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ファンタジー編

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「おお、勇者よ!よくぞ応じてくれた!」
 唐突に目の前が真っ白になって、目が慣れてきたと思ったらそんな言葉が聞こえた。
目の前にいるのは立派な白ひげを生やしたおっさん。
「ちょっと待ってください。少し時間をください」
「む、いかがなされた勇者殿?」
 くるっと周りを見渡すと、足元には魔方陣。周りにはおっさん、美人、怪しげな魔術師。
「すいません、ここは?」
「ここは最後の副都サイザリス」
「ええと、あなた方は?」
「私はこの国の王、そしてこれは娘のメルザじゃ」
「初めまして、勇者様。メルザと申します」
 スカートの端を持ちつつ、深々とお辞儀するお姫様。そのちょっとした動きからでも高貴さが伺える。
「ああ、僕は坂本 譲といいます」
「サカモト様、ですね…。サカモト様、お願いです!人類をお救いください!」
「え、え、……え?」
「頼む、そなたが最後の希望なんじゃ!」
「えぇぇぇ!?」

 この物語は平和な現代から突然ファンタジーの世界に召喚された勇者…


「国王!怪しい人物が!」
「むっ!何者じゃ貴様は!」
「あ、やっぱりこの扱いなんだ」

に巻き込まれて一緒に召喚された、一般人が主人公視点の物語である。
 俺が坂本と同じ世界の住人であることを説明すると、王様は分かってくれたらしく、坂本と俺に召喚したことを詫びつつ、こちらの世界の現状について教えてくれた。

 王様の話を要約するとによると、突如現れた魔族が各地を次々と侵略しているらしい。
遥か昔にも人類の危機があったらしい。そのときの王様が苦し紛れで召喚魔法を行った結果、他の世界からの人物が召喚され、その危機を救ったとか。
んで、そのときの伝承にしたがって召喚したところ、坂本が呼び出された、ということだ。

「え、ええ…。急にそんなこと言われても」

 坂本はこの世界の人類を救えって言われて若干顔が青くなっている。坂本らしい。
少し考える時間を引き伸ばしつつ情報を集めるか。

「あのーすいません」
「む、どうなされた?」
「この世界の侵略ってどのようなものなんですか?」
「お前何を…?」

 俺の質問に訝しげな表情をする坂本とふむと頷きつつひげをさする王様。

「ふむ、なかなか頭が回るようじゃのう。この世界の魔族の侵略はたったひとつ。ギャンブルなんじゃ」
「えっ?」
「おっ、新パターン」

 戸惑いの顔を浮かべる王様の言葉に坂本の顔色が肌色に戻ってきた。

「伝承では血を血で洗う戦争が行われた末、そのときの召喚されし勇者やその仲間など多くのの命と引き換えにこの世界は救われた…。」

 王様の言葉に頷くお姫様と兵士一同。民承にもなっているのか。

「この話はわが世界の人であれば誰もが知っている話でな、本も出ている。ちなみに著者はわしじゃ」

 知らんがな。

「それは置いておくが、その話を聞いて感動して育った若者が多くてな。剣術、武術、その他もろもろが発達しているんじゃが…」

 はぁ、とため息をつく王様。

「ぶっちゃけ脳筋、というか血気盛んなことが好きでその他にあまり興味がなくてな。そこで今回の魔族の侵略がおこってな」

 ふぅ、とため息をつく王様。

「最初は若者たちも「魔族なんかぶっころ」だの「別に俺一人で倒してしまっても構わんのだろう」だの息巻いておったのじゃが、その魔族の侵略法が伝わるにつれてどんどん興味をなくしてしまってのう」
「それは…大変ですね」

 話せば話すほど弱っていく王様に労いの言葉をかける坂本。と同時に首を捻る。

「ん?そのギャンブルを拒否したらいいのに何で侵略されているんですか?」

 坂本はある程度余裕が出てきたのか、王様に当然っちゃ当然の質問する。

「そこなんじゃが、数代前のクソが生粋のクソでな。勝負を挑まれて逃げたら重罪とかいうクソみたいな法律を出しやがってこれまでの王もクソみたいな法律をクソみたいに遵守したクソ」
「父上、素が出ています」

 影を落としながらクソを連呼する王様。それを高貴な笑みでたしなめるお姫様。家族には散々愚痴っているのか対処が慣れている。

「オホン。そういうわけでな、国民にはその考えが染み付いておるのじゃよ。嘆かわしいことにな。一応、各自治体には文官がおってその者たちがギャンブルに対応しているのだが…」
「それもまた脳筋と」
「そのとおり。正確にいうと脳筋に毛が生えた程度。少しずつ何とか変えていっているんじゃが」

 へぇ、とため息をつく王様。

「というわけで、召喚した理由はお主らにこの魔族とのギャンブルで勝利してほしいんじゃ。…ここまででなんか質問は?」
「なんで王様がギャンブルしないんですか?」

 話が終わり、俺らに質問を促す王様。そこでさっきから疑問に思っていることを聞いてみる。

「単刀直入にいうと運がないんじゃよ、わし」

 だからギャンブル無理といいながら、ぶっへぇぇとため息をつく王様。

「そもそも少年時代にあのクソに会ったのが運の尽き。王子ということで有無を言わせず引っ張りまわされた挙句新技の実験台にされたり…」
「あ、この話長い。お二方、もし面倒でしたら部屋に案内いたしますが?」
「僕は大丈夫ですけど」
「なんか面白そうだから聞いとく」
「そうですか。でしたらティーナ、紅茶とお茶請けの準備を」
「すでに持ってきております」

 そんな流れで王様の止まらない愚痴をBGMにしながら、お茶会が始まった。
 ちなみにこの王様、王の血筋ではなく、前代の王の幼馴染兼大臣だったらしく、その前代の王が突然旅に出ると駄々こねて突如王を任されたとか。でたらめだな、この世界。
2, 1

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