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二番

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二番、私は極めて珍しい猫

「いってきます」
「気を付けて行ってくるのだぞ」
 主を見送り、私に自由が訪れる。しかし、私はその自由のことがあまり好きではなかった。
「いってらっしゃい」
 ふふふ、遅いぞ秋子。私のほうが先に言っている。
 あーお腹空いた。骨だけじゃ足りないよ。
「カナちゃんおいで」
 居間の秋子が私を呼んだ。別に暇だから何となく居間に行くけど、お前に呼ばれたから行く訳じゃないぞ。
「来てやったぞ。何の用だ」
「はい、朝ご飯」
「え・・・」
 そこにあったのは、私の皿に山盛りにされたキャットフードだった。これは何事だ。
「魚の骨なんかじゃあ、お腹一杯にならないでしょう?召し上がれ」
 毒でも入っているのであろうか。このような秋子は不気味である。
「わーい」
 私の頭と体は、まるで切り離された別の生物のように動いた。食欲には誰だって勝てないと思うのだ。
「ふいー・・・」
 無我夢中でキャットフードを平らげ、私は前足を舐めはじめた。ふと目線を上げると、秋子が私の皿を下げていた。一体、秋子は何を考えて道朗の前で私に骨だけを与えたのであろうか。謎である。
 解らないことを考え続けていても意味はないので、私は腹ごなしに運動でもしようかと思った。だがしかし、とりあえず縁側へ移動すると、春の力強い陽気にあてられて急に眠くなってしまった。
「食べてすぐ眠ると牛になるぜ」
 縁側で丸まって眠りにつこうとしていたその時、聞き覚えのある猫語が耳に入ってきた。
「れでいに対してそういう言い方はないでしょう」
「どこにレディがいるっての?おめえ何ぞガキよガキ」
 へいの外から飛び込んで来たのは、野良猫の大河さんだった。
「なっ!誰がガキだって?」
「こりゃ失言。お子様、ってんなら良いかい?」
「よくないです!」
 大河さんの体は大きくて、全身が虎の模様のような毛皮に覆われている。私と同じ種族とは思えないほど体が大きく、年頃は私とそう変わらないはずなのであるが、私の体が小さいからと、私はいつも大河さんに子供扱いされている。
「ま、朝からごろごろしてねえで、外で散歩でもしようぜ」
「道朗は学校に行ってますし、遠慮します」
 大河さんは、私の返事に不満があったらしく、私の隣まで飛んできて座った。
「俺は色々な飼い猫を見てきたが、主人と一緒じゃなきゃ家の外に出ない猫なんて、おめえぐらいだぜ?」
「他猫(ねこ)は他猫(ねこ)、私は私です」
「・・・そうか・・・まあ、いいけどな」
 軽く呟いて、大河さんは私の隣で丸まった。大河さんが寝息をたてはじめるのはすぐだった。なんだかんだいっても、大河さんだって春の陽気には勝てないのだ。
 私は、少しだけ恥ずかしかったのだけれど、大河さんに少しだけ近づいてから、同じように丸まって眠った。

二番、終わり。

 
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