古びたラジオだけが
僕とまだ見ぬ世界を繋ぐ。
「隔絶された街。」
享楽に溺れていても生活ができる。
そんな世界になったのは100年ほど前らしい。
らしい、というのは俺はそのときにうまれていなかったからだ。
そのころから人類はお互いの干渉をやめ。
小さなコミュニティを作って生活を始めた。
結果、加速度的に人口は減り始めた、らしい
一人でいるほうが楽しいからだ。
増えすぎた人類は、その数をだんだんと正常なものとしていった。
これも全部、パソコンから流れてきた情報だ。
生まれてこの方、俺はこの街を出たことがない
たくさんのコミュニティがこの世界にはあるらしいのだが
他の人はそこと交流することを求めない。
それどころか、同じコミュニティ同士での付き合いすら
けだるく感じるようだ。
昼間だというのに、街を歩く人はいない。
そんな街の片隅で、数ヶ月前俺はラジオを拾った。
初めは興味はなかったが。
調べていくうちに興味が沸いてきた。
しかし、部屋ではラジオはつながらなかった
この街に、ラジオを流す人はいなかったのだ。
だからこそ、俺は毎日街を出歩いた。
変人とも言われたが。好奇心が勝ったのだ。
そして、ほんの数日前にラジオはつながった。
初めはかすれた音声。
そして、ハッキリと、人の声が流れ出した。
そのときの衝撃を俺はハッキリと覚えている。
本当に、別のコミュニティは存在する。
数少ない友人にそれを話してもほとんどが興味を持ってくれなかった。
しかし、たった一人だけ、ラジオ放送に興味を持った奴がいた。
だから、今日二人で、ラジオを聞きにいくのだ。
「遅かったね。」
「別に、5分ぐらいの遅刻だろ。」
創られた空、掘られた川。
虚飾に塗れた俺たちのセカイとは違うセカイを二人で聞いた。
「また、聞かせてね。」
「うん。いつでもいいよ。ここはいつでも晴れてて、いつでも俺たちは遊べるんだから。」
古びたレィディオ
外の世界はどうなっているんだろう?
ラジオを流している人はどんな人なんだろう?
見飽きた街の外れで、今日もまた僕はラジオを鳴らした。
始めは面白がって聞いてくれていたあの子も
拾ってから数ヶ月経ってしまった今
興味を失ってしまったようだ。
古びたラジオは今日も、遠い誰かの声を流していた。
「外に、出たいなぁ。」
日増しに募る思い
少年が誰でも持っている好奇心を取り戻させるには
ラジオは十分すぎる素材だった。
ただ、少女を連れて行くには
少女は大人になりすぎていた。
大人は誰も、この町から出たことは無い。
少なくとも、この15年、そういう話は聞いたことがなかった
誰もがみんな、何もしなくても何不自由なく生活が営める
この街から抜け出すことをしなかったのだ。
「外、出てみようかな。」
すぐに戻ればいい。
すぐに戻れば、またいつもの生活に戻れるんだ。
冒険でもなんでもない。
ラジオを流している街へといってみたかったけど
まずは一歩、外の世界を見てくるだけで
それだけで、街の人全員に対して優越感に浸ることができる。
少年は自分のかけている暗示によって
段段とその気になっていった。
ちょっとだけ
すぐに戻る
何度も何度も繰り返し自分に言い聞かせることで
彼の好奇心の列車は、すぐには止まらないほどにスピードを増していった。
その晩、彼は身支度をした。
全く知識はなかったが、手元のパソコンで調べれば情報なんて腐るほど出てきた
そのすべては、すぐにでも手に入るものだ。
物は街には有り余るほどにある。
何十年、何百年だってここで繁栄することができるだろう。
さて、外に出よう
明日は、一歩だけ、外の世界を見てくるんだ。
その小さな冒険のために、彼はリュック一杯に物を詰め込んだ。
次の朝、彼は街の出口を求め、街をうろちょろとした。
「んー、どこから出れるんだろう?」
人工的な川
きちんと整列された森
人の誰もいない広場。
それらを通り過ぎ
彼はやっと扉を見つけた。
扉は錆付いていていかにも誰も出たことがない
そんな雰囲気をもっていた。
「ごくっ・・。」
生唾を飲み込み、
扉へと手をかけ、一気に引いた。
扉の奥には、暗がりと階段があった。
「・・・?」
少し期待していたものとは違ったが
彼は階段を一歩一歩踏みしめ
まだ見ぬ外への不安と期待を膨らませていった。
長い長い階段を上り終えると、また一つ扉があった。
今度こそ。
と扉を開けると。
了
ラジオを流している人はどんな人なんだろう?
見飽きた街の外れで、今日もまた僕はラジオを鳴らした。
始めは面白がって聞いてくれていたあの子も
拾ってから数ヶ月経ってしまった今
興味を失ってしまったようだ。
古びたラジオは今日も、遠い誰かの声を流していた。
「外に、出たいなぁ。」
日増しに募る思い
少年が誰でも持っている好奇心を取り戻させるには
ラジオは十分すぎる素材だった。
ただ、少女を連れて行くには
少女は大人になりすぎていた。
大人は誰も、この町から出たことは無い。
少なくとも、この15年、そういう話は聞いたことがなかった
誰もがみんな、何もしなくても何不自由なく生活が営める
この街から抜け出すことをしなかったのだ。
「外、出てみようかな。」
すぐに戻ればいい。
すぐに戻れば、またいつもの生活に戻れるんだ。
冒険でもなんでもない。
ラジオを流している街へといってみたかったけど
まずは一歩、外の世界を見てくるだけで
それだけで、街の人全員に対して優越感に浸ることができる。
少年は自分のかけている暗示によって
段段とその気になっていった。
ちょっとだけ
すぐに戻る
何度も何度も繰り返し自分に言い聞かせることで
彼の好奇心の列車は、すぐには止まらないほどにスピードを増していった。
その晩、彼は身支度をした。
全く知識はなかったが、手元のパソコンで調べれば情報なんて腐るほど出てきた
そのすべては、すぐにでも手に入るものだ。
物は街には有り余るほどにある。
何十年、何百年だってここで繁栄することができるだろう。
さて、外に出よう
明日は、一歩だけ、外の世界を見てくるんだ。
その小さな冒険のために、彼はリュック一杯に物を詰め込んだ。
次の朝、彼は街の出口を求め、街をうろちょろとした。
「んー、どこから出れるんだろう?」
人工的な川
きちんと整列された森
人の誰もいない広場。
それらを通り過ぎ
彼はやっと扉を見つけた。
扉は錆付いていていかにも誰も出たことがない
そんな雰囲気をもっていた。
「ごくっ・・。」
生唾を飲み込み、
扉へと手をかけ、一気に引いた。
扉の奥には、暗がりと階段があった。
「・・・?」
少し期待していたものとは違ったが
彼は階段を一歩一歩踏みしめ
まだ見ぬ外への不安と期待を膨らませていった。
長い長い階段を上り終えると、また一つ扉があった。
今度こそ。
と扉を開けると。
了