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赤点をとる夢

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「大五朗君、起きてよ~」
「むむぅ、あと少しだけ寝かしてくれよぉ」
隣の席の茜ちゃんが必死に僕の身体を揺すって起こしてくれているのに、無理だとわかっていてお願いしてしまう。なんでお昼休みってこんなに短いんだろ?
「早くしないと先生に怒られちゃうよ?」
「わかった、わかったよ」
茜ちゃんの説得で体を起こしてうーんっと背伸び。そして大きなあくびをひとつ。
  チャイムが鳴り、昼休みの終わりを知らせる。まだ眠気はとれないけど、授業の準備をしなきゃいけない。次の授業は……

  学級委員の茜ちゃんの号令で授業が始まる。古典の田村先生が黒板に文字を書いていく。古典自体は苦手ではないけどちょっと退屈と感じてしまう。回りを見ると、開始5分も経っていないのにすでにリタイアしている人が数人。羨ましい。隣の茜ちゃんはまじめにノートをとっている。
 

  そろそろ半分くらい終わったかな?と思い時計を見る。あれれ、まだ授業を始めて10分しか経っていない。そうと知った瞬間に、強烈な眠気が襲ってきた。まぶたが急に重くなって、手元がおぼつかなくなって、頭ががくんと下を向いて、寝ちゃだめと思うんだけど………………

  目を覚ましてくれたのはチャイムだった。ハッと思い飛び起きる。汗でシャツが湿っていて寝起きもよくなかった。
「大五郎くん!寝ちゃダメっていったでしょ!」
  隣で茜ちゃんがぷりぷりしている。
「で、でもぉ」
  僕の言い訳を聞く前に茜ちゃんは席をたった。うーん、仕方がない。古典の教科書と、よだれで少しよごれてしまったノートを鞄にしまい、次の授業の準備をする。現代文の教科書と、ノートを机に出したあとブレザーの内ポケットからコンパクトサイズのメモ帳を取り出す。
  タイトルには「メモ帳」とだけ書かれた僕の夢日記。はっきりとした夢を見たときにつける日記帳のようなもの。それにさっき見た夢の内容を大まかに書く。
  テスト、怒られる、みんなの前、箇条書きで書き込み、最後の単語を書こうとして手が止まる。またじわっと汗が滲む。書ききった言葉は「赤点」だった。

「何書いてるの?大五郎くん」
  慌ててノートをブレザーの内ポケットに押し込む。茜ちゃんは興味ありありの顔で「なによー、みせなさいよ!」って僕に突っかかってくる。
「だ、だめだよ茜ちゃん」
「いいから見せてよ!ちょっとだけだから!」
「わ、わー!誰か助けてー!」
  回りのクラスメートは僕たちをただ見ているだけだった。男子からは「大五郎!がんばれー」って、女子からは「なになに?」といった感じで。
  結局これも次の授業のチャイムで終わっちゃったけど。

  ホームルームが終わり、いざ帰ろうとしたときだった。同じクラスの大門(おおかど)君がずれた眼鏡を直しながら僕にお願いする。
「あのぉ、大五郎君。お願いを聞いてもらっていいかな?」
「うん?なんだい」
  すると大門君は僕の肩をつかみ、真剣な目で僕を見る。
「頼む!勉強を教えてほしいんだ!」
  そのとき、ノートに箇条書きした文字が浮かび上がる。そうだ確か大門君は勉強ができなかったんだ……
  今回の夢も正夢になるかもしれない。大門君が、赤点をとる夢……
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