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夏は暑い/坂

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 夏は暑い。
 僕は真夏の河原町をただひたすらに歩いていた。
 目に飛び込んでくるのはすれ違う人々、夏の香りに包まれた女の子達。
 ふと、胸元がはだけた服を着た女性が歩いていた。随分大きな胸だ。推定カップ、約Gか。彼女の谷間は刺す様な真夏の熱に照らされ、てらてらと汗ばんでいた。谷間の渦に、汗が吸い込まれるように落ちる、落ちる。
 僕は生唾を飲んだ。

 その圧縮された空間に、燃え上がった僕の息子が巻き込まれたら一体どうなるのだろう。
 僕は考える。命を燃やし、吐く息は熱に包まれ、額からは僕に沁みこんでいた水がスポンジを絞った時のようにだらだらと垂れ出ているけれども。
 まず乗せる。そう、僕の衝き上がったそれを彼女の開いた胸元にそっと乗せる。そして彼女がゆっくりと、でも着実に、締め上げるように、まるで殺人鬼が自分を本当に愛してくれた人を殺すように、今まで楽しく人生を送っていた彼女が自分と知り合ってしまった事で人生を転落してしまった事を悟った時のように、レイプされ絶望にかられ穢れた肉体を浄化する事も出来ず生きることそれ自体が罰であるその罰から開放するために首を締め上げて殺すように、僕のそれをゆっくりと約Gカップのバストが締める。ぎゅうっと、密着する。僕の肌に張り付くみたいに吸着する。離そうとしない。
 僕はあまりの温もりにたまりかねて腰を動かす。すると僕の腰と一緒に動いたそれをけっして離そうとしない彼女の谷間はぎゅうぎゅうと僕を、正確には僕のそれを締め付ける。
 僕は天を仰ぐ。生まれてきた事を、この世界に深い感謝を示すために。そして叫ぶ。心の奥底からわきあがる感情を、生まれたままの姿で、ただGカップのおっぱいに挟まれた自分自身に歓喜して。
「Piーーーーーーーーーーー!」
 彼女の唾液が! 彼女の唾液がその時僕の先っちょに降り注いでくる! ぬらりと照らしたそれは彼女の汗と混ざり合って更なる渦を巻く! なんと言う激情! なんと言う激動! 我が名は古より集いし衣をまといし田畑を耕し先に結婚するの私だしー。

 ハッとした。真夏の太陽は相変わらずそこにある。彼女の谷間はそこにはない。とうの昔に通りすぎてしまっていた。アーケードになっている新京極通りに一陣の風が吹く。首元を抜けてそれはすっと肌を乾かしていく。
 僕はふぅと息を吐いた。道の向こうからは、夏の匂いをまとった獣達が幾人も歩いてくる。短いパンツをはいて、下着の透けるシャツを着て。彼女たちはもう、この真夏に生まれてしまった獣なのだ。最高だ。
 僕はそっと微笑むと、雑踏の中に姿を消した。
──了
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