたね』

 こほん。首輪は咳を一つつく。

『この塔で死亡、あるいは行動不能となった場合、それはゲームオーバーとなってそのフロアの入り口……今立っているところまで戻されます。簡単に言えばリセットされた状態ですね』
「そういや、さっきは気づいたら戻ってたなぁ……ゴブリンでテンション上がりすぎて忘れてた」
『……それはそれとして、このシステムがこのゲームの醍醐味なのですよ。
 さあさあ、存分にトラップを味わい、学習してください』

 死んでもリセットされる。そう言われても恐れてしまうのが人間であり、立川はるかも例外ではない。できる限り死にたくない、誰かを殺したい。それが立川はるかなのだ。
 じぃっと、目を皿のようにして床を見た。すると足元の床で少し膨らんでいるところがあった。

「ん、ボタン……?」
『気づきましたか。そのボタンをうっかり踏めば、もれなく爆死する即死型トラップです』
「それって地雷!?」
『平たく言えばそうです。このフロアにはひと通りのトラップを用意しましたので、いろいろ覚えてくださいませ』

 身体を張ってまで覚える気なんてさらさらない。立川はるかはのそりのそり、目に見えるトラップを回避し、ゆっくりと進んでいく。
 部屋の奥に階段がある。そこを目指す。
 だが、そう簡単にもいくはずがない。


 ぺちゃっ


「ん?」

 肩に、何かが落ちてきた。
 それはうっすらと黄色がかかった、ツンとすえた臭いのする粘液。
「なんだこれ?」と思うよりも早く。


 べちゃ、べちゃべちゃべちゃドロドロドロ


 大量の粘液が立川はるかに降りかかった。

「わ、わ! なん、なんだこれ!?」

 頭から足元まで、浸るように降りかかる謎の粘液。
 ややパニックになり、立川はるかはその粘液を掴み、拭い、振り払おうとした。

「うう、臭い……なんなんだよう……」
『あの、あんまり触れないほうがいいですよ』
「なんでよ!?」

 立川はるかは、首輪のその言葉をすぐ理解するようになる。


 ドロリ


 布の服が溶け始めたのだ。
 ずくずくと表面が泡立つように小さく穴が開き、そして次第に繋がり大きな穴となって溶けていく。

「え、ちょ、ちょっとぉ……!」
『これは装備品を溶かすトラップ。棍棒は素材が木なので溶けませんが、布の服は……』
「そんな、やだ、やだ!」

 はたいたり、パタパタと揺らしたりとどうにか粘液を取ろうとする。しかしそれは逆効果。激しく動くほどに摩擦が増し、布の服はぼろぼろとゴミクズのようになっていった。
 立川はるかが裸になるまで、そう時間はかからなかった。

「そんな、やだぁ……」

 胸、そして女性器を両手で隠し、身体中を粘液で汚したまま床に座り込んだ。
 ここには自分と首輪以外は存在しない、誰も見ていない。それでも恥ずかしい、恥ずかしすぎた。

『ほら言わんこっちゃない……どうせ誰も見ていないんです、堂々とすればどうですか?』
「そうは言ってもぉ……」

 一糸まとわぬ、しかも謎の粘液だらけの身体に棍棒を持つ少女。なんともマニアックな姿である。

『ほら、進んでください。そうでないと脱出は永久に無理ですよ』
「うう……」

 そう言われるとどうしようもない。立川はるかは両手で身体を隠したまま、もじもじ内股気味に進む。
 そんな状態でトラップを避けれるはずもない。カチリ。手のひらほどの大きさのボタンを踏んでしまった。

「う、そぉ……」
『あら? このトラップは……』


 ぎゅるり


 立川はるかの両脚に、太い、まるでミミズのような触手が巻きついた。

「な、なにこれぇ……」
『ええと、これは』

 首輪が答えるよりも早く、トラップは行動を移した。

 大量の触手が床から噴き出し、それらが立川はるかの全身を襲う。
 両腕、そして腰。逃さないと言わんばかりに巻きついた。

「え、ちょ、ちょっとぉ!」

 隠していた身体が無理やり晒される。立川はるかは顔を真っ赤にして叫んだ。
 もちろんそれだけでは終わらない。拘束する触手よりも細い触手が現れ、うずを描くように胸に巻きついていく。

10, 9

  



「え、やだ、やっ……ん、あアァ」

 ぐにぐにと揉みほぐし、執拗に乳首を引っ掻く。羞恥と嫌悪しかなかった立川はるかに別の感情が宿り始める。

『これはくすぐりのトラップ。一時的に行動を妨害するトラップなんですが……
 先ほどのねばねばの粘液がローションの効果を生み出しているようですね』

 触手は遠慮なしに立川はるかを迫る。それはただ純粋にくすぐらせるのが目的なのだろう。しかし、事態はそう単純なものではない。首輪が言っていた通り、粘液がローションとなりまったく違う効果をもたらしていた。

「や、あ、あ、ア、はぁ、ん……!」
『あらあら、えっちぃ声出てますよ? どうしたんですか?』
「だま、だまれぇ……ふぁ、ふぁあああああっ」

 気づけば身体中を覆うように触手が床から飛び出していた。どれもが立川はるかの肌を舐め、這い、粘液で汚していく。
 立川はるかも戦士である以前に人間。少なからず性欲ぐらいは備えている。それが今、2つのトラップによって目覚めようとしていた。

「ダメ、もう、それ以上は……」
(も、もっと……あぅ、なんでおねだりなんて……)

 無数の触手はある一箇所だけを避けていた。その一箇所とは、女性器。そこだけは少しも触れられていなかった。
 それが好意なのか悪意なのかはわからない。どちらにせよ、立川はるかは我慢の限界だった。

「おねがい、わたしの――」

 口にしてしまう。その寸前で触手は床の中へと引っ込んだ。
 ぐったりと床に座り込む立川はるか。その呼吸は荒く、艶かしい。

「うっ、ふぅ……はぁ、はァ」
『ご気分は良いみたいですね』

 首輪は面白いことをひらめき、(首輪なので顔はないけれど)ニヤリとほくそ笑んだ。
 立川はるかに気づかれることなく、首輪はこっそりと『都合の良いトラップを作り出し、起動させた』。

「うっ……!」

 首輪の暗躍なんて知るはずもない。身体の異変でトラップに引っかかったことを理解した。
 立川はるかの身体は、まるで他人のものになったかのように動かなくなってしまった。

『おやおやぁ~? トラップに引っかかったみたいですねぇ~』
「ウソだ……だって、何もなかったのに……」
『体温感知とか、そういう最先端なトラップなんじゃないッスかね』
「そんなめちゃくちゃな、ヒッ」

 操り人形のように、右手が自分の意志とは無関係に動く。

『ああでも、そのトラップはかなりラッキーです、アタリと言ってもいいでしょう。
 ……今自分が最もしたいことを実行してくれるんです』
「最もしたいこと……!?」
『そうですよ。空を飛びたいと思っていたら飛べるようになる、夢のようなトラップです』
「ぐっ……やめ、やめろぉ……」

 最もしたいこと。立川はるかは思い描いていたことに戦慄してしまう。
 どれだけ抗おうとも身体は言うことを聞いてくれない。座り込んだまま、下品に脚を開いてしまう。

「ダメ、ぜったい……ダメ……!」

 そんな願いはむなしく響くだけ。右手に持った棍棒、その柄をゆっくりと股間に近づけていく。

『あら? あらあらあら? もしかして……?』
「やだ、見るな、見るなぁ……」

 ぐりっ

「ひうっ」

 膣口に柄が押しつけられる。先端がやや膨らんだ棍棒は、意に反して理想的な形だった。
 先ほど浴びた粘液と、別の効果をもたらしたくすぐりのトラップ。それらが立川はるかの身体をほぐし、快感を高め、オンナの部分を目覚めさせてしまった。
 あとはただ、手前に引くだけ。


 ぐちゅっ


「アッ」

 膨らんだ先端が、入った。


 ずっ、ズズ、ズッ


「いっ、いた、痛……!」

 手は勝手に進めていく。
 そして。


 ぶちん


【立川はるかは非処女になりました】


『えっ、初めてだったんですか?』
「だ、だまれぇ……」
『あははは、トラップに引っかかって、興奮して、それで棍棒を突っ込みたくなったのですか? ハハハ、こりゃ愉快だ』
「くそっ、ク……ああ、ふぁあああああっ」

 もともと戦士という職業なので、痛さを我慢するクセがついている。これも同じなのだろうか、身体を突き抜ける痛さは一瞬だけ、あとは波打つように快感が襲ってきていた。

「いやだ……いやな、はずなのにぃ……」
『ほら、もっと素直になったらどうですか? 大丈夫です、意識はともかく行動はトラップの効果なんですから。あなたは、悪くないんです』
「悪く、ない?」
『そうですよ。どうせリセットもされたら身体だって処女に元通り。
 なので。
 あなたは。
 悪くない。
 自分の欲求に流されなさい』

 その言葉で理性が切れたのだろう。ずるずると動かしていただけの棍棒のストロークが、どんどんと早くなっていった。
 立川はるかの口から、甲高く甘ったるい喘ぎ声が漏れる。

「あア、いい、いいのぉ」
『そう、そうです。素直に、正直に、受け入れればいいのです』
「あー、アー、ん、んっ、ん!」
『ふふふアハハハ、意識が切れそうなったら“イく”って言うんですよっ』
「い、イイ、いいいいっ」
『ほら、言いなさい!』
「イく、わたし、イッ、イっくぅうっぅぅうううぅうぅっ!」

 びくんっ。大きく身体を震わせ、立川はるかはゴロリと寝転がった。
 気を失ったのだろう。光りのない目で天井を見つめているだけだった。
 

『あらら、これは行動不能と見ていいんでしょうね。
 ではここまでということで。私もそこそこ楽しめて満足です』



【ゲームオーバー】
12, 11

  

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*                                      *
*   初心者の塔                              *
*                                      *
*     何もない大広間(2回目)                     *
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『気分はどうですか?』
「……最低」

 首輪が言っていたとおり、気づけば入り口に戻っていた。
 布の服は元に戻り、おそるおそる身体(下半身)を確認すると、たしかに戻っていた。
 しかし記憶はしっかりと残っている。戦士の魂である武器を慰みのために使ってしまうなんて!

『元気だして行きましょうよ。どうせ遅かれ早かれ散るもんなんですから』
「下衆すぎるだろ、その発言は……」

 気分が盛り上がらないまま、立川はるかは進むことにした。


 カチッ


 足元にあったものは、1回目に首輪が言っていた『うっかり踏めば、もれなく爆死する即死型トラップ』。
 すっかり忘れていた。

「あっ」
『ああっ』



 ボンッ!



【ゲームオーバー】
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*                                      *
*   初心者の塔                              *
*                                      *
*     異臭漂うフロア                          *
*                                      *
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「うっ……」

 立川はるかはそのフロアに降り立つとすぐに鼻を抑えた。

 まず周囲に満ちる臭い。とにかく血の臭いがひどい。
 それもそのはず、壁や床に血がべっとりと塗りついていた。

 床にはゴブリン――だったものがゴロゴロと転がっている。
 生きているはずがない、そう思えるほど悲惨な姿だった。

 どれも共通して言えることが、肉のところに歯形がついているということ。
 咀嚼されたり食いちぎられたり、骨さえ見えている死体もあった。

「なんだここ……じゅるり」
『ふふふ、このフロアは今作の売りのシステムがあるのですよ』
「ふぅん……」

 立川はるかはさして興味がなかった。というのも、せっかくなぶり殺しにできるゴブリンたちがすでに死んでいたからだ。
 歯形から見るにモンスターという類ではない。おそらく、同じ人間。
 間違いなく、まともな人間ではない。

『楽しそうですね。どうかしましたか?』
「んー? まあねー……じゅるっ」

 気づけば涎が垂れていた。服の下の乳首が硬くなり、擦れていちいち反応してしまう。それに下半身はとっくに洪水だ。
 相手はどんなやつだろう、どんな表情を見せてくれるのだろう。楽しみでしかたなかった。

 フロア内を練り歩く。大きな部屋、小さな部屋、いろいろとあるがどれもゴブリンたちの死体がある。
 進めば進むほど増えていく。いよいよ通路にも転がり始めたころ、ある部屋に踏み入った。

「ん……?」

 比較的きれいな部屋だった。
 その中央に、いた。

 真っ赤なローブ、真っ赤な三角帽子を被った、自分によく似た、相手。
 一目でわかった。魔法使いだ。

「……ああっ、人がいる! おーいっ」
「ねぇ、あの人誰……?」
『見ての通りの魔法使いです。
 そう、これが今作からの新システム! インターネット回線を使い、他プレイヤーと同時に遊ぶことができるのです!
 共同戦線を張るのも良し、対決するのも良し。ただマナーとして、最初に意思を伝え合うのは必須ですよ』
「いんたーねっと? なんのことだろう……」

 魔法使いの立川はるかはスタスタと歩き、戦士の立川はるかに向かう。

「あなたも屋上から降りてきたんですか?」
「うん、そんなところ」
「私も目が覚めたら屋上にいて……命からがら降りて来ましたが、魔力も尽きかけでどうしようかと思っていたんです。
 もし良ければ、ここから協力して出口を目指しませんか?」
「……うん、いいよ」
「やったー、では前衛をおまかせしますっ」

 戦士の立川はるかはうなづき、前を歩く。
 魔法使いはその後をついていく。

「ああそうだ、変なこと聞いちゃいますが……何か、食べるもの、持ってないですか?」

 ふるふる。戦士の立川はるかは振り向かずに首を振る。
 魔法使いは大きく口を開き、べろべろと舌なめずりをする。

「私、持ってた食料が尽きて、しかもその辺の食料もぜんぶ『喰べ』ちゃって……もうお腹ぺこぺこなんです」

 だらだらと唾液が流れていた。目もちかちかと異常な光が灯っているようにも見えた。
 戦士の立川はるかはそんな様子に気づいていないのか、ただ前を見て歩くばかり。

「だからぁっ」

 ニタァ。
 魔法使いは笑う。

「喰べさせてぇぇぇ」

 魔法使いは戦士の立川はるかに跳びかかった。



 パシッ



「――――ッ!」

 声にもならない驚き、からからにかすれた悲鳴が響いた。
 魔法使いの手が戦士に届く直前、戦士は振り向いてその手首をつかんだのだ。

「う、あ、うあああああっ!?」
「そんな殺気丸出しにされて気づかないとでも思ったの?
 それに臭うよ、血の臭い。嫌いじゃないけどさ。
 あんたでしょ? ゴブリンたちを食い散らかしたのは」
「くっ……」

 魔法使いは手を振り払い、距離を取る。
 臨戦態勢に入っている。それなのに、戦士の立川はるかは棍棒を床に捨てた。

「どういうつもり?」
「まー女の子なんだし、素手で相手してあげるよ」
「お前、おま、えっ、ふざけるなよ……!」

 魔法を紡ごうとした。
 唇がぴくりと動いたその瞬間、


 パチンッ


「いっ……!」

 間合いを詰めた戦士の立川はるかが魔法使いの頬を叩いた。
 軽い音だったが痛さは反比例しているのだろう。魔法使いの頬はじんじんと痛み、熱を帯び、目に涙が溜まっていく。

「いたい……うう、う……」
「そんな至近距離で魔法を使わせてもらえると思ってるの?」


 ばちん!


「いたっ!」

 先ほどよりも強く、大きく振りかぶった平手打ちが逆の頬を叩く。
 いよいよ魔法使いの心が折れかけているのか、怯えきった目を戦士に向ける。
 それでも戦士はやめようとしない。また手を振り上げる。

「やだ、もうやだ、もう、やめて……!」

 頭を抱え、魔法使いはしゃがみ込み、ガタガタと身体を震わせる。
 勝敗は決した。戦士は振り上げた手を下ろす。そしてその手でゆっくり、優しく魔法使いの頭に触れ――


 ぐちゃ


 そのままスタンプのように床に叩きつけた。髪をつかんで引き上げると、床と顔面はべっとりと血で汚れていた。
 折れた鼻からはどぼどぼと血がこぼれていた。

「ア、アッ」

 口からも血が流れている。床には歯が数本、落ちていた。

「今さらなんだけどさ、私ね、ゴブリンもそうなんだけど、魔法にもすごくイヤな思い出があるらしいんだよね」


 ぐちゃっ


「やめ」
「だから、あんたは悪くないんだけどさ」


 ぐちゃっ!


「――ガ」
「私は魔法使いが嫌いなんだ」

14, 13

  



 手を離すとぐちゃりと床に突っ伏した。びくん、びくんと身体を震わすだけで、魔法使いはとっくに死に体だった。
 戦士の立川はるかは捨てた棍棒を拾い、魔法使いに背を向けた。

『あの、まだ生きてますよ? いいんですか?』
「キミも大概鬼畜だなぁ……殺したらフロアの入り口からリセットなんでしょ? だったら死にかけた状態でここに放置するほうがおもしろいよ」
『戦士さん、容赦ないですね……』

 動かない魔法使い、満足気な戦士。首輪は両者を見つめ、ため息をつくだけだった。
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*   初心者の塔                              *
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*     出口があるだけの部屋                       *
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『戦士さん。あちらの扉をご覧下さい。』

 首輪に言われて目を向ける。そこには錆びついた鉄の扉。

『あれが最後の扉です。これでこの塔は終わりです』
「え? もう終わり?」
『はい。物足りなかったですか?』
「うーん……モンスター少ないよー」
『難易度の低い塔ですから……案外苦労せず進めましたね。驚きました』

 立川はるかは扉に手をかける。見た目に反して軽そうだ。

『ああそうだ、言い忘れていました』
「うん?」
『私から送る、最後の言葉です』










『お迎えの時間です』










『なんちゃってー? 驚きました? 恐怖しました?』
「なにわけわかんないこと言ってるんだろう……」

 立川はるかは呆れて扉を開けた。



 視界に飛び込んできた青空は、屋上で見た青空よりもずっと遠くにあるように思えた。
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*   初心者の塔 クリア!                         *
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 おつかれさまです。
 チョコです。

 クリアおめでとうございます! 遊んでみてどうでしたか?
 まだ初心者の塔です。次からいよいよ本当の冒険の始まりですよ!



 クリア特典として以下のキャラクターが開放されました。
 ぜひ新しいキャラクターでも遊んでみてくださいね。

 ◆初心者の塔クリア特典
 ・立川はるかの職業『学者』が使用可能になりました。

 ・キャラクター『伊藤月子』が使用可能になりました。
 ・伊藤月子の職業『超能力者』が使用可能になりました。

 ・キャラクター『斎藤星奈』が使用可能になりました。
 ・斎藤星奈の職業『タイムトラベラー』が使用可能になりました。
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文:ひょうたん 絵:真純 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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