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フリーは地雷原?編

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「死ねこら、鬼頭。バーカ!」
  今日も黒崎さんはカラオケでご乱心である。顔を真っ赤にして、笑いながら中指を立てる黒崎さんを見知らぬ人が見たらどう思うだろうか?いや、会社の女子社員の評価は間違いなく地に落ちるだろう。一緒に来てた村松君は涙目でトイレに行ったっきり帰ってこない。黒崎さんに色々言われてたからなぁ。
   さて、なぜここまで黒崎さんは乱心してしまったのか、勿論酒のせいだ。じゃあなぜ乱心するまで飲み続けたのか、それには日頃のストレスというか失敗が積み重なって突如それが爆発したというか、嫉妬心というかなんというか……、まぁ平たく言うと風俗関連である。今回は黒崎さんが体験した世にも奇妙な物語を紹介しようと思う。
  「こぉーれぇもぉさだめとぉ」
  ……始まりである
ここは池袋某所。1人の男が怪しい雰囲気の漂う店に入っていった。世間で言うピンクサロンという場所だ。入り口からすぐのところに受付があり、そこには悪くいえばチンピラのような、男がたっている。
「すみません、フリーで40分お願いします」
  店に入った男はそう伝える。
  「わかりました。では先にお支払の方をお願いします」
  その後一言、二言会話したあとだった。
「では、最後にお名前の方をお願いします」
「……俊です」
  先ほど俊と名乗った男、身長は高く顔もなかなかの男前である。本人に特別な欠陥がなければ、あったとしても誰にも気づかれなければ女性には困ることはないだろう。表情は自信に溢れており、頭髪や服装にも気を使っているようにも見える。ほどなくして男は受付に再度よばれ、店の奥に通される。
  その時の男は、まさかこのあとに悲劇が待っているとは夢にも思わなかったであろう。

「紀香です。よろしくね」
「……」
  俊と呼ばれた男が黙るのも無理はない。今目の前にいる女は世間では醜女と呼ばれているものだからだ。目、鼻、輪郭どれもバランスが悪く特に顎に至っては某プロレスラーを彷彿させられるように突き出ている。チャーム?ポイントは笑った時に見える歯並びの悪さと、歯の矯正バンドだ。
「あれ?お兄ちゃんどうしたの?げんきないよ」
  俊は少しめまいを感じた。破壊力抜群の言葉を食らったからであろう。
「もう、そしたら私がいっぱい元気にしてあげるね」
  一方的な、熱いフレンチ・キス。そのまま俊と紀香は店の奥に消えていった。

  顔面とは裏腹にぶりっこというか幼くしゃべる紀香。それを見て俊は(この子が人並みであったら怒りの感情はわいてこないのか?)と思ってしまう。容姿で人を選ぶのではなく、心で選びなさいと親や教師に教わってきたがこの惨状を見ても言い切れるのかと思ってしまう。その前に、ピンサロなんかに行ってるとはと呆れられるかも知れないが……
  お茶を飲み干したあと、紀香にNG内容を教えてもらう。
「オマ〇コは舐めるのはいいけどぉ、指でいじっちゃ駄目ね、恥ずかしいから。おっぱいは乳首を舐めるのだめ。恥ずかしいから」
  容姿はともかく中身は乙女である。それが腹立たしい。
「それと……」
「それと?」
「ディープキスはダ・メ!口内炎で痛いんだぁ」
  ほっと胸を撫で下ろす。助かった。そうおもった瞬間に嫌悪感が胸いっぱいに広がる。
「じゃあ、始めるよ。脱いで」
  俊は服を全部脱ぎ、素っ裸になる。と同時に紀香の乳首攻めが始まる。
「うっ、あぁぁ」
「きゃっ!お兄ちゃん感じてるの?かわいい」
  どんなに醜女であろうと、やはり自分の気持ちいい場所を攻められると感じてしまう。息子も元気になってくる。乳首が終わりいきなりの本丸攻め、ぐじゅぐじゅいやらしい音をたて始める。
「ああ!うっうまい」
  思わず声を出してしまう。容姿はともかくフェラの技術が高い。謎の感動を覚える。
「ねぇ、ちょっとだけキスしよう」
  紀香は息子から口を離し、驚いたように俊を見る。
「え?でもちんちんじゃぶっちゃったよ」
「大丈夫。なれてるから」
  そこから2、3度フレンチ・キスをする。両腕で彼女を強く抱きしめ、耳元でささやく。
「口だけで俺を逝かせることができる?」
「……うん、頑張る」
  熱い抱擁、からのフェラ・ティオはかなりの快感であった。なるべく顔をみず、髪だけを金髪の炉利っ子を想像し……
「うっ……もっと先端を丁寧になめ回して!うっ、んあ!」
  俊の要望に的確に答えるスピードが速くなる。
「あっ!ヤバい!でる!でる!あっ……ああああああ!」
  彼女の口に大量放出されるスペルマ。それを飲み干す彼女。
「ふふ、これはサービス。お兄ちゃん、今日は楽しかったよ!ありがと」

  帰り際に彼女に軽くキスをし、笑顔で別れる。その様子を見た店員と、たまたま店の奥に入る客が「マジかよ!」という顔でこっちを見てることに気づく。
  お客さん、あんたはいいとしてボーイさん。あんたがくっつけたんだろ。そんな顔すんのやめろよ。なんて思ってしまう。容姿はともかく、サービスはよかった。がやはり1人の男としてはかわいい女の子とからみたい。次の日またいくか、別の店に。
  男、黒崎俊は駅に向かって歩きだした。
20, 19

  

「ねぇ、きいてんの?あんたはめんどくさいやつだよ」
  裸に正座という屈辱的な格好で黒崎は説教を受けている。一応名誉のためにいっておくが一切、黒崎には非はない。では、ここに至った経緯を見てもらおう。

「マリコでーす、よろしくぅ」
「よろしくぅ!」
  やたらハイテンションなギャルに黒崎もつられる。容姿はまずまず、髪は金髪ロング。童貞にとっては天敵だが、黒崎にとっては良い相手だった。
「俊さんだっけ?若いね!いくつ?」
「えーっ、ちょっと恥ずかしいな。当ててみてよ」
「うーん?24くらいかな」
「あー!それくらい」
「えっ!?あってたチョー嬉しい」
  一見和やか雰囲気ではある。しかしここからやく20分ずっと会話のみで終わってしまう。ちなみに今回のプレイ時間は40分。半分消えたことになる。
  さすがにそろそろまずいと思った黒崎はマリコに声をかける。
「マリちゃん、そろそろいいかな?」
その一言でマリコの機嫌が急に悪くなる。が、マリコは「まぁ、いいか、俊くん格好いいし」といって俊のズボンをおろし、息子を……手でしごき始めた。
「あの……マリちゃん。俺しゃぶって欲しいな」
「やだ、だってマリは今日口痛いもん」
「じゃあ、おっぱい触らせてよ」
「えっ?無理無理、あたしおっぱいさわられても感じないし」
  その間ずっと息子をしごかれるも完全に萎えてしまいちっとも気持ちよくない。それを察したのかマリコはしごくのをやめる。
「うーん、今日は駄目みたいだね」
「いや、ちょっと燃えないというか……ちょっとだけキスしようよ」
  その一言にマリコはキレた。黒崎を正座させ、説教タイム。そして最初の場面につながる訳である。

「あのぉ、今日フリーでついてくれたマリコって子なんですけど。ちょっと接客態度がですね……」
  プレイ後に黒崎はすぐ、受付のボーイに文句を言った。ボーイの方はというとなにかを察したような、それでいて予想していたかのように対応をはじめる。
「はぁ、マリコさんが……やっぱりね」
「え?やっぱりってどういうことですか?」
  ボーイは黒崎に説明する。もともとマリコは他の風俗店からこの店に移ったこと。最初のうちは真面目に働いてはいたが、最近になって客の苦情が来るようになったこと。それを本人に伝え指導したところ、涙を流しながら謝りそこからまた真面目に働くようになったこと。
「気分の浮き沈みが激しい子なんです。普段は良い子なのに……」
若干同情しつつも、黒崎は言い返す。
「でも、それ僕には全然関係ないですよね」
「……」
  しばしの沈黙。お互いが押し黙る。先に口を開いたのはボーイだった。
「本日は大変申し訳ありませんでした、今回についてはこちらでお願いします」
  渡されたのは嬢の使命料金無料券だった。
「あの、これなんですか?」
「今回のお詫びの印です。また、遊びに来る際は今回みたいなフリーではなく、ぜひ女の子を指名してみてください。そうすれば今回のようなことはないと思います」
「いや、そういうことじゃないんだけど……」
  その時、プレイを終えた男が隣で受付をしてもらっている。そして、最後にもらったのが黒崎と一緒の無料券だった。
  再び流れる不穏な空気。黒崎の胸に怒りがこみ上げる。
「あっ、その……すみません間違えました。実は……」
「いや、もう良いです。ありがとうございました」

  黒崎は店を出たあと、先程もらった無料券をビリビリに破き捨てどぶ川にばらまいた。そしてスマホを取りだし連絡用アプリに文字を打ち込む。内容はこんな感じだ「今日カラオケおごるからみんな来なよ。場所は池袋北口!鬼頭は絶対に来いよ(笑)」
  数人の返信を受け取り、スマホをポッケにしまう。興奮冷めやらぬなか、北口に向かって歩みを進めた。
黒崎さんが大都会を熱唱してるところで眼を真っ赤にした村松くんが入ってきた。トイレで小便以外のものも流してきたらしい。黒崎さんをちらっと見たあと俺に耳打ちをする。
「黒崎さん……やばすぎるだろ」
「あぁ、あれが普通だよ。」
「いや、絶対普通じゃないよ」
  今回黒崎さんがカラオケに誘ったメンバーのなかで雄一来て、俺の代わりに犠牲になった村松くん。まぁ、誰も来なかったとしても俺を無理やり引きずり出して愚痴を聞いてもらうつもりだったらしいが……
  そもそも今回の怒りを全部俺にぶつけるつもりだったらしいのだか、村松くんはとんでもないジョーカーを引き当てたと同時に奇跡も起こしてしまったのだ。

  「黒崎さん、風俗なんかいかずに彼女さんとヤればよかったじゃないですか」
  世間一般の模範解答だが、これはいってはいけなかった。ただいま、黒崎さんとその彼女さんは休みがあわず、ご無沙汰な状態。会いたくてもまだしばらくは会えない。そんな状態である。ただ、それだけでは黒崎さんは暴走しない。村松くんの奇跡が嵐を呼んだ
「実は……ぼく、ガールズバーでナンパした子に振られちゃって」
  そこから黒崎さんのスイッチが入った。相談に乗るふりをして、人の傷口を見つけ出す。その畜生スマイルが今も脳裏に焼き付いている。

「で?何でガールズバー出禁になったんだっけ?」
「女の子に告白したからだよクソッタレ」
  村松くんは結構イケメンだし話上手だ、それを意識してるナルシストな一面もある。本人曰く絶対に落とせるはずだったらしいのだが、結果としては気持ち悪いですと言われ、嬢に出禁宣言をされたらしい。まぁなんというかアホである。更にそれを黒崎さんに執拗なまでにえぐられ続けられたのだからプライドを傷つけられたのであろう。だからって泣くなよナルシスト、と思う。
「なっちゃんお前の番だよ」
  歌い終わった黒崎さんが俺たちのほうにマイクを投げる。次のカラオケ予告には村松くんが入れた曲が写し出された。
「ナルシストのなっちゃんだよ」
  ばか笑いというか高笑いをする黒崎さん。歌い出す村松くんに執拗なブーイング。がんばれ村松くん、負けるな村松くん。池袋の夜はまだまだ長いぞ。
22, 21

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