おれは考えたことを実行出来てしまう人間。ビルから飛び降りた時は大変だったらしい。
そんな感じで、今日は近所の花火大会の打ち上げ場に侵入した。
「花火と一緒に打ちあがったら気持ちいいんだろうなぁ」と考えてしまったからだ。
走馬灯、という奴だろうか?
空中に火達磨になりながら舞い上がったおれの中で展開される映像――
物心ついた頃、初雪を見て「この雪をぜんぶ食べたい」と考えちゃったなあ…ホントに
食っちゃった。
秋の落ち葉を見て「これを繋げ合わせたら立派な服が出来るんじゃないか?」なんて……
翌日大風邪ひいたな。
――そうだ。
おれは、考えたことを実行する男。昔も、今も、それだけは変わらないんだ。
ならば、今この瞬間、死の間際だけど考えよう。え~と…
「落ちたくない」
おれはフルバーストで飛び上がり、大気圏を突破した。
宇宙空間はなかなか厳しく、おれは窒息死寸前だった。
「死にたくない」
――――“それは実行できない”――――
おれの頭の、普段使われていない部分がそう言っていた。
苦しい。嫌だ、死にたくない。だって、おれが死んだら……
――幼い頃、おれには父さんがいた。
父さんは男らしい人で、いつも優しい笑顔で、おれが何をしても笑って見ていてくれていた。
幼稚園に入る前の日。父さんは突然おれと母さんの前から姿を消した。
“お父さんは、元いたところに帰ってしまったの”――そう母さんは、無理やり笑顔で
言っていた。その夜、母さんが声を潜めて泣いていたことを、おれは知っている。
おれは人間とは少し違うのかもしれない。
そんなおれでも、いなくなったら、母さんは――
「よぉ、息子」
声がした。息が出来る。目を開けた。そこには父さんがいた。
「…おれ、死んだのか」
「何言ってる。ピンピンしてらぁ」
おれは、手足をじたばたさせた。頬を抓った。痛い。どうやら現実だ。
「お前が、“生きたい”ってずっと考えながらプカプカ浮かんでいたもんでな。そうじゃ
なかったら、気付いてなかったぜ」
「…母さんは……父さん」
おれは、父さんの目を見据えて、
「お願いだ。おれを、地球に帰してくれ」
「いいぜ」
即答だったが、おれは驚かなかった。父さんは男だから、迷わない。昔と変わってないや。
おれには、それが、とても嬉しかった。
「ただし……俺も一緒だ!」
「…ええっ!?」
「そろそろ、顔見せに戻ろうと思ってたんだよ……お前と、真由子になあ」
父さんの星は、地球と時間の流れが違っていた。地球に戻った時、夏はとっくに終わっていて、
雪が降っていた。12月、25日。クリスマスだった。
久しぶりに見た母さんは、すっかり痩せこけていたが、おれと父さんの姿を見た途端に元気に
なった。その日、十数年ぶりに、家族三人で過ごした。
おれ達の生活は続いた。おれは大学生になり、父さんは研究者に戻り、母さんはパートに向かう。
人間だろうが、人間じゃなかろうが、とにかくどこまでも、生活は続いていく。