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「えいっ。やぁっ。紅蓮の炎に灼かれて消えろッ!!」

「おや?武雄くん何をしているんだい?」

「あっお兄さん!実は新しいゲームを買ったから早速プレイしているんだ。」

「むむっ、3DSか。小学生のくせに生意気だね。お兄さんのゲームボーイカラーと交換しようか。」

「え?ちょっ、やめてお兄さん引っ張らないでちょっ、やめっちょっやめてって・・・エイヤッ!」

「痛っ!・・・・・武雄くんないわ。暴力にすぐ訴えてしまう迷える現代の若者だわ。」

「お兄さんなんでゲームボーイカラー持ってるの?いつも持ち歩いてるの?」

「あっ、武雄くんそこから突っ込みだしちゃうんだ。」

「だってお兄さんこの前も僕のPSvita奪おうとしたじゃない。2回目だよ。仏の顔カウントがあと1歩でリーチだよ。
 今回そんな物をわざわざ持ってきたとしたら計画的な犯行ってことだし・・・。僕に何か恨みでもあるの?」

「そんなまさか。ただ可能性に満ち溢れた若者が憎いから嫌がらせをしてるだけだよ。」

「思ってたより7倍くらい悪い理由だ。」

「後で200円あげるから気にしないで。それよりちょっとゲームを見せてくれないかな。」

「微妙な金額を提示してくるねお兄さん。ハイどうぞ。」



「これは装備画面かな?」

「そうだよ。一時停止するとその画面になるんだ。」

「この武器は・・・『ハルバード』だね。」

「そうだよ。かっこいいし攻撃力も高いからお気に入りなんだ。」

「・・・でもこのハルバードはずいぶん斧の部分が大きいね。」

「だってハルバードって斧じゃないの?」

「うーん、たまに絵を描く人がハルバードを斧のように描いていたりするけど、
 実際に歴史上で使われた物と比べると実はそれはあまり正確ではないんだ。」

「そうなの?」

「そうとも。それじゃあハルバードという武器について詳しく話してあげよう。」

「うーん・・・。やったぁ。」

「乗り気じゃないね。」

「ゲームしたいし。」

「まずハルバードのような武器は分類上は長柄武器、英語で言うとポールウェポンに分類されるんだ。
 柄が長いから長柄武器、ポールに武器がくっ付いてるからポールウェポン、わかりやすいね。」

「(スルーか・・・)」

「槍なんかもこれに分類されるんだけど、ハルバードはその中でも長柄武器の完成形とまで言われていてね。
 日本では使われなかったけど、欧州では鉄砲が登場するまでずっと活躍していたんだよ。」

「ふーん。」

「ハイじゃあここで武雄くんにクエスチョーン!
 ハルバードがそこまで高い評価を受けた理由とはなんでしょうか!?」

「えっ?うーん・・・やっぱり柄が長いから遠心力を使って斧で強く斬りつけられるからとかじゃないかな?」

「(ぐっ)」

「あっ痛い!ペットボトルのフタを額に押し付けないで!跡が残る!」

「全然違うよ。お兄さんガッカリ。斬りつけるだけなら西洋にもグレイブっていう日本の薙刀みたいな斬るタイプの
 ポールウェポンがあるんだよ。」

「・・・ちょっと濡れてる!コーヒー牛乳だ!額からコーヒー牛乳のにおいがする!」

「どうやらまだ武雄くんは斧の幻想に惑わされているようだね。じゃあここで実際に歴史上で使われたとされる
 ハルバードの画像をスマホからwikipediaで見てみ・・・お兄さんの上着で拭かないでね、見てみようか。」

「自業自得のお兄さん見せてじゃあ。」

「ハイどうぞ。(ハルバード wiki で検索)」

「どれどれ。・・・うわっ斧の部分小っちゃいなぁ~。なんだか斧っていうより槍の下の所に
 なんとなく斧として使える場所をくっ付けただけって感じだね。」

「そうだね。実はそれを見ればわかるようにハルバードっていうのは槍と斧、そしてもう1つ、鉤爪の3つを
 合わせた武器というのが正しい見方なんだ。」

「えっ、この斧の反対側についたなんか尖がった部分て鉤爪なの?
 ゲームじゃ全く使わないから飾りか何かだと思ってたよ。」

「ハルバードについた鉤爪は馬に乗った騎士を引きずり降ろすのなんかに使われたらしいからね。
 馬から敵さんをズルゥゥゥッて引き落とすなんて地味な使い方はゲームじゃしないだろうさ。」

「じゃあもうこの鉤爪っていらないんじゃないの?」

「いやいや。絵面は地味でも騎馬兵を引きずり落とすっていうのはなかなか重要でね。
 ホラ、馬に乗ってると人体最大の急所である頭の位置が高くてなかなか致命傷を与えられないだろ?」

「たしかし。」

「ハルバードと同じくらいの時代にはバトルフックっていう棒に鉤爪がついただけの引っ掛ける、叩くの2つしか
 できない武器だってあった程なんだ。」

「へぇ、なんかショボイね。お兄さんみたい。」

「(ぐっ)」

「痛っ!ペットボトルのフタやめ・・・あっ、また濡れてる!」

「今説明した通り、ハルバードの基本的な使い方には鉤爪による引っ掛け、武雄くんが最初に言った斧による斬撃、
 そして槍による刺突の3つの使い方がある訳だね。そしてもちろん応用を利かせればもっと色々な使い方もできる。
 ハルバードが長柄武器の完成形と言われているのはこれらの機能を状況に合わせて使い分けることができる多機能性が理由なんだ。」

「・・・っ!!
 今度は額からオレンジジュースのにおいがする・・・!!」

「あと武雄くんハルバードの斧が小さいって言ったけど、ハルバードの柄って通常2~3mくらいあるから
 その先っぽに槍斧爪セットがついてたらそのサイズでも十分重いんだよ。」

「お兄さんなんで内側がジュースでべちゃべちゃのフタを2つも持ってるの・・・?」

「武雄くんがイメージしてる斧は多分バトルアックスかクレセントアックスあたりなんだろうけど、その2つは
 刃も含めて全長1.5m位が最大なんだね。仮にバトルアックスの刃をハルバードの3mの柄に付けたら持ち上げるにも一苦労になっちゃうよ。」

「(スルーか・・・)」




「そういう訳でまとめると、ゲームや漫画ではルバードっていう武器をかっこよく見せるために刃の部分をめっちゃ大きくして
 威力重視!って感じで描いてる人がたまにいるけど、実際は威力よりも機能性を重視したスマートな武器なんだって事。」

「ふぅん。じゃあ僕のこのゲームのハルバードは正しくないんだね。」

「・・・うーん、まぁ実際のハルバードに忠実ではないんだけどさ。お兄さんちょっとそれが気になって色々話しちゃったけど
 よく考えたらゲームなんて元々フィクションなんだから気にしないほうがよかったのかもしれない。なんかイチャモンつけちゃったみたいで悪かったね。」

「うん酷いイチャモンだったけど話はそれなりに面白かったよ。評価してあげる。」

「うん、ひどく上から目線。」

「僕もっと武器について知りたくなってきたよ。」

「おっ本当に?じゃあ機会があったらまたお兄さんが話してあげよう。」

「それなんだけどさ。
 お兄さんさっき一回wikipediaでハルバードの画像見せてくれたじゃない。」

「うん。」

「そのときにwikipediaのハルバードの項目を僕が読んじゃえばお兄さんの話聞かなくても大体わかったんじゃない?」

「・・・・・。」

「スマホを貸してくれればお兄さんいらないんじゃない?」

「・・・・・。」

「ねぇお兄さんスマホだけ貸してくれれば」

「(ぐっ)」

「あ痛っ!」

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