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● この文章について

 この文章は、以前、文芸新都の『自説自論』に投稿した文章に、加筆修正を加えたものです。
 文章の修正をより容易にするため、新規投稿とさせていただきます。
 この文章はリンクフリーです。ですので作り手の皆さんが、自作品内でパブリックドメインのコンテンツを使用する際の主張の替わりとして自由にお使い頂けます。


● はじめに

 『著作権』と聞くと、どんな言葉を想像しますか?
 たとえば『JASRAC』とか、『ディズニー』、『違法コピー』、『ダメ、絶対。』
みたいな言葉を想像される方が多いのではないでしょうか?
 上の言葉からは、「僕らをしばるもの」、「僕らの自由な活動を規制するもの」といったイメージを受けると思います。
 確かに、そういった側面はあります。
 でも、僕としては、そんな窮屈な事をみんなに押し付けるのは、あのぶくぶく太った、愚かで醜いジャスラックあたりにまかせておいて、

「僕らには何が許されているのか」

 を書いてみようと思います。僕らが普段思っているよりも、著作権はゆるいものです。利用のしがいもあります。
 法律というのは、禁止だけするものでは、断じてありません。聞いてください。今から大切なことを言います。
 『法律で許されている事は、やっても誰も文句が言えない事』なのです。
 著作権のおいしいところはしっかり理解してもらって、それがみんなの創作活動に役立てばいいなあ、と思います。


● 『著作権』をざっくりと理解しておこう

 『著作権』とは本来、僕ら作り手を保護するために存在する法律です。
 作り手ではないもの、または正当な権利を持たないものが、そのコンテンツを勝手に売ったり、利用したりすることを禁止しています。

 これが機能しないと、現代中国みたいな、暴力とカネと政治力を持つバカ共(ヤクザと政治家)と、他人のふんどしで相撲をとって金を巻き上げ、あとは知らん振りの『インチキ同人野郎』だけが得をする社会になってしまいます。
 そんな社会、イヤですよね? だから本来、これは僕らにとって大切な法律なんです。
 そう。著作権は尊重すべきです。
 とはいえ、ここは現代日本、しかも新都社なのであえて言い換えましょう。「著作権は尊重すべきです。まあ、テキトーにね」


● 『著作権』は時間が経つと切れます

 作り手が死んで50年経つと、著作権を主張することができなくなります。
 そうなると、その作品は、誰でもコピーしたり、勝手に作り変えたり、パロディを作ったりしても良くなります。
 使う時には誰の許可もいらないし、コピーしたものをただ売って、誰かからお金をもらっても問題ありません。
 そういうふうに、50年が経って著作権が切れた作品を『パブリック・ドメイン』と呼びます。
 僕らにはなにが許されるでしょうか? 例えば、

 ・夏目漱石の「坊ちゃん」を熱血少年漫画に
 ・テグジュペリの「星の王子さま」を絵本にして出版
 ・プッチーニの「ラ・ボエーム」を、タイトルそのままで現代に置き換えて少女漫画に
 ・フィッツジェラルトの「偉大なるギャツビー」をゆるふわ4コマ漫画に

 してみることができるわけです。
 僕に想像力がないせいで、例に魅力がなくて申し訳ないですが。
このように、過去の名作のいいところ、やりたければ全文を、自由に利用することが可能なわけです。
 注意点は、海外の作家の場合、翻訳家の文章に著作権が発生しますから、
 微妙に文章を変えたり、語尾を変えたりして対応してくださいぷに。

 ここまでは、「そんなの知ってるよ」って人も多いと思います。
 では、ここからはちょっと応用編。たとえば絵画についてはどうでしょう?

 たとえば画家にして彫刻家『ミケランジェロ・ブォナローティ』はとっくの昔に死んでいますね。
 でも美術書の画集から、彼の絵画『天地の創造』を勝手にスキャンして、漫画に使っても大丈夫でしょうか?
 その画集は、写真家がわざわざイタリアで撮影して、それを出版社が出版してるんですよね?
 そしたら、その画像の権利は写真家か出版社が所有しているのではないでしょうか?
 ダメなような気が、ひしひしとしますね。
 でも実はコレ、OKなんです。
 僕らは、死後50年たった画家のものなら、どんな絵画でも、画集などから自由にスキャンして、加工して(しなくてもよい)、自分の作品に組み込むことができます。出版社の許可を取る必要はないし、そういった作品を売って、お金を取っても、何の問題もありません。

 どうですか?夢が拡がりませんか? でも、なんで大丈夫なんでしょうか? それは次の項目で説明します。


● 作り手なら暗記しておこう『最高裁昭和59年1月20日判決』

 僕らの国はいちおう『法治国家』(独裁者がテキトーに、とかではなく、法律によって何がNGかを決める国)ですから、
過去の裁きの具体例(『判例』といいます)がすごく大切です。
 作り手として、判例も知らないバカ共(出版社とか権利を持つと主張する者たち)から突っ込まれた時のために、
『最高裁昭和59年1月20日判決』は暗記しておくといいと思います。
 現代で通用する、魔法の呪文ようなものです。僕ら作り手にとっては、強力な呪文です。
『エクスペクト・パトローナム』と比べると響きもよくないし、ロマンチックでもないのが残念ですが。

 さて『最高裁昭和59年1月20日判決』とは何でしょうか? google で検索すると、
『顔真卿自書建中告身帖事件(wikipedia)』が最初に出ると思います。
 僕らは事件の全てのあらましを覚えておく必要はありません。この判例の、僕らにとって有利な所だけ知っていればいいわけです。
 それは、次の二つです

 ① コピーには、著作権はない
 ② 写真は、コピーの一種だ

 ちょっと驚きますが、写真はこの場合はコピーとみなされるんですね。
 コピーには著作権がないため、それを撮影した写真家にも、それを出版した出版社にも、権利を主張する事はできないわけです。

 また具体例を出すと

 ・ダヴィンチの漫画を描いて、その中に『モナリザ』を登場させる
 ・19世紀末のパリの街角のカットにロートレックの『ムーラン・ルージュ』のポスターを貼る
 ・ドレの『神曲』の画像をスキャンして、コマ割と吹き出しをつけて漫画として販売

 などが、自由に、誰の許可もとらずに、できます。あ、3番目のヤツはけっこうマジで売れるかもね(笑)。

 ただ、注意すべき点もあって、これは、加工されていない絵画に限られます。
 たとえばモナリザの顔に、ヒゲが付け足されていた場合、ヒゲを書いた人間の著作権が発生する可能性があります。
 また、画像の周りに額縁が付け足されていた場合、その付け足した額縁に著作権が発生する可能性があります。
 出版社が、うっかりさんをハメようと、そういった罠をしかけている場合がありますから、気をつけて利用してください。

 また、彫刻の写真は、撮影の際に、例えば立体感を強調するために照明を当てた、とか、ツヤ感をだすためにレフを置いた、というような、明確な撮影意図があります。もしなくても主張してきます。
 こういった写真はコピーではなく、創作物扱いになりますから、彫刻の写真は利用できません。

 どうでしょうか? 著作権に抱いていたアレルギーが、ちょっと取れたのではないでしょうか?
 いがいにアナーキーなヤツですよ著作権って。
 最後はとっておき、『映画と音楽』の著作権に踏み込んでみたいと思います。
 著作権のフリーダムさは、実はここの部分にあります。


 ● 著作権の例外『ベルヌ条約第七条・四項』

 著作権が切れる条件として『作り手が死んでから50年後』というルールがある事はもう書きましたが、
 これには例外があります。大切なことです。さきほどの『最高裁昭和59年1月20日判決』といっしょで、『ベルヌ条約第七条・四項』という文言は暗記しておくべきです。

 その意味するところは、たとえば、映画や音源など、たくさんの人間が制作に携わっていて、作り手が特定しきれないような作品の場合、
 『作品が発表された日から、著作権が切れるカウントダウンを始める』
 という事です。これを『公表時起算主義』と呼びます。これは別に覚えなくてもいいです。

 先にも書きましたが、この国の著作権は50年で切れます。つまり現在(2014年)だったら、1963年12月31日より前に発表された、音楽、ラジオ放送などは、パブリックドメインとみなされます。誰でも無許可で、自由に利用できるということです。

 映画は、1953年より前に発表されたものなら、パブリックドメインとなります。
 あれ? ちょっとおかしいですよね。本来なら、映画も、音楽などと同じく、1963年になるべきですよね。
 これは後ほど解説します。ヒントはミッキーマウスです。

 さて、そのように、晴れてパブリックドメイン化したコンテンツ、どうやって入手すればいいでしょう?
 実は簡単なんです。絵画の時に解説した『最高裁昭和59年1月20日判決』を思い出してみてください。

 ① コピーには、著作権はない

 でしたよね。だから、我々はCDやDVDから、映像や音源を自由にひっぱってくることができるわけです。

 パブリックドメインもののDVDにも「二次利用は法律で禁止されています」との表示がでますが、実際のところ、映像そのものの著作権は彼らも当然持ってないですし、ほかの作品に利用されているのをもし見つけても、自分の会社のものだと主張する事はほぼ不可能です。
 うっかり字幕が表示されている画面を使ってしまったら話は変わってきますが。

 50年前の音源なんて、古すぎて必要ないと思われるかもしれませんが、たとえばカラヤンの全盛期のCDなどは、ほとんど50年以上前に収録されたものです。『ボレロ』でも『第九』でも『惑星』でも、無許可で、自由に使うことができます。
 ジャズならベニー・グッドマンとか、レイ・チャールズ、ポップスならフランク・シナトラやビング・クロスビーなどの作品の一部は、すでにパブリックドメイン扱いです。

 映画で言うと、『雨に歌えば』も『シェーン』も『メトロポリス』も『ローマの休日』も、1953年より前の作品です。
『第二次世界大戦』のニュース映像、『原爆』のフィルム、『行進するヒトラーユーゲント』、『焼け野原の東京』など、漫画の中でイメージ的に引用したい映像も、たくさんあるはずです。全部大丈夫です。

 作例は、わざわざ考える必要を感じません(笑)。
 映像を切り出して、コマの中に簡単に落としこめるデジタルソフトが登場した以上、これから、このような過去の映画の画像を流用した漫画というのは、1ジャンルを形成する可能性があるものだと思います。マンガで『シェーン』のあらすじを解説したりね。

 著作権は僕らを縛るものではあるけど、僕らに自由を保障するものでもあるのです。
 著作権と上手に向き合って、楽しい新都社ライフをすごしましょう。
2, 1

  

 ● 著作権保護期間延長の動き

 現在、著作権の保護期間を、50年から70年に延ばそう、という動きが活発になりつつあります。
 これはもちろん『ディズニー帝国・アメリカ』の差し金です。
 『映画』に関しては、いちはやく2004年に、保護期間を70年に延ばす、という法律が制定されました。
 ただ、これは、制定された年まではセーフです。保護期間が延びたからと言って、過去にさかのぼってアウトになることはありません。
 それで、1953年12月31日より前の映画・映像はパブリックドメインになる、という事なんです。

 おそらくは、ここ数年のうちに、残りの著作物に関しても、保護期間が70年に延長されるだろうと思われます。


 ● TPP発効による著作権保護期間延長(2019年追記分)

 2018年12月30日に、TPPが発効され、著作権の保護期間が、50年から70年に延長されました。
 今回のTPPにはアメリカが参加していないので、この決定は正直理解に苦しみます。
 恐らくは、現アメリカ政権(トランプ政権)後にアメリカがTPPに再度参加することを期待して、アメリカとの取り決めを忠実に守る、いつもの『深謀遠慮(弱腰外交)』なんだと思います。
 アメリカが将来、TPPの枠組みに戻ることになったとしても、より有利になるような変更を迫ってくるのは100%明らかなので、愚かな決定だと私は思いますが、いつもの事なんで、仕方ないですね。

 上に書いた通り、保護期間が延びたからと言って、過去にさかのぼって延長することはありませんから、今後20年間、パブリックドメインに加わるコンテンツがなくなる、という事になります。残念なことです。


 ● まとめ(2019年に加筆・修正)

 まとめとして、僕ら作り手が、自由に、誰の許可も取らずに、商用利用も可能で、パロディも作れる
『パブリックドメイン』となる条件を改めて記載します。

 個人の著作物(絵画・小説・マンガなど) : 1967年12月30日以前に作者が死去したもの
 音源・ラジオ放送など : 1967年12月30日以前のもの
 映画・ニュース映像など : 1953年12月31日以前のもの
 (2019年現在)


 ● 最後に 『法治国家の限界』

 あらゆる国家には限界があり、あらゆる法にも限界があります。僕らにも、法で許されていても、実際は許されない、
『アンタッチャブルな領域』というものがあります。
 有名なタブーとしては、たとえ法が許可していても

「ディズニー」
「チャップリン」
「美空ひばり」

 のコンテンツには触れるな、というものがあります。なぜならおっかないからです。
 マイケル・ムーア的押し問答が心の底から好きな、底意地の悪い人以外は、よけておいたほうがいいと思います。

 また、『ローマの休日』はパブリックドメインになって久しいコンテンツですが、ある広告代理店がTVCMのなかで、ウソ吹き替えをして使用したところ、ファンからの苦情が殺到して、CMを打った会社のイメージダウンを招いた事もありました。
 ファンがたくさんいるコンテンツのパロディは、リスクが高いという実例だと思います。

 これは法とは関係のない、個人的な意見ですが、パブリックドメインのベストな使い方というのは、もう忘れられてしまって、現在はカネを生み出していないコンテンツに、再利用で光をあてて、元のコンテンツも、自分のコンテンツも注目を浴びるような、
 いわゆる『win-winの関係』を築くのが理想なのかな、と思います。

 長い文章でしたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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