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第五章「国譲り編」一括まとめ版

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 オオクニヌシが国を造り、繁栄させ、そうして月日は随分と流れました。

 舞台は、オオクニヌシが統治する出雲から、天上世界へと変わります。
 イザナギが天上世界を統治していた時から長い月日が経ち、今、天上世界は、アマテラスが統治していました。
 アマテラスは、イザナギと仲違いをして出雲へ落とされたスサノオの身を、今でも案じていました。あの暴れん坊の弟の事です、国造りなどという大業を成し遂げられるか、心配で心配で仕方がなかったのでした。
 そこで、アマテラスは、自分の息子に、出雲の世界をチラリと覗いてみるように頼みます。この息子、正勝吾勝勝速日天忍穂耳命(まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと 以下:アメノオシホミミ)というクッソ長い名前の男神です。
 そう。このアメノオシホミミこそは、かつてアマテラスとスサノオが誓約を交わした際、アマテラスが口からブフー! とやって産まれた子供です。
「アメノオシホミミや、ちょっくら出雲の見える場所から、出雲の様子を覗ってくれない?」
 アマテラスお母さんにそう頼まれ、アメノオシホミミは、天上世界から出雲の世界が見える場所まで赴きます。そして、チラリと出雲の世界を見下ろしました。
 アメノオシホミミは驚きます。そこには、アマテラスの心配など杞憂と言えるほど、下手をすれば天上世界より立派な国が、いくつもあったのです。民も恵みも満ち満ちた、素晴らしい世界がありました。
 アメノオシホミミは、アマテラスの元に戻ります。そして、アマテラスにこう言いました。
「お母さん。出雲の世界は、随分『騒がしい』ようだよ」
「……騒がしい?」
 アマテラスは、首を傾げます。
「騒がしい」と言われても、何がどういう風に騒がしいのかがわかりません。活気に溢れているという意味なのか、荒れに荒れているという意味なのか、どちらかがいまいちわからないのです。まして、あの弟の成した国なのですから、どちらでもあり得ます。

 困ったアマテラスは、天上世界にいる有力な神々を残らず集めて、サミットを開きました。
「これこれこういう事なんだけど、どうすればいいかな?」
 アマテラスが状況を説明すると、ああでもないこうでもないと意見が飛び交います。すると、一人の神が、アマテラスにこう言いました。
「スサノオも元々は天上世界の神なんだから、そのスサノオが造った国なら、我々天上世界の神が治める権利があるんじゃない?」
「えっ? でもそれ、何か横取りみたいじゃないの? だって、一生懸命頑張ったのはスサノオだよ? それに、追い出すような形で出雲に行かせたのに、今更そんな事言い出すのはずるいんじゃない?」
「ずるくないよ、全然ずるくないよ」
 アマテラスの疑問に、ゲス顔でそう答える神様。実は、この神こそは、いちば~ん最初に出て来た神様の一人、高御産巣日神(たかみむすひのかみ 以下:タガアリ)でした。「マジで一切出て来ない」とキッパリ言ったばかりだったのに……スマン、ありゃウ(ry。
「そもそも、スサノオだって、出雲の世界から草那芸之大刀(くさなぎのつるぎ)をアマテラス様に持って帰って来たわけでしょ? 国だって、きっとアマテラス様にあげたいって思ってるってはっきりわかんだね」
「で、でもでも、それじゃあスサノオの頑張りが……」
「そうは言うけど、実際、今、出雲の世界を治めてるのって、オオクニヌシって奴だよ? スサノオ、何かクッソ太い柱に髪縛られて動けてないよ?」
「……もう! スーちゃんったら、何してるの!」
 その後も神々は、あの手この手を使って、アマテラスに意見を納得させようと、色々な事を言います。押しに弱く流されやすいアマテラスは、色んな事を言われるうちに、だんだん本当にその気になって来てしまいました。
「……よし、決めた! 出雲世界は、私ことアマテラスが統治する事にするよ!」
「やったぜ。」「チョロイ」「アマテラス可愛いよアマテラス」
 こうしてアマテラスは、出雲世界を統治するに辺り、先んじて遣いを渡す事にします。


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 アマテラスが遣わした最初の神様は、天菩比神(あめのほひのかみ :アメノホヒ)という名前の神様でした。彼は、アマテラスがブフー! とした時に産まれた男神の次男です。
「アメノホヒ君、出雲世界を視察して来なさい」
「うん。わかったよ、おかあさん」
 アメノホヒは、アマテラスの命を受けて、出雲に降り立ちます。そして、現在出雲を治めている、オオクニヌシの所に行きました。

 アメノホヒは、オオクニヌシを前にして、威勢よく名乗りを上げます。
「ぼくは、アマテラスのこどもだ! やいやい、オオクニヌシ! くにをわたせー!」
「そうか、そうか。ここまでお遣いに来たのか、偉いなぁ」
「うん、がんばった」
「坊や、飴ちゃん舐めるか? 甘い飴ちゃん?」
「なめるー」
 アメノホヒは、オオクニヌシに盛大な接待を受けてご満悦です。
「どうだい、坊や? 出雲には美味しいものも沢山あるし、楽しいものも沢山あるよ。だから、天上世界には帰らずに、出雲に住まないか?」
「すむー」
 こうして、アメノホヒは出雲で暮らす事になりました。で、出雲の神になりました。

 三年の月日が経ちます。その間、出雲にやったはずのアメノホヒからの連絡は一切ありませんでした。アマテラスは、心配で心配でしょうがありません。
「どうしたのかしら、アメノホヒ君ったら。……もしかして、荒人神に誘拐されちゃったのかしら? それとも、グレちゃったの? お母さん心配!」
 居ても立ってもいられなくなったアマテラスは、新たに遣いを出す事にしました。次の遣いは、天若日子(あめのわかひこ 以下:アメノワカヒコ)という、腹に一つも二つも抱えていそうなクセモノの神様です。
「アメノワカヒコ君! アメノホヒ君の様子を見て来てちょうだい! あとついでに出雲の様子も! もしもの時の為に、武器も持たせるから!」
 そう言ってアマテラスは、アメノワカヒコに、天之麻迦古弓(あめのわかこゆみ)と天之波波矢(あめのははや)、要するに凄い弓矢を渡します。
 こうして、アメノホヒに続いて、アメノワカヒコが出雲に降り立ちました。
 アメノワカヒコは、出雲に降り立って、大層驚きます。そこには、自分の想像以上に素晴らしい世界が広がっていたからです。
 アメノワカヒコは、アマテラスの遣いという使命も忘れて、一つの野望を企てます。
「僕は新世界の神になる」
 何と、オオクニヌシから出雲を乗っ取って、自分が出雲を統治する神になろうとしたのです。
 その後アメノワカヒコは、オオクニヌシへの遣いの使命も忘れ、何と、オオクニヌシの娘の一人である下照姫命(したてるひめのみこと 以下:シタテルヒメ)と結婚してしまいました。こうなると、オオクニヌシの身に何かあった場合、その後継ぎは、婿養子であるアメノワカヒコという事になります。中々にクレバーです。知性派です。
 アメノワカヒコは、シタテルヒメに、天上世界の神達の計画を話します。当然、お父さんが一生懸命頑張って造り上げた国を、一方的な理由で奪おうとしている天上世界の神に、シタテルヒメは反感を抱きます。


────────────────


 アメノワカヒコがシタテルヒメを嫁にして、オオクニヌシ一族の一員となってから、八年の月日が経ちます。
 その間も、相変わらずオオクニヌシは国造りをしていましたが、何か最近になって、たま~に「飽きて来たなぁ……」とか呟くようになって来てました。こうなると、アメノワカヒコにその任が受け継がれるのは時間の問題です。
「計画通り(ニヤリ)」
 もはや、アメノワカヒコの野望通り事が進むのは時間の問題かと思われました。しかし、この野望は、思わぬ形で潰える事になるのです。

 所変わって、天上世界。
 アメノホヒが行方不明になり、更にアメノワカヒコからも一切の連絡もない現状に、いよいよアマテラスは焦ります。
「もしかして、出雲って、とんでもない世紀末になってるんじゃないの……?」
 そう訝しんだアマテラスは、再三に渡り遣いを出す事にします。
 ただし、今度の遣いは、神様ではありません。キジです。鳥のキジ。アマテラスのペットの一匹を遣いに出す事にしたのです。このキジ、名前を鳴女(なきめ)と言います。
「鳴女ちゃんや。出雲に行って、アメノワカヒコとアメノホヒを探しておくれ。そして、状況を聞いて来ておくれ」
「ワカリマシタ! ワカリマシタ!」
 鳴女は、アマテラスの指令を受け、出雲へ飛び立ちます。

 これに慌てたのが、アメノワカヒコです。今ここで、鳴女に状況を伝えれば、天上世界の神様はすぐさま降臨するでしょう。だからと言って、何も伝えなければ、「何故アメノワカヒコは何も伝えないんだ?」と訝しんで、下手をすれば自身の立場が危うくなります。
「くそっやられた!」
 八年もかけた野望です。しかも、成功は目の前。ここで野望が潰えてしまうと考えると、アメノワカヒコは無念の思いで一杯でした。
 しかし、またしても事態はややこしくなります。ここに来て、アメノワカヒコの妻であるシタテルヒメが、アメノワカヒコに耳打ちするのです。
「殺すよ」
「えっ」
「こんなキジは殺す」
 元々、天上世界の神々に良い思いを抱いていなかったシタテルヒメです。まして、彼女としても、このまま夫であるアメノワカヒコが統治を行ってくれれば、それこそ万々歳なわけです。つまり、シタテルヒメにとって、鳴女が抱える使命は、ある意味ではアメノワカヒコよりも憎たらしいものでした。
「このキジを殺して、情報を隠ぺいするんだよ。あくしろよ」
 ここに来て、スサノオの血統が目覚めたようです。とんだ肝っ玉母ちゃんのシタテルヒメでした。
 アメノワカヒコは、震える手で、かつてアマテラスに貰った天之麻迦古弓と天之波波矢を構えます。皮肉なものです。アマテラスに貰った弓矢が、アマテラスへの連絡を絶つ為に使われるのですから。
 アメノワカヒコが、空を飛ぶ鳴女に向かって、天高く矢を放ちました。そして、矢は、鳴女を、確かに撃ち貫きます。哀れ、鳴女は死んでしまいました。
 アマテラスに貰った天之波波矢は、そのまま、天高く消えて行きます。
 これが、アメノワカヒコ最大の誤算でした。

 またまた所変わり、天上世界。
 アマテラスは、自宅で煎餅を齧り、ごきげんようを見ながら報告を待っていました。
「鳴女ちゃんは、そろそろ出雲で二人を見つけたかな? 報告まだかな~」
 そんな事を考えていると、突然、お茶の間の地面から何かが突き出て来て、あっという間にちゃぶ台を貫きました。
「矢だこれー!?(ガボーン)」
 報告を待っていたのに、返って来たのは矢でした。しかも、この矢は、血がベットリとこびりついていました。アマテラスじゃなくても、これはビビります。
「……あれ? これ、私がアメノワカヒコ君にあげた、天之波波矢だ。どういう事なの……」
 しかも、どうやらこの血は、鳴女のもののようだと察します。この事態に、アマテラスは困惑しました。

 アマテラスは、再び天上世界の偉い神々を集めて、サミットを開きます。
「これこれこういうわけなんだけど、これはどういう事かな?」
「……どうもこうも、アメノワカヒコが鳴女を射た、という結論しかないんじゃないかな」
「で、でもでも! アメノワカヒコ君は、私が遣わせたんだよ? 彼は、そんな酷い事しないよ!」
 アメノワカヒコの腹黒さなど知らないアマテラスは、神々の意見から、必死にアメノワカヒコを庇います。こうなると、話し合いは平行線です。
「じゃ、こうしましょう。誓約(うけい)」
 出ました、誓約です。覚えているでしょうか? かつてスサノオとアマテラスが交わした、あの勝ち負けの基準が意味不明のアレです。
「この矢を掴み、出雲に投げ……当たった奴が黒幕っちゅうルールや」
「おもろい感じで言うなや。最後だけおもろい感じの言い方やからあかんねん」
 こうして、アマテラスは、出雲目がけて、飛んで来た天之波波矢を「そぉい!」と投げ返しました。

 またまたまた所代わり、出雲。
 問題になっていた鳴女も始末し、何とか隠ぺいを完了したアメノワカヒコですが、内心はガクブルです。こうしている間にも、いつ天上世界の神々が手を打って来るかわからないのです。
 しかし、今更引き返せません。もう、やる所までやるしかないのです。
「アメノワカヒコ、危ない!」
 突然、シタテルヒメが叫びます。しかし、時既に遅く、アメノワカヒコの体を、何かが貫きました。
 天之波波矢です。アマテラスの投げ返した天之波波矢が、アメノワカヒコを貫いたのです。
「馬鹿野郎ー!! アァーマテェラスゥー!! 誰を射ている!? ふざけるなぁー!!」
 アメノワカヒコが倒れました。そして、遂に目を覚ます事はありませんでした。
 こうして、アメノワカヒコの野望は、達成を目前にして、呆気なく潰える事になります。


────────────────


 結局、都合三回も出雲に都合を出したにもかかわらず、一向に出雲との連絡手段の都合は付きませんでした。
「ここまで出雲との交流が難しいとは!! 読めなかった このアマテラスの目をもってしても!!」
(なーにいってだ)(節穴なんだよなぁ……)(アマテラスちゃん可愛い眼球舐め回したい)
 いよいよ「どうすっぺか」という話になった頃に、突如、見知らぬ神様が、アマテラスのサミットに割り込んで来ました。
「話は聞かせてもらった!」
 勢いよくバーン! と入って来たのは、伊都之尾羽張神(いつのおはばりのかみ 以下:オハバリ)という名前の神様でした。
「俺は、いつかイザナギがカグツチを殺した時に使われた十拳剣が神様になった者っす。わかりやすく言えばソーディアンっすね」
「……その節は、父が多大なるご迷惑を……」
「あっ、いえいえ。もう済んだ事ですから。何かアマテラス様が悩んでるって事らしかったから、俺ん家すっげぇ遠いんですけど、来ちゃったんすよ」
「えっ、本当に? わざわざごめんなさいね」
「大丈夫っすよ、友達に車持ってる奴いたんで。天迦久神(あめのかくのかみ)って奴なんすけど」
 どうやら一部始終を知っているらしいオハバリは、さっそくアマテラスに助言を与えました。
「俺の息子に建御雷之男神(たけみかづちおのかみ 以下:タケミカヅチ)ってのがいるんっすけど、コイツを出雲にやれば大丈夫だと思うんすよ」
「へー。でも、どうして?」
「強い」
「えっ」
「強いから何かあっても相手は死ぬ」

 そうしてオハバリが連れて来たタケミカヅチは、何かもう本当、見るからに強そうでした。
「任せろよ、”親父”ィ……俺が”出発(でっぱつ)”したら、”出雲”なんか”ソッコー”で”シメて”やっからよう……!?(ビキビキ)」
──!?
(怖い!)(超怖い!)(アマテラスちゃん可愛い腹パンした後抱きしめてナデナデしたい)
 こうして、タケミカヅチは出雲に降り立つ事になります。

 一方その頃、オオクニヌシは、稲佐之浜(いなさのはま)でバカンスを楽しんでいました。悠々自適の隠居生活です。
「いい景色だなー」とか思っていると、突然、空が暗くなり、雲が割れ、一本の剣が降って来て、海を割りました。
 振って来た剣は、刃を上にして、砂に突き刺さります。そしてその上に、天上世界から来たであろう神様が、胡坐(あぐら)をかいて降り立ちました。
 確認します。刃が上です。つまり、刃の上に胡坐をかいています。しかし、その尻に刃は刺さっていません。斬新なケツ筋アピールでした。
 タケミカヅチ、ダイナミックな登場シーンです。
「見つけたぜぇ、”オオクニヌシ”ィ? テメーに”話”があって来たんだよう……!?(ビキビキ)」
──!?
「えっ、何なのこの人怖い……」
 オオクニヌシが目の当りにした現象を簡単にまとめると、

・常夏の浜辺でバカンスしてたら
・海が割れて
・剣の刃に座った筋肉モリモリマッチョマンの変態に絡まれた

 こんな感じです。オオクニヌシも、これまでに、大概な数のブッ飛んだ神々と交流して来ましたが、流石に初対面でいきなりフルスロットルで絡まれると対応に困ります。
「”オオクニヌシ”ィ……オメー、”ドコ”の”ダレ様”がこの”出雲”仕切ってって思ってんだ? おう?(ビキビキ)」
──!?
「えっ? いや、多分、僕かなーと思ってるんですけど……いや、ちょっと顔近いんで……」
「ここぁ”アマテラス”クンの”シマ”だかんよゥ? オメーはただの”イインチョー”だぁ。”チョーシ”くれてっと”ひき肉”にしちまうゾ?(ビキビキ)」
──!?
「怖いし近いし!」
 タケミカヅチは、オオクニヌシの眼前にまで迫り、メンチを切ります。
 タケミカヅチの言いたい事を簡単にまとめると、「貴方はこの国を造って統治しているのかもしれないけど、実際『誰の物なの?』と聞かれると、それはアマテラス様のものなんだよ」という事でした。
 いきなり現れて、この言い草はありませんね。でも、オオクニヌシは強く言えません。だって怖いから。
「いやぁ……僕一人じゃ何とも言えないんで……あの、息子! 息子いるんで! 息子に聞いてくれればいいと思います!」
 結局オオクニヌシは、タケミカヅチにビビって、息子に丸投げしました。


────────────────


 タケミカヅチは、オオクニヌシの言葉を額面通り受け取り、まずはオオクニヌシの長男である八重言代主神(やえことしろぬしのかみ 以下:コトシロヌシ)の所にカチコミました。
 あまりの剣幕にビビったコトシロヌシは、タケミカヅチの言葉に「いいですよいいですよ、持ってって下さい」と答えます。
 しかし、コトシロヌシは、結構陰険でした。実際にタケミカヅチにカチコまれた時にはへこへこしたものの、いざタケミカヅチが帰ると、ふつふつと愚痴を言い始めます。
 そして、ふてくされたコトシロヌシは、船に乗り込み、手の甲で手をパン! と叩き、船をガコン! と踏みつけます。
 前に、イザナギがイザナミから逃げる時、十拳剣を逆手に持って逃げたのを覚えていますか? あれと同じ感じです。要するに「いつもと逆のやり方」をすると、悪い縁起を相手にぶつける事が出来るのです。現代風に言えば、お客様にお茶漬けを出したり、お客様が帰る時に塩をまいたりするあれの意味合いがあります。
 そして、コトシロヌシは、そのままずーっと船の中にひきこもってしまいました。そして、二度と出て来る事はありませんでした。神様は、何か気に入らない事があると、すぐにひきこもる習性があるようです。

 続いてタケミカヅチは、オオクニヌシの次の息子である建御名方神(たけみなかたのかみ 以下:タケミナカタ)の所にカチコミます。
 しかし、これがクセモノでした。このタケミナカタ、流石はスサノオの七代孫だけあって、中々気合いが入った神様だったのです。
「ヤクザめ。武の力を思い知らせてやる」
「”上等”じゃん? ”タケミナカタ”ァ……! 気合いブリバリだぁバカヤロウ!!」
──!?
 こうして、タケミカヅチとタケミナカタは、DOHYOUという神聖な場所の上でRIKISHIとRIKISHIが己の誇りと命を懸けてBUCHI-KAMASHIあい、HARITEやHADOU、TSUPPARIなどを駆使し勝利を収める、最強の国技「SUMOU」で決着をつける事にします。
「ドーモ。タケミナカタ=サン。タケミカヅチです」
「ドーモ。タケミカヅチ=サン。タケミナカタです」
 HAKKEYOI終了から0.02秒。タケミナカタは跳んだ。後悔は死んでからすればよい。今は目の前の敵を倒さねばならない!
 ところが、タケミカヅチはチートしました。手を氷の柱の剣に変化させたのです。こんな手でHARITEやTSUPPARIをされたらひとたまりもありません。
 タケミナカタは恐れをなすと、その隙を見逃さなかったタケミカヅチが、タケミナカタの手を、凍っていないもう片方の手で掴みました。そして何と、力任せに握り潰してしまったではありませんか。要するに握撃です。
「実際強い」
 これに慌てたタケミナカタは、すたこらさっさと逃げ出します。しかし、タケミカヅチは下衆でした。逃げ惑うタケミナカタを執拗に追い回し、両腕を氷の刃で斬り落としてしまったのです。流石はヤクザです。
「参った、参った! もう私はしゃしゃり出ません! センセンシャル!」
 タケミナカタは、すっかりタケミカヅチに降参しました。こうしてタケミカヅチは、強引にオオクニヌシの子供達に納得させました。

 タケミカヅチは、オオクニヌシの子供達にも納得させた事を、オオクニヌシに報告しました。
 ああ言った手前、タケミカヅチがちゃんと約束通り息子達から納得を得た以上、国は譲らなければなりません。ここで「だまして悪いが」とかほざいたら、絶対小指を詰められます。
 しかし、それはそれで困るのです。そうなれば、オオクニヌシがこれまでに得た信仰は、全て天上世界の神々のものになります。そして神は、信仰がなければいけません。そうなれば、オオクニヌシは信仰を失い、居場所を失ってしまうのです。
 困りに困ったオオクニヌシは、タケミカヅチに懇願しました。
「国は差し上げましょう。天上世界の神々が統治していただいて構いません。しかし、私が祭られる祭壇も残していただけませんでしょうか? そうしていただかなければ、私は居場所がなくなってしまいます」
 これを聞いたタケミカヅチは、オオクニヌシや他の出雲の神々を哀れに思います。延いては、タケミナカタも居場所を失ってしまうのです。タケミナカタは、根限りのタイマンを張った相手です。つまり、ダチなのです。
「おっしゃわかった! ”テンジョー”の奴らに、このタケミカヅチが”物申して”おいてやるぜ!」
 そう言って、タケミカヅチは、一度天上の世界へ帰る事にします。そして、ありのままの現状を、天上世界の神様に報告しました。
 その後、ただ単純に天上世界の神様の聞き分けが良かったのか、それともタケミカヅチの表沙汰にならなかったブッコミがあったのかはわかりませんが、結果、オオクニヌシの主張は認められました。
 こうして、遂に天上世界の神々の出雲へ降り立つ儀式「天孫降臨」が行われる事になります。
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六月十七日 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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