3.私の主は友達が少ない
「主よ、今日は休日だな」
「ん、そうだが」
「なら私と、デートとやらをしてみないか」
「!?」
†
表参道。
人がゴミのようだとはよく言ったものでまっすぐ歩けない程の人で溢れている。
青山方面、渋谷方面、原宿方面。
町並みは嫌いではないが少々人と車が多すぎる。
そして俺は何故この子と街を歩いているのだろう。
「マカロンが食べたいでござる」
「マカロン?」
「フランス菓子の」
「あ、ああ。マカロンね。マコロン(日本の駄菓子)かと思った」
「おばあちゃんがよく買ってました」
変な菓子だよなあれ。
「お、駅中にそれっぽい店があるぞ。あそこでいいか」
「ピエール・エルメがいいでござる」
ピエール・エルメ。
表参道駅を抜けて渋谷方面へまっすぐ歩くとある洋菓子店。
濃厚なマカロンは絶品だが一個200円以上するやや高めの店。
「高え」
「そこをなんとか…この通り、おっぱい揉んでいいから」
†
「ショコラとピスターシュとシトロンと……あと、えーっと」
「こ、こらそんなに頼むな」
「……揉んだくせに」
「お前の胸にゃせいぜいマカロン2個の価値しかない」
「ぐぬぬ…」
「その二個でお会計お願いします」
「し、Cカップだぞ!A、B、Cならせめて3個で……!」
「嘘つけBカップが」
「!?な、なぜそれを……童貞のくせに!」
「余計なお世話だ」
「・・・・・・まだ…」
「あん?」
「な……生乳……も、揉んでいいから…」
「……4個までだぞ」
†
「ほくほく」
「そんなに美味いのか」
「美味いぞ、どうせなら主の分の頼めば良かったではないか」
「高校生にそんな金はねーよ」
「そうか、それは悪いことした」
「……まった…く?」
「はい、あーん」
「むぐ…」
「半分おすそ分けじゃ。食べかけで悪いがの」
「(関節、じゃない、間接キス…)」
「顔が赤いぞ主、口に合わなかったか」
「なんでもねー」
「ふふ、そうか」
「(……甘い)」
†
その後引き返して原宿に向かう。
ミルクだのなんとかテンプルだの、よく分からない店を回った。
普段はなんというか、民族風のそっけない格好をしているかと思っていたが。
女の子らしい店で目を輝かせる衛の姿が意外だった。
「そういう服も着てみたいのか?さすがにその金はないぞ」
「なに構わん。私は見てるだけで楽しいのです」
「ウィンドウショッピングというやつか」
「何せ私の時代にはこういう可愛い服は残っていませんから」
「え?」
「ふふ、あなたが全部禁止されたのですよ。未来の主が」
「なんでまたそんな」
「リア充むかつく、と言って渋谷区一帯を女人禁制にされてましたから。洋菓子もスイーツ()とか仰って全面禁止となっています」
ずいぶん卑屈だな未来の俺よ。
「まあ…」
「?」
「いや…」
顔だけは可愛いんだがな。
こういう服を着た衛は、どんな風になるのかな。なんて。
思ったり思わなかったり。
「可愛い彼女さんですねえ」
女性店員さん。
「い、いやあ、彼女じゃないです」
「まあ失礼、うふふ」
「ははは(…かわいい)」
「がしっ」
「ま、まも……」
「主人です」
「は、はあ?」
「ち、ちが・・・」
「・・・」
「あ、こいつバカなんで気にしないでください」
「ね?あるじさま(はあと)」
「ああ、主従関係でしたか」
あんたもバカか。