襲撃してきた雲之介の武士を討ち倒し、鋼獅朗と桜華とその家臣は雲之介が支配する国、備前へとやってきた。しかし町の門には、二人の雲之介の武士が門番を務めていた。
「鋼獅朗殿・・あの門を見つからずに通り抜けるにはどうすれば・・。」
桜華は思い悩んだ表情でそう言うと、鋼獅朗が答える。
「さて・・あの二人をどうやってあの門から遠ざけるか・・。強行突破をすると衛兵に気付かれてしまっても面倒だからな・・。」
鋼獅朗が悩んでいる中、一人の家臣が鋼獅朗にそう言う。
「俺が囮になるぜ。その間に鋼獅朗様と家臣たちはあの門を通るんだ。俺のことなら気にするな!!絶対戻ってくるから安心しろよな・・。」
家臣の一人の言葉に、鋼獅朗が心配そうに答える。
「わかった。お前の活躍に期待しよう。走去逃満(はしさりにげみつ)の名に恥じぬよう。囮としてあの二人の門番を門から遠ざけてくれ。できるだけ遠くに頼む・・。」
鋼獅朗の言葉で、逃満は二人の門番の目の前に来ると、挑発を始めた。
「そこの門番どもよ、雲之介は悪だ。お前らいい加減目を覚ませっ!このやろう!」
主である雲之介を愚弄する逃満の行動に怒りを感じたのか、門番は急いで逃げる逃満を追うべく門から離れる。その隙に鋼獅朗たちは門の奥へと馬車を進める。
「今だ!!逃満の作ってくれた隙を無駄にするな!急げ、急げぃっ!!」
二人の門番が門から離れた隙に、鋼獅朗と桜華たちは備前の城下町へと向かっていった・・。
備前の城下町へと潜入した彼らは、早速城へ向けて行動を開始する。城下町は人がいる気配がなく、静まり返っていた。
「おかしいな・・この町には人がひとりもいない。雲之介の武士の略奪に怯えながら暮らしているのだろう・・。だが心配は要らない。私はこれから奴を討つのだからな・・。」
鋼獅朗は馬車を引きながら、雲之介の待つ城へと向かう。人も犬もいない静まり返った城下町に、馬の足音がこだまする。
「桜華、これから敵の城へと潜入する。くれぐれも気を抜くではないぞ。気を抜けば死が待っているのだからな・・。私の教えたとおりの剣術で戦え・・。」
冥那が桜華にそう言うと、彼らはついに雲之介の待つ備前の城の門の前まで到着した。
備前の城の門の前には、重装備の武士たちが見張りをしていた。正面から進んで見つかれば、命の保障はない。鋼獅朗が桜華とその家臣たちは、武士の見つからない草むらに隠れ、城に潜入する計画を立てていた。
「あの城へと潜入するには・・一体どうすればよいのだ。このまま引き下がるなんて冗談じゃないぜ・・。」
家臣の一人がそう言うと、鋼獅朗が否定的な表情で答える。
「引き下がるなんてとんでもない・・。私は必ずこの備前の国を取り戻すと誓ったんだ。この作戦は絶対に失敗は許されない。まずは潜入するための方法を考えよう。」
鋼獅朗が思い悩んだ表情で、空を見つめる。すると何かを思いついたように、家臣たちにそう言う。
「石を投げて注意を引かせるというのはどうだ・・。今は夜だからあの武士どもは物音の合ったほうに移動する。その隙を狙って扉を開け、一気に城へと襲撃をかける!!私が石を投げて、奴の注意を逸らす。その隙にみんなで扉で開け、城へと侵入するぞ!!」
鋼獅朗の作戦に納得したのか、桜華が答える。
「任せてください。必ずこの作戦を成功させて見せます!!」
鋼獅朗はしばらく家臣たちと作戦を練った後、すぐさま計画を実行に移した。
夜は更け、見張りの武士が門から離れ、辺りを見回す。その隙を狙い、鋼獅朗の計画は実行された。
「私が石を投げる。その隙に全員は門の扉を開け、城の中に入れ・・。」
鋼獅朗がそう言った後、門の向こう側に石を投げると、投げた石は見張りの武士の目の前に落ちた。その異変に気付いた見張りの武士は、すぐさま町のほうへと向かう。
「何者だっ!!私に向かって石を投げたのはっ!!石を投げた者をすぐさま切り捨てろっ!!」
見張りの武士たちは怒りを露にしながら、町のほうへと向かっていった。
「今だ!!扉を開けっ!!」
見張りの武士がいなくなったのを見計らって、鋼獅朗の家臣たちは力を合わせ、扉を押し続ける。
「だめだ・・。この扉堅くて動かないぜ・・。」
家臣の一人が弱音を吐いたとき、桜華が元気付ける。
「うろたえるな・・。早くこの扉を開けないと、見張りが戻ってくるぞ!!そこであきらめてしまえば、鋼獅朗様の無念を晴らせぬぞ!それでもよいのかっ!」
桜華の言葉で、家臣たちは再び力をあわせて扉を押し始める。桜華の勇ましいその行動に、冥那は彼女に尊敬の言葉を送る。
「桜華・・やるじゃないか。それでこそ鋼獅朗様の家臣だ。私と共に、雲之介を討ち滅ぼそうぞ!しかしそんなことを言っている暇ではない。桜華よ、力の限り扉を押すのだ・・。」
家臣たちはあるだけの力を振り絞り、扉を押し続ける。そしてついに大きな扉が音を立てて開いた。
「扉が・・開いたぞ!!さぁ、中に入るぞ!!」
家臣の一人がそう言うと、全員は城の中へと潜入した。
「何とか成功したようだな・・・。私も城の中に入ろう。桜華よ・・我が家臣を元気付けるとは、成長したもんだな・・。雲之介よ、今こそお前を倒すときだ・・。」
鋼獅朗がそう言った後、城の中へと入っていった。
城の中に潜入した鋼獅朗とその家臣たちは、扉を閉め、しばしの休息をとっていた。
「お前たち・・よくやったぞ。これで城の中に入ることができた。ここに来た目的はただひとつ、雲之介を打ち倒し、私の祖国を取り戻すのだ・・。」
鋼獅朗がそう言うと、家臣たちは天に腕をあげ、怒気を高めるのであった。
一方騒ぎが収まった後、門の前に見張りの武士が戻ってきた。しかし何事もなかったかのように、再び見張りに着くのであった・・。
ついに備前の城の中へと潜入した桜華とその家臣たち。
雲之介を討つべく、鋼獅朗と家臣の戦いが今始まろうとしている・・。