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フライ・アウェイ(12.11.2012)

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 何から話せばいいのだろう。
 あれから一ヶ月が経った。まだ一ヶ月しか経っていない。
 コロニーの移動は阻止され、連邦艦隊が撤退していって、
 このジャンク街は、まるでなにもなかったかのように、何も変わっていない。
 うずたかく積まれた電子部品の山と、立ち並ぶ工房。
 その一角にある私の電子部品鑑定所。
「じゃーん」
 私が仕事用の顕微鏡から顔を上げて、眼鏡をかけ直すと、制服を着たグレースが帰ってきていた。
 「貰ってきたよ!どう?似合ってる?」
金髪の少女が見せびらかすのは、黒と緋色をメインにした制服で、一見オーソドックスだが、隅々にまで技巧が凝らされている。
 洗うのめんどくさそう・・・。と口にはしない。
 「可愛いじゃないか。汚すなよ?」
 よごさないよーんと言うグレースは、制服の着心地を楽しむようにぴょんぴょん飛び跳ねてみせる。うわぁ絶対こいつ3日以内に汚しそう。
 「それで、学校には馴染めそう?今までの研究所暮らしとはちょっと違う感じでしょ?」
 「もう人が多くてびっくり!でもシャーロットっていう子がいろいろ教えてくれたの。三つ編みの子でね」
 そうして午後の時間は過ぎていく。 

 ジョン博士は2日だけこのあたりのホテルで暮らしていた。3日目に尋ねるとすでに引き払ったあとだった。それきり姿を消してしまった。
 私とグレースは郊外に犠牲になった5人のささやかな墓を作った。
 悲劇を乗り越えて生きること。それが私とグレースにそれぞれ科せられた十字架のように思う。

 え?プラチナバードはどうしたかって?
・・・それは私とグレースだけの、秘密。
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