禁煙カフェ21/チンコレディブル翁
本當に斷わらなくても良かつたのだらうか。
面接からの歸り道、少年は既に後悔し始めてゐた。
さういへば少し前にそのやうな事件があつた事を新聞で讀んだ氣がした。
しかしその數日後、何處かの川にアザラシの赤ちやんが出現したとかで、テレビのニュースはそれ一色になり、屍體が消えた壓死事件と謎の大量失踪事件については人々の頭の中から消えてしまつたのだつた。
それにしてもバイトが次々と失踪してもまだ商賣を續けるとは、あの店長は惡鬼羅刹か何かであらうか。
さうだ。
そこまで考へて少年は足を止めた。
單純な話だ。
バイトがすぐに行方不明になるといふのが事實だとすれば、最も怪しいのはあの店長ではないか。
今思へばそのやうな事態になつてゐるといふのに隨分と呑氣だつた。少し異常ではないかと思はれるほどに。
普通であれば、とつくに店を疊んでゐてもおかしくない。もしくは、店を續けたいのであればバイトを雇はず自分一人で賄へばいい。
危險と知りつつまだバイトを雇はうとするのは正常な人間とは言ひ難い。