むかしむかし
あるところに、清さんという人がいました
清(きよ)さんは、おじいさんとおばあさんと3人で暮らしていました
清「ばあさん、じいさん。俺、旅に出るよ!」
おじいさん「そうかそうか・・・。だったらこれをもっていくといい」
清「これは?」
おじいさん「わしとばあさんがこさえたきびだんごじゃ」
清「ありがとう!いってくるよ!」
そういって清さんは家を後にし、果てない旅へと走り出したのであった
おばあさん「あの子がいないとさびしいねえ」
おじいさん「そうじゃの・・・」
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清さんが旅にでて最初に訪れた村、その出入り口にかかる橋の上に一匹の犬が座っていた。
犬は清さんを見かけるとささっと駆け寄り話しかける。
犬「悪いがここを通るには刀を置いて行ってもらおう」。
犬の言葉を無視して素通りしようとすると犬は清さんに襲い掛かってきた。
素早く背後から牙を立てて襲い掛かる、清さんはすぐさま刀を抜き犬にふり返った。
犬の鋼鉄のように硬い牙と刀の鋭い刃が交わる。犬はそのままはじき返されたが軽い身のこなしで華麗に着地した
犬「なかなかやるな」
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犬「だが遅い!」
犬は四方八方に飛び跳ねて清さんをかく乱する。
清「くっ・・・!」
犬の動きを追うが、高速で動く犬を取られられず、よろけてしまう
犬「もらった!」ガブッ
噛み千切られた肩を押さえながら倒れこむ清さん
犬「もう腕は使い物になるまい。止めだっ!」
犬は大きく口をあけ勢いよく清さんの顔に向かって突進した。
清「これでも・・・くらえええええええええ!!!」
犬「!?」
犬の口に手を突っ込んだ清さん。その鋼鉄の牙にズタズタに引き裂かれた腕の先には
犬「こ、これは・・・!?」
清「きびだんご・・・さ。味わって食べるんだな」
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犬の胃の中で、力の塊が溶けはじめる。
それはゆっくりと犬の体に吸収され、力の塊は力へと変化していく。
全身の細胞が震え、毛が逆立つ。刀狩り等をしていた事がまるで遠い過去のような感じがする。
ふと犬が意識を取り戻すと、目の前には先ほどの戦闘など感じさせない、無傷の清さんが立っていた
清さん「犬、俺の仲間になれ」
先ほどまでだったら何を馬鹿な、と思っていただろう。しかし今は違う。
まるで神々しさすら感じるそのいで立ちを見上げ、犬は服従を誓う。
しかし、清さんは首を横に振った。
清さん「犬よ、これは服従ではない、同名だ。俺たちは仲間なんだ」
すっと犬に手を差し伸べる、沈みゆく日を背景にしたその姿は犬にとってまるで神か、あるいはそれに通ずる何かのように思えた。
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犬を仲間に加えた清さんの旅はまだまだ続く
犬「清さん。清さんはどこに行くつもりなの」
清「別に、あての無い旅さ」
「においがする・・・。」
「というと?」
「人間だ。この村に人間と犬がやってくる。やつを捕まえてここにつれて来い!!!」
「へっ、へい!今すぐに!猿吉さまぁ!」
猿吉「人間・・・久しいなぁ・・・。」ジュルリ
猿助「まったく・・・。猿吉さまは人使いが荒いぜぇ。」
猿助「おっ。獲物がきなすった」
清「あの村で少し休むとしよう」
犬「やっとご飯にありつけるー」
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村に入ったばかりの二人の周りに複数の人間が現れた。
各々が覆面で顔を隠し、正体を晒さないようにしている。犬と清さんはすぐさま臨戦態勢に入る。
そこに一匹の猿が現れた。猿は覆面達を制止させると、二人に話しかけた。
猿「手荒な歓迎で申し訳ないね、早速だけど我々の殿が君たちを呼んでいるんだ。来てもらってもいいかな?」
肩を竦めあたかもそちらにも選択肢があるように話しかける。
こちらに選択肢がない事を理解している清さんは、刀を収める。
猿はそれをみて満足したように頷き、ついてくるように促した。
二人は覆面に囲まれながら村にある大きな城に入って行った。
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村一大きな屋敷に連れて行かれた2人
そこには一匹の巨大な猿が居座っていた
猿吉「わしの村によく来た。客人よ。村のものの無礼を許してくれ。」
猿吉「お詫びといっちゃあ何だが、今晩泊まっていくといい。食事も用意しよう」
清「これはこれは感謝いたします!ではお言葉に甘えさせていただきましょう」
犬「ちょっと・・・やばいよ清さん・・・」
清「あぁ・・・。わかってるよ」
猿助「ではこちらへ」
清「いやー!しかし悪いねぇ!アッハッハ」
犬「ハァ・・・」
猿吉「ぐっふっふ・・・」ニタァ
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おとなしく猿の持て成しを受けた二人は眠りにつく。
上質な布団に包まれてぐっすりと眠っている二人の下に猿吉が現れた。
猿吉はその巨大な体に劣らない大太刀を抜き放ち清に振りかざす。
しかし清さんはそれに気付いており、懐に隠し持っていた刀を使い猿吉の太刀を受け流す。
猿吉「ほぉう、あの太刀筋をいなすか。やるのぉお主」
太刀をいなされて尚猿吉は余裕そうな笑みを浮かべる。清さんは刀を構えなおし猿吉に切りかかる。
しかし猿吉はその刀を片手で掴み、清さんから奪いあげる。少し力を加えるだけで刀は猿吉の手の中でへし折れてばらばらになった。
清さんは武器を奪われ、少したじろぐ。そんな清さんを見て高笑いを浮かべながら猿吉は大太刀で斬りかかった。
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犬「させるか!」
犬が横から飛びついてきて猿吉の刀を噛み壊した
猿吉「わしの刀をやるたぁ中々じゃねえか」
猿吉「面白くなりそうじゃ!!!」
猿吉は体を大きく構え、体からは押しつぶされそうなほどの覇気を発している
そしてその巨大なコブシが、犬に向かって放たれる。
しかし犬はその速さでコブシを回避し、猿吉をかく乱させる
猿吉「なるほど愉快だのう。ほれ、お前もどうじゃ」
どこからとも無く猿助が現れ
猿助「じゃあ、あたしは人間の方とお相手させていただきやす」
清「へっ!エテ公にゃぁ負ける気しねえな!」
猿助「あたしぁ猿吉さま程じゃぁ無いが力には自身がありやしてね」
猿助は腕を大きく振りかぶり、清の腹を殴り飛ばした
清「ぐふぅっ・・・!!!」
猿助「どうですかい・・・。まともに食らっちゃあ立つことも出来ないでしょぅ」
清「かなり効いたぜ・・・。でもよ、俺には取って置きの策があるんでね」
そう言い清さんはきびだんごを取り出した
清「こいつを食えば傷なんて元通りさ。力も何倍にも跳ね上がる・・・。勝負はこれからだ。」
清さんは口にきびだんごを投げ入れるが、すぐに猿助が飛んできて、口から喉に手を突っ込んでみせた
猿助「そいつぁさせねえよ。勝負はもうついてやすから。」
清「ゴァ・・・」
喉から取り出した手にはしっかりときびだんごが握られていた
猿助「こいつはあたしがいただくとしますか。」パクリ
清「ニヤリ」