今回は、「単位をください。」 江野先生の漫画を評論しよう。以前、何回か読んで、なかなか魅力的なキャラクターを描く方だと思っていた漫画家さんである。すっきりしたわかりやすい絵を描く方である。
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完結されたということで、再度、読み返したのだが、ある種とらえどころがない。面白いことは間違いない。何が面白いのかもよくわかる。キャラクター間の掛け合いが面白いのだ。
だけど、それだけでは、この漫画の面白さの説明にはならないなあ。と漠然と1時間ほど格闘して、この漫画を表す言葉をやっと思いついた。
それは、「多重人格型キャラクター漫画」 である。
この漫画は、女性集団側が典型なのだが、これは個別のキャラクターを一つの人格と思ってはいけない。
各々キャラクターが、それぞれの機能を持った人格の一部なのだ。
例えば、主人公は、駄目キャラ
面倒見のいい先輩は、主人公を監視し、教え導くキャラ
1匹狼型の毒舌キャラ
そして、劣等感を表す、内気で、容姿にコンプレックスを持ったキャラ などなど
これらのキャラが一つにまとまって、実は一人の人格なのである。
合体させると、一人の知的で控えめでやや毒舌な女性の人格が浮かび上がる。
これを多重人格と言わずになんと言おう。
面白いのは、この多重人格の主人格に駄目キャラを持ってきている点である。
これは、キャラだから、許せるのであって、本当にこんな奴が、身近にいたら間違いなく殺したくなると思う。
だが、漫画内リアリティにおいては、読者が感情移入できる愛すべきキャラとして機能している。
そして、ほかの女性キャラたちは、この主人格をサポート、もしくは、キャラを際立たせるために機能している。
驚くべき点は、この主人格自体が、漫画内で多重人格化するシーンである。(布団から起きようとしたところ、新しい人格が表れて、誘惑するシーンなど)
漫画内でも人格の多重化が進行しているのである。
そして、より駄目な方に誘惑しているのである。
試しに主人公以外のキャラを、主人公にして、漫画として成立するか、シミュレーションしてみたのだが、この主人公以外は、難しい。
やはり、主人格だけあって、この主人公は特別なのである。
そして、読者にとっても感情移入がしやすい。
男性集団側にも、同じような機能分化が見られるようなのだが、こちらの機能分化はまだ不徹底なようだ。
男性集団が出てきても恋愛フラグが全く立たないのは、男性側のキャラが立っていないせいだと思われる。
この絵柄とキャラ漫画であるというギャップが、この漫画を面白くしていると思う。