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一話 これなんてエロゲ

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そう、それは偶然だった。
ただの偶然ならば、もう二度と会うことはなかっただろう。
だが、その少年には必然と思わせるかのように、
縁のある出来事が続くのであった。

夕日に染まりかけた町を走る少年。
目的の週間少年VIPはマイナーな雑誌だったが、
クオリティは高く古本屋で見つけた日から毎週購読している。
「やばいおwww売り切れてるっぽいおwww」
彼は独り言のようにつぶやき、
どこかにないかせわしなくコーナーを探し回る。
「仕方ないお・・・ジャンプ買って帰るお・・・
でもきっとハンターハンターは休載だお・・・冨樫真面目にやれお・・・」
そう思ってジャンプに手をかけたとき、さっともう一つの手がジャンプを取る。
どうやらジャンプもあれが最後の一冊で、見回してもなかった。
「えーっと、そのジャンプ買いたいんですけど」
どうやら人を相手にすると敬語になるようだ。
腐ったVIPPERです^^

「ああ、いいわよ」
見上げたその人は普通にクオリティ高い女性だった。
絶対ふざけんなこの無職童貞糞野郎とか言われると思っていた彼にとって、
予想外な返事と風貌だった。
「あ、もしかして君はVIP高の生徒?」
学生服のまま買いに出ていた彼の服装を見て、その女性は問いかけた。
「はい、一年ですが」
「明日転入するから、よろしくね」
「は、はぁ」
適当に流していたが、心はもちろん「これなんてエロゲ?」である。

そんな彼の名前は塚西 納成(つかにしななし)。
もちろん童貞、そしてVIPPERである。

家に帰ってジャンプを読みふけり、おもむろにパソコンに電源を入れる。
「今日の話題はもちろんこれだおwww」

俺の人生がエロゲになりそうな予感
1:愛のVIP戦士
さっき週間少年VIP買いにいったときに
可愛い子とジャンプの取り合いになって
明日俺の学校に転入してくるらしいwww

スレを建てたあとすぐ更新すると、ついたレスは3つ。

「日本語でおk」
「安価!安価!」
「2ゲット」

2ゲットが2つずれていて思わずプギャーm9(^д^)と書き込みたくなったが、
とりあえず状況を書き込んだ。

「ふーん。良かったね童貞^^」
「ほーら、えっちなものだよぉ~☆」

結局、2桁すら行かずスレは落ちてしまった。
明日がwktk過ぎてしょうがなく、
夕飯も食べずに彼は寝てしまった。

案の定、彼はいつもより10分も早く登校した。
クラスの人たちは珍しげな顔で見つめていたが、
すぐに談笑へと変わった。

「よう能無し」
「のうなしじゃなくてななしです」
話しかけてきたのは読山 読男(どくやまどくお)
あまりにかわいそうな名前である。
親を恨みたくなる名前だが、彼の家庭は母子家庭で、
読男は凄い親孝行者らしい。
「なんでもいいけど、今日転入生が来るらしいぞ」
初耳のような振りをして納成は返事を返す。
「mjsk。とりあえず産業で」
「めがっさ
かわいい
にょろーん」
「日本語でおk」
そんなやりとりを交わしていると、ホームルームに入った。
「早く席つけー ホームルーム始めるぞー」
見るからに体育会系の先生の横に、昨日会った子がいた。
「今日からうちのクラスに入った、
結城 師奈(ゆうき しな)さんです」
彼女は適当に自己紹介を済まし、軽くお辞儀をした。
「えーっと、席は・・・塚西、お前の右隣でいいな
仲良くしてやれよ」
もはや気分は夢がひろがりんぐである。
「よろしくね」
澄ました笑顔でそう言って、席に着いた。
「よかったなのうなし」
冷やかすように後ろから声が聞こえる。
返すことも忘れて、彼女をちらちら見ていた。
もちろん、キモがられていたであろう。

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