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人は顔より中身です

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「俺かわいい子と付き合うってのができないんだよね、宗教上の理由で」ってセリフはブスとしか付き合えない藤井の強がりだとばかり思ってたけど、藤井が歴代でもトップのブスと結婚したのを見て考え直す。

あいつは本当にブスとしか付き合うことができなかったんだろうか?

藤井はことさらにブスが好きだということでもないらしく、小学校から高校までクラスのマドンナ的存在には他の男と同じように憧れていた。けれど16歳のあいつにはじめてできた彼女はデフォルトでストッキングを被っているようなブス・オブ・ブス。彼女ができたというのに普段より落ち込んで見える藤井は仲間内で「そりゃあんな女じゃ気分も上がらないだろ」なんて笑われていたけど、そもそもなんで付き合ったんだろう。




夜道でモンスターに襲われている所を藤井の嫁に助けられる。布団圧縮機にかけられたようなブサイク顔だ。
「え? え? なにこれ、ありがとう」
「……」
藤井の嫁は何も言わない。
「危なかったな~加藤」
と言って後ろから出てきた藤井は魔導士みたいな変な服を着ている。
「これ何? お前なにか知ってんの?」
「俺ら今宗教戦争やってるんだけど、直接戦うと怪我するから女操って戦わせてるんだよ」
「はあ?」
何を言ってるのか全然わからない。「なんでお前の嫁さんブサイクなんだよ」って俺のセリフも意味がわからない。だいたいさっき助けて貰っといて失礼すぎる。
「おまえなあ、失礼だぞ。はは、なんかわからないけどブスであればブスなほど宗教戦の時強いんだよな。夜な夜な戦わせるんなら結婚しといた方が便利だし、美女戦わせるのはちょっとアレだけどブスなら心も痛まないしな」
酷いことを言ってるけどそれどころじゃなくて、聞けば聞くほど疑問符が増えていく。

よく見ると俺を襲ったモンスターは人間の女で、ただ顔がモンスター級に散らかっていた。
「これ、死んでるの?」
「いや、死んでないよ。気絶してるだけ。リンクしてたパートナーの方もどっかでぶっ倒れてるだろうけど、その内どっちかが起きて勝手に帰るだろ」
「ふうん……?」
完全についていけない。俺は藤井と藤井の嫁に礼を言って、今度飯でも奢ると約束して別れた帰りに藤井の番号をアドレス帳から削除する。変な宗教に嵌った奴には近づかない方がいいのだ。
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