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●あの夏で待ってる、というアニメをみた。
●これはねえいいアニメだよ。2、3年前の作品になるようで、筆者はその頃ずぶ濡れの雨の中を自動小銃持って戦争ごっこのただ中だった。ずぶ濡れボーイズというわけである。どっこい作中のキャラクタは要所要所で涙に濡れる。惚れた腫れたで豪快に涙を流せるのは学生たちの特権であるから、大いに泣くが良いぞ。涙する女の子のビジュアルが牧歌的な田舎町の背景に映える。個人的な趣味として泣く女の子ってのは非常に好ましい光景なのである。物語は感情の伝達手段であるから、各々方じゃんじゃん涙させていただきたく。
●10代の主人公たち、おはなしの登場人物が10代ということに、どんな物語的な優位があるか。主張したいのは限定というキーワードである。限定された中で出来る限りのことをやろうとする。彼らの考え方や行動にはいちいち心当たりがあるはずだ。限定された選択肢には必然性がある。
●ただ、そこで「ふん、おれがお前だったらそんなヤケッパチは起こさないね! もっとスマートにやれる自信がある」なんて思ったりしてはいけない。世の中を斜めに見ようとするとそうなる。筆者は以前までちっともアニメに面白みを感じられなかったが、今ではこれが原因に違いないと見ている。中二病も大概にしろということである。物語に取り組むときはいつもまっさらな気持ちでいるに限る。
●1クール12話完結である。主たる登場人物は5人登場し、各々がお互いを好きだなんだとモヤモヤしているところから始まる。メインヒロインが宇宙から飛来し、今までの温い関係に波紋が浮かぶ。12話という構成は丁度いい長さだったと思う。似たようなパッケージのアニメを最近観たばかりで、タイトルが、あの日見た花の名前を僕はまだ知らない。それについて雑感も少し。細々比べてみると似ても似つかない物語であるが、レンタルショップの棚にならんでいる所を見る限りでは大差ない様子だった。幼馴染の男女グループ、夏、田舎の町、宇宙人(若しくは幽霊)というイレギュラー。これも12か13話構成だったはずだが、筆者には冗長に感じられた。半分くらいの時間でもまとめられたのではないか。こちらは実際劇場版があるようなので、自覚もあったんだろうか。
●なつまち、の方の12話は丁度良い長さだった。内容もあまりごちゃごちゃ詰め込まれていないのがはっきり分かる。谷川は結局カイ君が好きしか言ってないし、カイ君は先輩好きですしか言ってないし、センパイはカイ君好きしか言ってないし、裸族も青髪も結局好きしか言ってない。ようするにすっからかんと言ってしまえばそれまでだが潔い。沖縄に行って水着ではしゃいだりもする。じつに潔い。
●良かったのは、後半「おいおいラブラブちゅっちゅも流石におなかいっぱいだぜ」というところで檸檬先輩が大活躍する場面。この最終幕につながる地味な伏線も分かりやすくて良かった。そのシーンは滅茶苦茶な展開であり、だがかえって物語の収束に説得力を持たせてくれたと思う。やはり虚構の世界で好き放題はアニメに限る。
●見終わって何が残ったかというとセンパイ結婚してくれという言葉しかない。とにかく絵が可愛かった。寒天みたいな髪の束がプルプルし続けるのである。髪は女性描写の肝心である。センパイは可愛いが髪の描写は谷川が1番だ。これは各々がた異論なかろうはずである。谷川は幸せになってくれたのむ。谷川は幸せになってくれ。
●続きがある。
●たとえば、擦れ違いざまに皮肉を言われたりしたときなんかは、案外気づくのが遅れたりするものだ。差し詰め筆者は頭の回転が鈍いうえにせっかちなので、日常会話でもそういう経験が何度もある。後から気づいて、しかし文句を言い返す相手がないというのは、本当憤懣やる方ない体験となる。それと良く似た感覚で、このアニメ作品に関して思い出したことが1つだけ。
●カイ君に言わせてはいけないセリフを言わせていやしないか。センパイが銀河連邦の救助艇に捕えられる(ごきにあらず)場面、ラストシーン。身動きの取れない主人公カイ君に「絶対迎えに行きますから!」と言わせたのにはどんな目論見があったのか。これは、物語の中で、2度とセンパイが地球に戻らないときに限り使っていい言葉なんじゃないのか。
●この場面に繋がる脚本上の伏線にも、センパイが地球を去ると2度と再会できない、という印象操作が行われているのは明らかだ。そしてカイ君は「迎えに行きます」と言った。しかし、センパイは、エンディングではっきり地球に戻ってきていたことが明らかになる。更に物的、状況的証拠から推測するに、1年も経たないうちに戻ってきていたこともはっきりしている。
●なんでやねん、である。戻ってくるのかよ。センパイ。いよいよ谷川が可哀想だよ。こりゃ高校卒業したら谷川だけ地元から離れて都会の大学行くルートでしょ。悪い遊びをおぼえて堕落してしまうかもしれない。ろくでもない男に引っかかって夢も希望も干からびてしまうかもしれない。勘弁してくれよなんでそんなに早く戻ってきちまうんだセンパイ。あんた全然「待って」ないだろ。むしろそっちから来ただろ。
●エンドテーマの余韻に浸りながら、カイ君あんな啖呵きったならコリャドラえもんの最終回予測みたいなハカセルートに進むのかな、そうするとやはり谷川がなんだかんだで付き添っていくことになるのだろう。裸族と青髪はほったらかしといて問題ないようだし、果てに先輩と対面することができたとしてもそれなりに円満に落ち着くのではなかろうかとか想像していた。想像していたところにセンパイ最後に出てくるんだぜ? 「エッ? あれ? ああ、センパイ戻ってきたんだ、良かった……、のか? いや、良かったよね。めでたしめでたしじゃないか、うん」とか思っちゃったけどそうじゃないよ。まじかよ。
●まあ、檸檬先輩のMIBがその後の大スペクタクルで問題を解決してくれたと考えれば、たとえばセンパイの残した宇宙船で迎えに行ったのだ、とすることもできなくはないだろう。……ウーム。そういう意図があったんだろうなあ、あのカットはなあ。
●いいアニメでした。
5, 4

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