エピローグ Part3
「お久しぶりです、シバサキさん」
「……誰だ、あんた」
シバサキはゆっくりと振り向く。うっすらと、殺気を感じる。
「本部の者です。トニーと言います」
「……しらねえな」
「私はあなたを知っています」
「……で、本部のエリートが俺みたいなもんに何の用だ?」
「まず、あなたが何処まで知っているかを聞かせて下さい」
「何の事だ?」
「わかるはずです」
「検討もつかねえな」
立ち去ろうとするシバサキの行く手を、数人の男が遮る。
「殺すのかい?」
「いいえ。お話を聞きたいだけです」
「話す事はない」
「『グッドラック』の店主──、エンドウさんとはすでにお話をさせていただきました」
「……そんな奴は知らん」
「博士に何を依頼されているのですか?」
「博士? 何処の何博士だ?」
「日本支部は、ずいぶん前からあなたに目を付けていました」
「当然だろうな。俺みたいなやつはよ……」
「この街をどうしようというんです?」
「だから、しらねえって!」
「ねえ『あれ』は何処にいるんですか?」
「何の事だよ!」
「エンドウさんもね、言うんです。そんなものはここには無い。届く予定も無い、って」
「何の事だか知らねえが、そいつがそう言うならそうなんじゃないのかよ? 納得いかねえならもう一度そいつに聞けば良いだろ!」
「それは、もう出来ません」
シバサキが身構える。
殺気を隠す気も無いようだ。
「おかしいんですよ。何かが。私の知っている世界と、何かが──」
「おかしいのはお前だろ?」
「ねえ、シバサキさん。教えて下さい。『今回は』何をするつもりなんですか?」
「だから──」
おおおおおおおああああああああああああああああああああああああうううううううあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……
夕暮れの街に、聞き覚えのある絶叫が響き渡った。
そして俺は──俺を探すために走り出した。
エピローグ?
エピローグ Part4
誰もいない部屋の中、俺は独り、深いため息を吐いた。
終わった──、のだ。
いや、終わってしまった、か。
自分の時とは違う展開で何度かパニックになりかけたが、結果的には、同様の結末に落ち着いた。
──ずっと、こんな事を繰り返しているのだろうか。
そして、俺は、これからどうなるのだろうか。
これでゲームはおしまい?
もう、自由にして良いのか?
本当に?
それとも──。
立ち上がり、戸棚からウイスキーのボトルとグラスを取り出す。普段はあまり飲まない方だが、何だか飲みたい気分だ。
グラスに焦げ茶の液体を注ぐ。『何だか麦茶みたいだな』と思って、少し懐かしくなる。
ストレートのまま一気に飲み干すと、喉が、胃が焼けるように熱い。
──こんなになっても自分は生きているのだな、と思う。
この五年間、ハッピーエンドを求めて奔走してきた。
誰にも悟られないように。
それが正解だったのかはわからない。
誰かに助けを求めても良かったかも知れないし、あるいはキシダ一家を保護しても良かったのかも知れない。ある意味『二週目のプレイ』だったとはいえ、マルチエンディングで攻略法も調べられないのなら、闇雲に動くわけにもいかない。誤ったフラグを立ててしまったら、リセットは出来ないのだ。
しかし、慎重になり過ぎてしまった部分も否めない。
あの時点で、自分が『173』に襲われる事は無いと知っていたら……。
一分一秒が戦いだった。
それこそ、うっかりまばたきをしている間に死んでしまうような緊張感の連続だった。
そうだ、俺は必死にやった。
決して悪い結末じゃないさ。
決して……。
──やめよう。
こんなのは無駄な感傷だ。
このゲームに三週目は無い。
俺のエンディングは──、これ、なのだ。
引き出しを開ける。
そこには懐かしい、家族写真が入っている。
俺はそれをシュレッダーにかけ、顎に手をやった。
まだ慣れない。
しかし、慣れなくてはいけない。
自分だって、少しくらいは──、
幸せに──。
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誰もいない部屋の中、俺は独り、深いため息を吐いた。
終わった──、のだ。
いや、終わってしまった、か。
自分の時とは違う展開で何度かパニックになりかけたが、結果的には、同様の結末に落ち着いた。
──ずっと、こんな事を繰り返しているのだろうか。
そして、俺は、これからどうなるのだろうか。
これでゲームはおしまい?
もう、自由にして良いのか?
本当に?
それとも──。
立ち上がり、戸棚からウイスキーのボトルとグラスを取り出す。普段はあまり飲まない方だが、何だか飲みたい気分だ。
グラスに焦げ茶の液体を注ぐ。『何だか麦茶みたいだな』と思って、少し懐かしくなる。
ストレートのまま一気に飲み干すと、喉が、胃が焼けるように熱い。
──こんなになっても自分は生きているのだな、と思う。
この五年間、ハッピーエンドを求めて奔走してきた。
誰にも悟られないように。
それが正解だったのかはわからない。
誰かに助けを求めても良かったかも知れないし、あるいはキシダ一家を保護しても良かったのかも知れない。ある意味『二週目のプレイ』だったとはいえ、マルチエンディングで攻略法も調べられないのなら、闇雲に動くわけにもいかない。誤ったフラグを立ててしまったら、リセットは出来ないのだ。
しかし、慎重になり過ぎてしまった部分も否めない。
あの時点で、自分が『173』に襲われる事は無いと知っていたら……。
一分一秒が戦いだった。
それこそ、うっかりまばたきをしている間に死んでしまうような緊張感の連続だった。
そうだ、俺は必死にやった。
決して悪い結末じゃないさ。
決して……。
──やめよう。
こんなのは無駄な感傷だ。
このゲームに三週目は無い。
俺のエンディングは──、これ、なのだ。
引き出しを開ける。
そこには懐かしい、家族写真が入っている。
俺はそれをシュレッダーにかけ、顎に手をやった。
まだ慣れない。
しかし、慣れなくてはいけない。
自分だって、少しくらいは──、
幸せに──。
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