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いらっしゃいませ!こちら三次元です!

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  あなたの天使の作り方。まずはあなたの大好きなキャラクターの出ている作品の最新巻又は最新作を用意します。DVDでも本でも構いません。ただ、性格や設定を忠実に再現させたいならば原作を選びましょう。次にあなたが呼びたい人の名前を書きましょう。ノートでもメモ帳でもなんでも構いません。あなたの好きなキャラクターを思い、気持ちを込めて、他人に読めるような字で書きましょう。もしあなたが呼び出したいキャラクターに名前がなければ好きな名前を書きましょう。それがその人の名前になり、あなたが名付け親になります。次にそのキャラクターの好物を用意します。なければいれなくて構いませんし、この世界に存在しないものや入手が困難なものであればそれに近いものを持って来ましょう。これが基本セットです。
  次に必要なもの。まずお鍋。次に大量のお菓子に呼びたいキャラクターが女の子ならば女の子が喜びそうなものを、男の子ならば男の子が喜びそうなものを三品用意してください。他にもレモン水、赤ワイン、炭酸水、ビールを均等にブレンドしたものを500ミリリットル作ってください。メーカーは気にしなくても大丈夫です。それを石油ストーブの上に置き、、ハロウィーンの日に最高火力で24時間煮込みます。途中でストーブの火が消えてしまうと失敗してしまうので燃料補給はこまめに行ってください。火が消えなければ寝てても外出してても結構です。ただ火事には気をつけてください。
  最後に注意!
  あなたが呼び出すキャラクターには自分の意志があります。あなたの命令に服従しないかも知れませんし、あなたを幻滅させるかもしれません。もしかしたらわかりあえないかもしれません。それでも放置したり、野に放ったりしないでください。あなたが呼び出したキャラクターです。責任を持ちましょう。
  終わり。

  そうかかれたメモを再び読み直し、目をストーブに移す。ちょっとだけ早い登板で張り切るが如く灯油を燃やしメラメラと燃える炎。異臭に包まれる俺の部屋。今は午後の9時前、幸いまだお袋は帰ってきていない。煮込みはじめて23時間と55分……!!なんとか条件はこなせそうだ。だが期待と同じくらい不安もある。いや、不安のほうが遥かに大きい。こんな黒魔術染みた方法で本当にあのこは出てくるのだろうか?ていうかこの現代、日の本の国でそんなファンタジーなことはあり得るのだろうか?この説明書を書いた人間はどんなやつなのか。まぁ夢見がちな高校生には関係のない話だ。嘘なら嘘だったで笑い話にすればいい。まあ貴重な休みが1日潰れてしまうわけだが。腕時計をちらっとみる。あと1分だ。ここで異変が起こる。ただでさえ強烈な匂いがさらにまし、鍋のなかの液体がぶくぶく音をたてながら煮たっていく。
「おいおい、マジかよ……」
  ぱっ!と部屋の中は光に包まれる。まぶたを閉じても光が強すぎて目も開けられない。驚きの声を上げたはずだがそれさえも掻き消されてしまう。
  眩しさが感じられなくなり恐る恐る目を開ける。なんと目の前にあったはずのストーブとお鍋がなくなっている。燃料が入ったポリタンクもない!
  変わりに見た目小学生くらいの、竜の尻尾と耳がくっついてるロリっ子がすぅ……と寝息をたてながら眠っていた。
  あぁ、本当だったのか。腰が抜けて立てない、とりあえず誰かに連絡を取ろう。震える手でスマホを操作し、電話帳を呼び出し、尚(ひさし)に電話をかける。2回ほどコール音がなり、尚が電話に出る。
「おう、どうした、カーリー?」
「ほ、本当だった」
「なにがだよ?」
「できちゃったんだよ、推定年齢150歳のロリっ子が……」
「おい、なんの話だよ。とりあえずそっちに向かうぜ」
「あ、あぁ……俺もちょっと気持ちを落ち着かせるわ」
  通話終了の音と共にスマホを床に落とす。震えが止まらない。一旦深呼吸。ひー、ひー、ふー、ひー、ひー、ふー……ってそれは違う!
  かぐや姫のじいさんとか桃太郎の婆さんも俺と同じ気持ちだったのだろうか?いや、俺だったらショック死する自信がある。なんせ二次元にしか存在しないはずの俺のベスト嫁、ロリババア
で竜っ子の「メルト」ちゃんが目の前にいるんだからな。
「うわぁ、まじか……」
  あちゃーって言っちゃいそうな顔でまじまじと俺のメルトタンの寝顔を観察するひさし。
「まさかあの話が本当だったとはねぇ俺も勿体ないことしたぜ」
「ひさし、呼び出しておいて悪いがとりあえずメルトから離れてくれ。汚れる」
「うわ出た!まーったそんなこと言っ てぇ」
  とりあえずメルトから少しだけ離れさせるために手荒な真似をしようとしたときだった。
「それにしても天下の狩畑(かりばた)様がまさかロリコンだったとはねぇ」
「一応俺たちの方が年下だぞ」
「脱法ロリ……」
「合法だよ!」
「変わんねぇよ!」
    俺たちのコントの声が大きかったのかメルトは「うううーん」なんて可愛らしい寝言?を言いながら寝返りをうつ。
「うへぇ、可愛いなぁ」
「全国の皆さん、見ましたか?この凶悪な顔を!ロリコンは犯罪です」
「顔が怖いのは元々だよ」
「堅気の顔ではない。あと病的に白いな」
「言っておくが俺はアウトドア派だ」
「知ってる」
  まじまじと俺の顔を見つめ出すひさし、
  そして頭の上に生えた竜の耳を指差し
「外に出るにしても、尻尾はなんとかごまかせそうだがフードが必要だな」
「あぁ、そうだな」
  なんて話をしてたらメルトはううーん!と声をあげながら両手をあげ延びをする。そして俺たちを見つめる。あぁ、これあれだ漫画でもそうだったしアニメでもだったよな。汚れを知らない純粋無垢を示す宝石のようなつぶらな瞳、ぷにぷにのほっぺた。でもそんなことよりももっと重要な、深刻な問題が発生するのであった。
「ひさし、すまんな。バケツとってくる。あとは頼んだ」
  え!?みたいな顔をする尚をその場に置いてダッシュでバケツを取りに行く俺。部屋を出たその時だった。聞いたこともないような轟音とひさしの断末魔。パチパチ燃える音と焦げの匂い。浴槽に入ってた水をバケツに汲み上げ万が一の時に備えて蛇口も捻っておく。部屋に戻ると真っ赤に燃えてる俺の部屋と黒こげになっているひさしを見てきゃっきゃ笑ってるメルトが居た。
  くそ、可愛いなぁなんて見とれてる暇などない。部屋に水をかけては消火活動に勤しむ。
「消火器……ねえ……のかよ」
  黒こげひさしはそれっきり動かなかった。
2, 1

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