タイプC・魔璃亜
「首領蜂隊に志願したいんだけど」
「お待ちしておりました、お好みの機体と
エレメントドールを選んで下さい」
「どの娘も可愛いなぁ、フヒヒッ! まあ普通が一番かな……」
―――――――
「今日からご一緒します、エレメントドールの魔璃亜です」
「よ、よろしく!」
「あなたが初めてのマスターになります。
頑張りますので、よろしくお願いします」
(可愛い……おっぱい揉んでいいのかな?)
「マスターはとても優秀なパイロットという事で、
戦闘技術に関するレクチャーは必要ないと聞いています」
「うん、でも怒首領蜂隊は初めてだからいろいろ教えて」
「かしこまりました。ところで一点、
これからマスターとお付き合いする上で、
どうしても尋いておきたい事があります。
よろしいでしょうか」
「ん? よくわかんないけど、なに?」
「マスターは童貞ですか」
「な、な、な、なんでそんなこと聞くの!?」
「童貞ですね」
「まだ何も言ってないのになんだよその確信し切った笑みは!
そうだよ、戦闘経験は豊富だけど
そっちの経験は一切ない童貞だよ、悪かったな!」
「ふふふッ♪」
「笑いやがった! 俺のセラミックハートが傷付いた!」
「失礼しました。それでは……
軍のマニュアルとは別に私が用意しました
童貞マスター専用の注意書がここにあります。
読んでおいて頂けますでしょうか」
「なんだよ、童貞だといけないことがあるのかよ」
「黙って読んで下さい、童貞マスター」
「ええと……エレメントドールは優秀なサポート要員ですが、
とてもデリケートな女の子です。
特にタイプCは『普通の』女の子であることを留意して、
万全の注意を払って接して下さい……?」
「まず朝起きたらおはようのキス、
歯を磨いて顔を洗った後も一回以上キスした上で
本日の訓練及び任務に向かって下さい。
任務中もエレメントドールとのコミュニケーションと
ボディタッチを忘れてはなりません。
お昼は特別な事情でもない限りエレメントドールの
手作りお弁当以外を食してはいけません。
体調を崩して薬を処方された場合、
必ずエレメントドールからの口移しで飲んで下さい。
寝る時も必ずおやすみのキスを忘れないで下さい」
「あ、あのさ……俺ときみは恋人にならないといけないの?」
「恋人ではありません、勘違いしないで下さい。
生死を共にする間柄として必要なコミュニケーションです。
チームは一体の動物、パイロットとEDは一心同体なのです」
「いやおかしいだろ、恋人でもないのに
こんなに頻繁にキスするとか……」
「経験の乏しいマスターのために
わざわざマニュアルを用意してあげたのです。
わかりましたか、童貞マスター」
(可愛くねえ……どこが普通なんだ……)
「なにか疑問でも?」
「俺が拒否したらどうする?」
「あなたは死にます」
「……他のエレメントドールにしようかな。
任務に支障がある場合、
交換する権利は認められているはず」
「受け入れなさい」
「…………」
「受け入れ……なさい……」
「急に泣きそうな顔にならないで!」
「伝えたい言葉はありますか?」
「そこまでするならもう恋人同士でよくね?」
「前向きに検討したいと思います、童貞マスター」
「おはようございます、マスター」
「おはよう魔璃亜……なんで添い寝してるの?」
「なかなか起きなかったので」
「意味わからないよ……寝てる間に何かした?」
「してません」
「そっか……」
「十回ぐらいキスしただけです」
―――――――
「朝食です、童貞マスター」
「あ、ありがとう、作ってくれたんだ……
でも童貞って言い方はやめて」
「了解しました」
「こうやって朝から一緒にいると、夫婦みたいだなぁ」
「夫婦ではありません」
「うん……他のEDもこんな感じなのかな」
「マスター、注意書を読まなかったのですか」
「えっ?」
「他のEDのことを考えてはいけません。
自身の選んだEDと接することだけ、考えて下さい」
「ああ、うん、ごめん……。
でも他の隊員はどう接してるのか、
ちょっと気になるって言うか」
「二度目はありません……あなたは死にます」
「わかった、わかったから! 魔璃亜!
包丁持って近付いてこないで!」
―――――――
「今日の訓練はゲットポイントシステムのチェーン演習です」
「ふむふむ……なぁんだ楽勝だな。
首領蜂隊はどんなハードな訓練してるのかと思ってたぜ」
「シューターの間口を広める為に敷居は下げておきませんと。
60秒間お試しシステムとか」
「なんだそりゃ」
「優秀なパイロットにはハンデをつけるよう指示されてます」
「ん? ハンデって?」
「エキスパート仕様の水着です」
「お、おう……きれいだよ魔璃亜……ふう……」
「マスターも水着になりましょう」
「俺もかよ!」
「そしてこれがエキスパート仕様の機体です」
「座席がひとつしかないんだが……魔璃亜はどこに乗るんだ?」
「言わせんな恥ずかしい」
「やめてどいて! スクリーンが見えない!」
「受け入れなさい」
「うおおおおおっぱいやわらけ気持ちいいぃぃ」
「集中しましょう、私に」
「もう訓練どころじゃねーよ!」
―――――――
(ハードな訓練だった……さすが首領蜂隊だ……
おっぱいだらけで弾幕が見えなかった……ふう……)
「お疲れ様です、マスター。お昼のお弁当です。
私の手作りです。残さず食べて下さい」
「ちょ、多すぎね? 五人分くらいあるだろこれ」
「フグ刺しもあります」
「…………」
「はい、口を開けてあ~んして下さい」
「えっ? 魔璃亜が食べさせるの?
恥ずかしいよ! みんな見てるよ!」
「受け入れなさい」
「あ、あのさぁ……」
「伝えたい言葉はありますか?」
「やっぱりこれおかしくね?
他の隊員は仲間同士で飯食ってるよ。
EDと一緒に食べてるの俺だけなんだけど。
なんかすげー浮いてるっつーか」
「……いや、ですか」
「い、いやじゃないけど……でも……」
「ごめんなさい」
「えっ?」
「ごめん……なさい……」
「な、泣かないで泣かないで! そうだ、
このお弁当多過ぎるからみんなで食べようよ!」
「あなたは……死にます……」
「あああごめん魔璃亜ごめん俺が悪かったァァァァ!」