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女流武者 御剣桜華 第三幕 いざ備前へ

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 虎雅の支配下にある備前を救うため、さすらいの剣士である龍牙鋼獅朗の家臣となった桜華は、宿で暫しの休息をとっていた。
 「桜華よ、宿代は私が払っておく。家臣たちの疲れを癒すためにも、ここは休息が必要なのだ。お金のことか・・心配しなくてもいい。ここに来る途中でであった虎雅の武士を斬って金を奪ったので金には困らないだろう。さぁ、決行の夜に備えて、今は寝るんだ。」
鋼獅朗がそう言って桜華のほうを見ると、桜華は風呂に入る準備を始める。
 「鋼獅朗殿・・私は風呂に入る。すぐにここに戻ってくる。」
桜華は部屋から出ると、彼女は女場へと向かった。

 女湯へと向かった桜華は、すぐさま鎧と篭手を脱ぎ、湯船に浸かる。しばらくすると、他の女が女湯へと入ってきた。
 「鋼獅朗殿の新入りの家臣というのはお前のことか・・。私の名は如月冥那(きさらぎめな)と申す。おぬしの名はなんと言うのだ・・。」
冥那の問いかけに、桜華が答える。
 「私の名は御剣桜華と申します。私は飯処で偶然鋼獅朗殿と出会い、鋼獅朗殿の家臣となったばかりです。ひょっとしてあなたも鋼獅朗殿の家臣なのですか!?」
桜華がそう言うと、冥那は首を縦に振り、こう答えた。
 「そうだ。私は鋼獅朗殿に助けられ、家臣となったのだ。彼は私が虎雅の武士に襲われて死にかけたところを助けてくれたのだ。だからこそ鋼獅朗殿には本当に感謝しておるのだ。ところで、なんでお前のような女が虎雅を倒すために動いているのだ?」
冥那の言葉に、桜華が真剣な眼差しで冥那をまっすぐ見つめながらそう言った。
 「私は・・虎雅とその武士に村を襲われ、私の両親も殺された。私はあの時、虎雅に復讐してやると心に決め、女を捨て、男として武士になることを決めたのだ。虎雅を倒すまでは、私は絶対にあきらめない!!」
桜華の言葉に、冥那はそう呟いた。
 「お前にもそう言うことがあったのか・・。私、お前のことを聞いていると涙が出てしまったよ・・。まぁ、同じ家臣として、備前の国を取り戻すんだ。じゃあ、私は先に上がっているよ・・。決行の夜まで、あと一時間しかないんだから、早く支度すませなよ・・。」
冥那が桜華にそう言うと、そそくさと女湯を去っていった。
 「いけないっ!!冥那さんの言うとおり、早く風呂から上がって旅立ちの支度しなきゃ!!」
桜華は風呂から上がり、急いで鎧と篭手を身につけると、すぐさま鋼獅朗のいる部屋へと戻るのであった。

 桜華は急いで鋼獅朗の元に戻ると、風呂に入る前は着物姿だった鋼獅朗が、武士の鎧を身にまとっていた。
 「桜華よ、準備はできたか。さぁ、部屋から出るぞ。外には馬車を用意してある。桜華よ、準備を整えて宿の前で待っているぞ。では私は先に待っているよ・・。」
準備を済ませた鋼獅朗はそう言うと、すぐさま宿を出た。桜華は鋼獅朗の後を追う様に、準備を済ませ宿から出ると、大勢の家臣が宿の外にいた。
 「お前が新入りの家臣か・・。共に戦おうではないか。備前への道は虎雅の武士がたくさんいる。お前の力、見せてもらうぞ・・。」
家臣の一人がそう言うと、冥那が桜華にそう言う。
 「桜華、君は戦いというものを知らないのなら、私が実戦で教えよう。虎雅の武士に出会ったときは、私が戦ってやるから、よく見ておくのだぞ・・。」
冥那の言葉に、桜華が答える。
 「分かりました。私が敵の武士と戦えるまで、教えてください!!」
桜花の言葉に、冥那が剣を鞘から抜き、両手に刀を構える。
 「今ここで刀の使い方というものを見せてやろう。まずは刀を鞘から抜き、それを両手で持て。決して刀を落としたりしないようにな。刀を落としてしまうと大きな隙ができるからだ・・。家臣どもよ、すこし下がっていたまえ・・。近くで見ていると危ないのだからな・・。」
冥那は刀を握り締め、渾身の力で振り下ろす。すると離れたところにいる家臣たちは一斉に拍手を送る。
 「ほら、桜華、次は君の番だ。できなくてもいい。何度も練習することだ・・。次第に体が覚えていくだろう・・。」
桜華は鞘から剣を引き抜き、刀を両手に構える。その様子を見た冥那は離れた場所からから彼女を見ていた。
 「ほう・・。君の力・・・見せてもらおう・・。」
桜華は握り締めた刀を渾身の力で刀を振り下ろした。周りの家臣たちの反応は、まずまずであった。
 「初めてにしてはよくやった!!だがもうすこし練習が必要だな!」
「いいぜ!お前はもっと強くなれるぜ!がんばれよっ!」
家臣たちの声援と拍手が、町中にこだました。
 「みなさん・・そして冥那殿・・。稽古をつけていただきありがとうございます!」
桜華がそう言うと、馬車を引く鋼獅朗が家臣たちにそう言った。
 「家臣ども、よく聞け。今から備前に向けて出発する。今こそ我が祖国を取り戻すときだ!!皆の者、ぬかるでないぞ!!一瞬の気の緩みが、死を招くぞ!!いいな。」
鋼獅朗の言葉に、家臣たちは声を上げて叫ぶ。
 「おおーーっ!!備前を取りもどすぞ!!」
家臣たちが叫ぶ中、鋼獅朗は馬車を引き、すぐさま備前へと移動を開始するのであった。

 備前へと移動するその道中。馬車を引く鋼獅朗と家臣たちの乗る馬車の護衛を任された桜華と冥那の前に、5人の武士が現れた。
 「ええい、止まれ。我らは備前にいる殿様、剛雷雲之介(ごうらいくものすけ)よりつかえし武士だ。そこを通りたければ、通行料として、千両いただこう!!さぁ、出せ!」
雲之介の武士たちの言葉に、鋼獅朗が答える。
 「いくらなんでも千両という大金はもってはおらぬ。では持っていない場合はどうするのだ・・?」
鋼獅朗の言葉に、雲之介の部下が答えた。
 「払えない場合は・・・ここで死んでもらうだけだっ!!」
雲之介の武士たちが、一斉に襲い掛かってきた。
 「死んでもらうだけ・・か。三人なら、我が家臣たちを呼ぶまでもない。桜華よ、初めての戦いだが、油断は禁物だ。冥那から習ったことを、今ここで発揮するのだ!そして、私たちの動きをよく見て、戦いにおける動きかた、そして戦い方を覚えるのだ!!」
桜華は鞘から刀を引き抜き、両手で握り締めると、それを雲之介の武士たちに向けた。
 「武士として・・あなたたちを倒します!!」
桜華がそう言った瞬間、三人は剣を握り締め、戦いの態勢に入るのであった。

備前へと進む桜華と鋼獅朗たちの前に、備前を占領する雲之介の武士たちが襲い掛かってきた。
武士としての戦いが未熟な桜華は、敵を倒せるのだろうか!?
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