「野々宮さん、か」
「あ、苺で...いいですよ」
そう言ってにっこり笑った彼女。
「私、1-Bなんですよ。えっと...」
苺ちゃんは目をきょろきょろさせながら困った様子でこちらを見た。
あ、そうか、俺の名前言ってないな。
「小泉空也、俺も1-B。よろしく!」
「あ...はい。よろしくお願いしますね!」
そんなこんなで入学式が終わり、先生の話を聞き、下校という事になった。
「何だかんだ言って、大変だったよなあ...」
クラスメイトのパンツを見て、幼馴染と初キスをして―
今後は何も起こらなければいいのだが。
ため息をつき、明日から始まる高校生活に思いを寄せながら靴箱のドアを開けた。
パサッ―
「...?」
はらり、と可愛らしい便せんが落ちてきた。
これはもしかして―と期待しながら中を読む。
[ 体育館裏で 待ってます
1-C 東堂 柚衣 ]
丸文字ではなく、整った綺麗な字で書いてあった。
記入してある名前に心当たりはない。
入学初日に告白?
残念ながら俺は一目惚れされるような容姿を持っていないし、
物陰からそっと想われるような性格も持ち合わせていない。
なら、呼び出しか?と考えてみるものの、整った文面からは想像できない。
「告白...?」
違うと想いつつも期待してしまう、それが男の性ってもんだ。
入学式で一目惚れして、そのまま告白だなんてなんて気の多い女なんだ。
まあ、俺は気の多い女でも構わない。
俺を愛してくれるなら!!
と、そんなバカなセリフを頭に浮かべながら体育館裏へ向かった。
ほぼ初めて来た高校。
体育館の場所を知らない俺は、
とりあえずそれっぽい建物を見つけ、そっと裏へ回ってみた。
「小泉くん、来るかなあ...」
か弱い少女の、可愛らしい声。
「来ても来なくても、どっちでも良いし」
少しぶっきらぼうな低めの声。
どうやら、告白するのは気の弱そうな少女みたいだ。
気の弱い娘、俺のタイプど真ん中だあ!!
と、一歩を踏み出した。