つまるところ僕はムラナカと裏山で見つけた“きりん”をカンナに自慢したかっただけだった。
“きりん”とは鯨偶蹄目キリン科の“きりん”だ。あの“きりん”首が長いヤツ。
その“きりん”はムラナカのじいちゃんの仕掛けた鹿を捕まえるためのトラバサミにかかってるのを僕とムラナカで見つけて、裏山の洞穴の中でコッソリ内緒で飼っている。
薄暗い洞穴の中で“きりん”の首を優しく撫でながらカンナは言う。
「でも何で“きりん”なんかが裏山にいたわけ?」
「そんなの知るかよ。いたんだよ」
「そうだよ。いたんだよ」
「なにそれ、全然説明になってないじゃん」
「僕だって最初は驚いたよ。トラバサミにかかってるのが鹿とか猪じゃなくて“きりん”なんだもんよ」
その捕まえてきた“きりん”はカンナに撫でなれながら裏山で捕れた鹿の肉の切れ端を食べている。
「でも“きりん”って肉も食べるもんなんだね。私、てっきり高い木の葉っぱしか食べないものだと思ってた」
「ああ、“きりん”ってそんなイメージだけど図鑑で調べたら雑食なんだって。最初は僕たちもちゃんと木に登ってわざわざ高い所の葉っぱをちぎってきて食べさせてたんだけど……」
「だんだんめんどくさくなって」
「そうそうそれで駆除された鹿の肉を食わせるようになったんだよ」
「そう。駆除した鹿は耳だけ切り取ってその耳を業者に渡せばちゃんと駆除した事になって報酬ももらえるシステムで、残りの身体はどうしても良いって、じいちゃん言ってたし」
「だからムラナカん家から鹿の肉をいっぱい貰ってきてこの“きりん”に食わせてるわけ!」
「へぇ~…たしかに“きりん”って食費かなりかかりそうだもんね…」
“きりん”をひとしきり可愛がるのも飽きた僕たちは3人でエッチをはじめる。
3人エッチは“きりん”を飼う前はいつもこの洞穴でしてた事だから大したことではなかったんだけど、今日は“きりん”に見られていると思うといつもよりちょっと興奮した。
カンナのおっぱいを後ろから揉みながら“きりん”に目をやると“きりん”と目があった。
“きりん”は物欲しそうな目をしている。鹿の肉が食べ足りなかったのかもしれない。
“きりん”の視線を知らんぷりしてしばらくエッチを続けてたらムラナカが言った。
「…おいマコト…ッ!人が気持ちよく腰振ってる時に尻なんて舐めるなよ…ッ!」
僕は舐めてない。
「僕は舐めてなんかないよ!」
「マコトじゃなかったら誰が…ッ!…うわッ!舌を入れるなッ!」
ムラナカの尻を見たら“きりん”がマコトの尻を舐めていた。
「ムラナカ!キリンだよキリン!!」
「キリン・・・?」
ムラナカが振り向くと突如“きりん”はムラナカの体を首で殴打した。図鑑で見た、ネッキングというヤツだ。
ムラナカの体は勢いよく吹っ飛ばされ、洞穴の彼方へ消えた。洞穴の奥からムラナカが壁に激突した音と悲痛な叫び声が聞こえる。
「ぎゃああああああああああ!!!」
「ムラナカ!大丈夫か!?」
「ムラナカ君!!」
呼んでもムラナカの声はしなかった。
“きりん”を見ると洞穴の出口を塞ぐように仁王立ちをしている。満腹になれずに放置されてた事に相当腹を立てている様子だ。
これはまずい。
僕はその場にあった鹿の骨の中でも一番尖ったのもを手に持ち身構える。
カンナは僕の服の裾を掴んでガタガタ震えてる。
僕は気圧されてはいけないと思い“きりん”に凄む。
「なんだよ…ッ!やんのかよッ!」
“きりん”はそれに呼応してニタァとうすら笑いを浮かべた。
“きりん”の二打目がきた!
“きりん”の首をギリギリでかわして僕は“きりん”の胴体に一番尖った鹿の骨を突き刺してやった。
“きりん”はもがき苦しみながら暴れる。胴体からは緑色の血が吹き出している。
それをみてカンナは叫ぶ。
「緑色の血!!!」
瞬間“きりん”の斑点が全て開き無数の目玉が出現した。
全ての目玉が僕とカンナを睨みつける。
それに驚愕した僕とカンナは叫んだ。
「コイツ…ッ!」
「“キリン”じゃなかったんだ!!」
僕たちの叫び声を聞いた元“きりん”だったそれは最終形態へ変貌した。